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閑話 商人の話

私は城下に店を構える商人だ。

親から跡を継いで二代目になる。

信用を積み重ねていたおかげか私の店は上から数えた方が早いようになった。


私には目標がある。親から継いだこの店を大きくすること、そして、新たな商品を城下に広げることだ。そのため、海の向こうから新たな調味料を仕入れていた。調味料だけではなく食材も仕入れたのだ。 

そこまでは良かった。仕入先から使用方法も聞いていたし広がるだろうと思っていた。

だが、考えが甘かったようだ…

品物が売れない。私が個人的に食べる分には美味しいし、買うのだが(自分の店でお金は払う)…

一般的には売れないのだ…

使い方を説明するが、わかりにくいのか手が出ない、そんな感じだ…


私は多くの在庫を抱えてしまった。下手を打った。

売れないからと他の商品を仕入れ、それがまた売れず…その繰り返しをしてしまった。

店をたたむほどの損害ではないが、不良在庫は大きな問題になっていった。


店を私に譲ったためか父は、先代は、何も言わないがそれが逆に大きなプレッシャーだった。

私の右腕と呼べる店長と共に今後を相談していた。

在庫をどう捌くか、商品を広めるか、諦めるのか…

私たちは決めかねていた。


そんなときだ、管理番から商品の問い合わせがきた。

『大豆商品を扱っていないか?離れにいる姫様が探している』

そんな問い合わせだった。私は耳を疑った。


離れにいる姫様が大豆商品を探している?

その姫様は他国から来ていて、まだ9歳とか…


他国の9歳の姫が大豆商品を知っているのか?この辺の国では私の店しか扱っていないはずだ

私の中では疑問と喜びと期待が入り混じっていた。

本当に姫様が探している物なのか確認したくて、管理番へ自分から申し出た。

『姫様に直接商品を見てもらいたい』と。


管理番は渋っていたが、直接見せるメリットを説明し姫様に会う機会を得ることが出来た。

そして店長を伴って離れへ…


そこで私は大きな驚きを受ける。

私を相手に9歳の姫様が交渉を持ちかけてきたのだ。

『私と取り引きをしない?』

とそんなこと有り得るのだろうか?

これでも私は城下では上から数えた方が早い商人だ。王宮での取り引きも扱っている…

身分があるとはいえ、姫様は私を相手に躊躇うことも迷う様子もなかった。


本当に9歳か?

信じられず何度も確認してしまい、その度に姫様に笑われる。

『私は子供よ』『私は9歳に見えない?』と…

こんなに交渉上手な9歳が居てはたまらない。

私は9歳の時は学校に通っているだけだったのに。

大人に取り引きを持ちかけるとか、考えたこともない。


「大丈夫ですか?」

「ああ。ここが正念場だ。頑張るさ」


私は店の前に簡易竈と鍋を置く、その横には味噌や野菜、肉を並べる。更にその横にはテーブルと販売用の商品を並べ、その前には店長が立つ。


今は夕食前には少し早い時間。ちょうど買い物に出かけようという時間だ。

目の前の道には多くのかごを持った人が歩いている。


『ここが分岐点だ』

私は深呼吸をすると第一声を発した。


「さあ、そこをお通りの皆様。ご覧ください。新しい商品を紹介いたします。他国から仕入れたばかりの新しい商品です。まだ誰も知らない商品をぜひご覧ください。」


私の前を歩いていた人が何人か振り返った。

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