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決着 3

「陛下、不愉快なことを申し上げます」

「不愉快なこと?」

陛下はさっきの私と同じ顔になっている。


「それでも宜しいですか?」

宰相と管理番は不安そうだ。陛下の様子を窺っている。不興を買うと首が飛びそうだ。それともこんな事は今までなかったのかもしれない。

私の意見を言うのは陛下の判断次第だ。


「構わないぞ。姫の意見を聞こう。それに姫は最大の被害者だ。意見を言う権利はあるだろう」


どうやら陛下は面白がっているようだ。子供が何を言うのかと興味津々の様子。


「ありがとうございます、陛下。ではお言葉に甘えて申し上げます。このもの達の罪状と刑罰は裁判で決めていただきたいのです。お願いできますでしょうか?」

「何を言っているのですか?本気ですか?」

「姫様」

「ほう…その理由は?」


宰相の侮蔑を含んだような声と、管理番の悲鳴のような声が重なって聞こえる。

陛下が決めたのに『何を言っているんだ』っと言った様子と、陛下だけは変わらず『興味深い』と思ってくれている様子。


「この国の今後と、陛下の評判を買うためです」

「私の評判とこの国の今後… どういう事かな?」

陛下は不思議そうだ。

想像していなかった方向性の話らしい。


「陛下、先年、裁判制度の法律を作られたと聞きました…その目的は法律上の貴族と市民の不平等をなくすため、そのためにかなりの無理をされたとか…」

「良く知っているな」

「管理番と商人が自慢していましたので・・・」

「姫様」

『ばらされた』とばかりに管理番が焦っている。(良いこと言ってるから焦らなくて良いのに)


陛下と宰相は管理番をスルーして続きを待っている。

その二人に対して私はとつとつと先程の考えを話すことにした。


「なるほど…作った者が守らないものは他の者も守らないか…」

「そうです。一度緩んだ規律はなかなか戻りませんし、規律の乱れは権威の緩みになります。ここは王国制です。貴族と市民からの尊敬と畏怖が無ければ成り立たないでしょう。特に貴族からのそれは何よりも大事になると考えます。」

「陛下の権威は盤石です。随分ですね。」


宰相は気分を害したようだ。無理もない、9歳の子供に言われたのだ。面白くないのは当然だと思う。


「陛下は大陸の支配者です。今は盤石でしょう。ですが、その支持は自分たちの『王』だからです。自分たちより部外者を優先したと思われたら、支持し続けるでしょうか?初めの不満は小さなものでしょうが、不満は人に伝染していきます。裏で溜まっていった不満は、いつか大きな岩を崩すほどの大きな物になるでしょう。」

「だからこそ裁判か…」

「そうです。陛下は他国の姫への不正を見つけた。他国の姫を優先せず自分が決めた裁判を受けさせた、そして極刑になった。その形が何よりも重要だと愚考します。」

「だから、私の、評判を買うわけか」

「そうです、そしてもう一つの理由も忘れてほしくはありません」

「法律の方か?」

「そうです。せっかく出来た法律が意味のないものになっては勿体ないです。市民たちはこの法律を喜んでいると聞きました。できて日が浅いとはいえ、助けられた人も多いはず。それを陛下自身が無視したら、横暴な貴族の中には真似をする者も出てくるはずです。まだ定着しきってないので、貴族のそれに抗える者はどのくらいいるでしょうか?そして、市民はがっかりするのです。やはり形だけのものだった。陛下は市民よりも貴族や他国の姫を優先するのだ、と」

「だから法律が無いものになる、私の評判を買う、という事か」

「はい。どちらも陛下にとっては有益な物になるでしょう」


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