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「気になること?ですか」

陛下からの問い掛けに質問で返す。


陛下の眼が笑っている。


前回、熱弁振るってしまったからな。陛下は私の反応を見たいのかな。

これで私の何かを試すつもりのようだ。何を見たいのか知らないけど。

知らない振りをして終わらせるのは簡単だけど、気になることは確かにある。

それを聞いてみようか。

幸い陛下から聞いてきた事だ。怒られる事はないと思うし。


「陛下。気になることは確かにあります」

「何かね?」

陛下は顎に手を当て、嬉しそうに聞き返して来る。


そんなに楽しみだったのだろうか?私が何を聞いてくるか興味津々の様子。


「あの者達から返金はあるのでしょうか?」

「返金?」

「はい。横領で使い込みをされた額は、確認できると思います。不正の帳簿は残っているようなので(管理番が教えてくれた)。その金額を返金してもらわなければなりません。横領は国民の血税です。有耶無耶にして良いもの、ではないと思いますが?」

「税金。そうだな。帳簿は二重帳簿になっていて、金額は、はっきりしている。返金は確かに請求できるが、あの者達では払えないだろう」

「そこで終わりですか?」

「払えないものをどうする気だ?」


えっと、陛下、本気で言ってます?

使い込まれたのは税金ですよ。国民の血税を使い込まれたのだから、何としてでも取り返さないと。

国家の長ですよね? 国民の血税には敏感になってください。

信用をなくしますよ。


「陛下。払うのは、何も本人たちだけとは限りませんよ。何のための保証人ですか?家族や親戚もいますよね?極刑だろうという予想ですが、監視下で労働をさせ、そこから徴収する方法もあります。取ろうと思えば、いくらでも方法はあるはずです。考えて、努力をしてください」


あれ?この言い方。あんまり良くないかな?

でも、国民の税金だからちゃんと返してほしい、と思うのは間違ってないと思う。


「貴族同士で個人のお金なら、本人達の問題です。諦めるのも自由かと。しかし税金は別です。本来なら国民や国のため、有意義に使われるべきものです。ちゃんと返金してもらわないと、国民は納得しないと思いますよ。陛下ならどうですか?自分のお金が勝手に使われたら、返せって思いませんか?額が違っても基本は同じです。」

「そうだな」


同意はしてもらえたものの、陛下もちょっと引き気味だった。この反応はまさか、陛下も『返せないならいいや』とか『仕方ないかな〜』とか思ってたって事では?

ないわ〜、ものすごくない。


陛下の反応に、私は白い目で見つめてしまう。視線は、思いっきり非難の色だ。


それを感じ取ったのか、陛下も若干慌てながら言い出した。誤魔化すように咳ばらいをする。


「いや、姫の言う事はもっともだ。裁判のときに返金の方法も、決めてもらうようにしよう」

「国の名前で訴訟になりますか?それとも裁判の流れで、そのまま決める事ができるんですか」


「「んっ?」」

陛下ともう一人声が重なった。

宰相だった。陛下の後ろにいたんだった。今まで口を挟まずにいたから、スッカリ忘れてた。

影が薄い(ごめんね、宰相)国で2番目に偉い人のはずなのに。


その宰相から質問が飛んできた。

「姫様。国名義の訴訟とは?」 


陛下たちと、私の認識が合わない。

商人達から聞いたときは、国も訴えを起こせるって、言ってたけどな


「国も訴えを起こせるんですよね?」

「そうだな。」

「侍女達の横領とかは犯罪ですが、お金を返してもらうのは、犯罪ではないですよね?そうなると裁判は別にならないのですか?」

「なるほど、そういうことか」

陛下が納得したようだ。宰相も頷いている。


「姫様。確かに2つは別のように思えますが、横領は犯罪なので、それに対する懲罰を希望する事ができます。その時、懲罰として返金を求めることにします。それで問題ないと思いますよ」

「そういう事なのですね」

私も納得。国によって法律は違うから。

この国で、そう決まってるなら、口を出すことでは無い。


「しかし、姫は予想できないな」

「なんの事でしょうか?」

「いや、気になる事、と言って税金の返還を言われるとは思ってなかった」


私は不思議に思って陛下を見る

それ以外に気にする事ってあったっけ?

わからないことは聞くに限る

「それ以外に聞くことって、ありますか?」

「私は気にしていると思っていたのだが」

「?」

何のこと?口にはしなかったが顔には大きな字で書いてあったようで

『何のこと?』


「姫の部屋の事だ。鉄格子の件だよ。」

「あっ」


今度は私が予想外だった。

まったく頭になかった。


「まったく気にしていなかったのが、よくわかるな。顔に書いてある」

「失礼しました」


陛下と宰相からそれぞれ教えてもらえた。

「近いうちに外すように手配している」

「昨日、業者が決まりました。近日中に離れに伺います。その際は多少うるさくなると思いますが、お許しください」

「承知いたしました。私のために手配してくださる事なので、楽しみにしています」

「そう言っていただけると助かります。」


近いうちに、離れの改修をしてもらえる。

鉄格子は外聞が悪いので、外してもらえるならありがたいことだ。

楽しみにしていよう。


「それとな、姫。今年のプレゼントは用意している。そのつもりでな」

「気にかけて頂いて、ありがとうございます。楽しみにしております」

プレゼントを、断る理由はない。

陛下セレクトを愉しみにしておこう。

私は陛下と二人、ニッコリと微笑んだ。

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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[良い点] (連投、申し訳ありません。) 元納税者の自然な発想が、為政者側に相当なインパクトのようで、姫様の知らないうちに株価がさらに急上昇。 図らずも自分から陛下が欲しがる人材であることをアピール…
[良い点] 名前が無くて役職とかなので、人名で悩まない、助かります。 [気になる点] 学校の友達がいっぱい出来たら、どう書かれるのかしら?頑張って下さい、応援しています。
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