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成果 2

「お初にお目にかかります。わたくしは城下で商店を営んでおります。どうぞ、よろしくお願いいたします」

「初めまして。会えて嬉しいわ。よろしくお願いね」


私は微笑みかける。第一印象はとても大事だ。会って30秒で相手への印象が決まると言われている。私はこの商人と長く付き合っていかなければならない気がしていた。そのためにも第一印象は良くしておきたい。それにこれから交渉する必要もあるだろう。

笑顔一つで印象が良くなるのなら、いくらでも振り撒くべきだと思っている。


目の前の男性二人は対照的な感じだ。

管理番は線の細い感じで神経質そうな感じがする。対照的に商人はふっくらとした、柔らかい印象のある男性だ。ここまで雰囲気が違う二人だが並んでいるとてしっくりとしている。

何となく付き合いは長いのだろうと思わせるものがあった。


「それでこの方を連れてきた理由は?」

私は管理番に確認する。商人は手ぶらだ。私に何かを見せようとする感じではない。 


「その理由は僭越ながらわたくしの方からで宜しいでしょうか?」

「構わないわ。教えてちょうだい」


滑らかな口調だ。こんな経験は何度もしているのだろう。安定した話し方をする。


「姫様は大豆類の商品をお求めとか」

「そうよ。調味料が一番だけど、できれば大豆そのものも欲しいと思っているわ」

「左様でございますか。姫様は博識でいらっしゃいますな。この国では大豆類の事をご存知の方はいらっしゃらないので」

「そうなの?でも、あなたは知っているのね?」

「はい、わたくしは商人ですので」

「調味料はあるの?」

「ございます。」

「どんなものかしら?」

「姫様ご要望の液状のものにございます」


商人は焦らすような話し方をする。情報も小出しだ。


私はため息が出た。この国の貴族相手では必要な対応なのだろう。

そして話を焦らすことで交渉を上手く運ぶ必要があるのだろう。分かってる、その必要があるのはよくわかっている。私も仕事をしていた身だ。理解している。

だが、面倒くさい。周りくどすぎる。


「確認したいのだけど、いつも交渉するときはそんな話し方?」

「姫様?」

「ごめんなさいね。回りくどい感じがして…もう少しスムーズに話がしたいわ。」


商人と管理番は目を丸くして私を見た。

私の方からこんな事を言われるとは思っていなかったのだろう。

一応、見かけ上は9歳だ。 

9歳の子供から『交渉の話し方を変えろ』と言われるとは思わなかったのだろう。

無理もない。私も逆の立場なら同じ顔になっていた自信がある。


だが、今日商人と会えたのは昨日の管理番との話がスムーズに行ったからだ。

そう、これは昨日の成果なのだ。

なら私はこの成果を上手く使わなければならない。無駄にする気はないのだから。

そのためにも商人とはスムーズな交渉がしたい。

私はもう一度商人に話しかける。


「スムーズな交渉がしたいわ。少しざっくばらんに行きましょうよ?どうかな?」


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