精算
「その様子だとうまく行ったみたいね?」
商人の様子から実演販売が上手くいったのは分かっていたが確認をすると、商人は大きく頷き身を乗り出してくる。
興奮したり、言いたいことがあると身を乗り出してくるのは商人の癖のようだ。今度から覚えておこう。
椅子に座っている私の前で跪いていたのに、顔を上げた途端私の方に膝立ちでにじりより、身を乗り出してくる。その差はわずか数センチ、距離が近い…
「商人、失礼だ。近づきすぎだぞ。姫様が良いと言ってくれたからといって、あまりにも失礼だ」
管理番が腕を引いて注意をしてくれた。
「失礼しました。つい…」
注意された方も、そこは理解できたのか慌てて元の位置に戻っている。
「大丈夫よ。あまりの勢いに驚いただけだから。で、その様子だとうまく行ったようね?実演販売。」
私の自信を持った問いかけに聞かれた方は大きなアクションをつけて返事をした。
「驚きました。あのように上手く行くなんて…本当に飛ぶように売れたんです。残っていた在庫もすぐになくなって。初日に用意していた量は直ぐに売れてしまったので、仕入先に発注はかけたのですが、今は予約待ちになってます。今まで売れなかったのが嘘のようです。」
「良かったわね」
「すごいな。そんなに売れたのか?」
管理番は信じられないようだ。
「あの美味しさなら当然だろう」
商人と管理番は美味しさと売れ行きについて語っていたが、私は心配な事があった。
聞きたくないが不安はその場で解消したい私は喉を鳴らして商人に確認する。
「ねぇ、商人。ちょっと心配な事があるんだけど。いいかしら?」
心配なので可愛らしく尋ねてみる。結果は変わらないだろうが。
管理番も心当たりがあるのだろう、少し身構えた様子だ。
「なんでしょうか?」
「お味噌。入荷待ちなのよね?」
「はい」
「…私の分はどうなるの?」
一番大事な事だ。そのために実演販売の指導をしたのだから。私の快適なスローライフに関わってくる。
「…そのことなんですが…ご相談させていただきたい事がありまして…」
「何となく、嫌な予感がするけど、気のせいかな?」
できたら現実は見たくない。
しかし、商人は非情だ。現実を突きつけてくる。
「…もしかしたら気のせいではないかもしれません…」
「商人、意外と正直ね」
「姫様に嘘をついても良いことはないので… 」
「まあ、そうね。で、聞きたくないけど一応聞くわ」
想像していた現実を突きつけられる。
「じつは、お察しだと思いますが。あまりの売れ行きで在庫が、なくなりまして…姫様の分は次回の入荷でお願いしたいと…」
「やっぱり、そうなるわよね…わかってたけど、残念だわ」
わかっていても思わず天井を仰いでしまった。
「申し訳ありません。お詫びと言ってはなんですが。少し多めに入れさせていただきます。申し訳ありません」
先に謝られると何も言えなくなってしまう。
ため息が出てしまうがそこは許してほしい。
「ない物をよこせと言ってもどうにもならないし…そこで、手を打つしかないわね。」
「ありがとうございます」
「で、実際のところはどうだったの?」
私の一言に商人の目が輝いた。





