表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/356

交渉は現実的に 2

「では姫様。」 

「ええ、お願い」


やっと商人の感想が聞けるようだ。


「姫様。まずは月並みな感想から」

頷いて先を促す


「美味しかったです。特に黄色の柔らかい優しい味の」

「茶碗蒸しの事?」

「茶碗蒸しというのですか?」

「ええ、そうよ。今日のメニューは、ご飯、生姜焼き、お浸し、お味噌汁、茶碗蒸し、酢のもの、フルーツ寒天になっているわ」


商人の感想に合いの手を入れる。

ついでに料理名も伝えておく。 

しかし商人は知らないらしい。苦い顔をする。


「私の知っている料理名が一つもありません」

「そんなこともあるわよ。世間の全部を知っている訳ではないでしょう?」


「確かにそうですね。姫様。茶碗蒸しも美味しかったのですが、果物が入ったのは」

「フルーツ寒天ね」


「フルーツ寒天。あれは衝撃的です。果物はそのまま食べるものと思っていました。数種類の果物を入れて固めるとか、考えた事もありません。それにそれぞれの味が邪魔することもなく一つになっていました。その上、一緒に口に入れる事で味が複雑になった味わいがあります。それと汁物ということで、たぶんお味噌汁で合っていると思いますが… 味噌、姫様がお求めになっていたものですね。あれが、あんなに味わい深い物になるとは考えられませんでした。溶かして入れるのを見ましたが、溶かすことで味そのものが変わってしまうんですね。優しい味でした。一口飲むと、また次が欲しくなる。そんなスープは飲んだ事がありません」

商人は一息で話していく…


ノンブレスとか、商人、苦しくないのかしら…。

そんな事を考えている間に商人の感想は続いて行く。

料理名が合っているときは頷いて肯定することにしよう。口を挟みにくいので決めておく。


「メインのお肉、生姜焼きだと思うのですが。ありがとうございます。合っているのですね。あの肉は初めてです。肉そのものに味があって、肉には塩胡椒と、思っていたので肉だけでおいしいなんて…有り得ないと思いました。肉そのものも柔らかくて食べやすかった。肉は固いものと思い込んでいたので。でも、何より私の価値観を変えたのは米です。私も米は何度も食べたことがあります。味をつけたり、魚貝と一緒に食べたこともあります。それなのに、何の手も加えていない米だけが美味しいなんて、信じられません。その上他のものと食べるとさらにおいしくなるのですよ。止まらなくなります。食事をして止まらないなんて今まで体験した事がないですし、考えたこともありません。どういうことなんですか? なんであの料理が作れるんですか? 姫様は誰かに習ったのですか?」


商人はだんだん興奮してきたのか身体が前のめりになって来る。

顔が私の目の前に来ている。


「商人、ちょっと落ち着いて。美味しかったのも、気に入ってくれたのも良くわかったわ」 

「商人、座れ」


私は商人の顔を両手で押し戻す。私が困っているのを見た管理番が、商人を座る様に促し腰を降ろさせる。

商人も興奮していたことに気がついたのだろう。管理番を気まずそうに見て謝っていた。


「あ、ああ。すまない」

「なんにせよ気に入ってくれて良かったわ」

少し興奮の収まった商人に話しかける。

商人も興奮していたことに気がついて、少し恥ずかしいのか視線がさまよっている。

その様子が少し面白かった。

私がクスクス笑っていると恥ずかしそうな商人は話を変えて来る。


「姫様、そういうことなので、姫様の提案を受け入れさせていただきたいのですが…。如何でしょうか?」

「ありがとう。そうしてもらえると私も嬉しいわ」

「では、具体的なところを…」

「そうね、細かいところを詰めていきましょうか?中途半端が一番良くないわ」

「…」

私が商人に同意をすると商人が急に黙って私を見た。私はその意味が分からず見返す。

黙っていた商人は私から視線を逸らさず口を開いた。


「姫様、やはり9歳は間違いなのでは…」

「商人、またそれなの? 私は子供よ」


商人的にこのくだりは外せないらしい…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★書籍版公式ページはこちら!! 書籍、電子書籍と共に3月10日発売予定!

人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[気になる点] 味噌汁の出汁は何からとったんだろ? ワカメや干物があったんだから、昆布や鰹節もあったのかな? と思ってググってみたら、出汁が無くても野菜汁から味を出す味噌汁もあるんだね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ