閑話 管理番の心配
いつの読んでいただいて、ありがとうございます。
本編を書いているのですが、思うように進みませんでした。
気分転換も兼ねて管理番に出てきてもらいました。
お付き合いしていただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
私はこの国の管理番室に勤めている一番の下っ端です。そんな下っ端の私ですが姫様とのご縁で、管理番室の中でも、それなりの仕事をさせていただいています。特に商人が姫様のために持ち込む品物の確認と管理は私の仕事となっています。
一度はその仕事を外された事がありました。商人と親しい関係である以上、私が仕事の手を抜く可能性があり仕事の品質に問題があると考えられたのです。それは納得できる理由でした。上司が仕事の質を心配するのは無理のない事なので受け入れたのですが、商人の持ち込む品物が特殊すぎて、その内容が分からない、という事で私の担当に戻されました。
商人も私が担当を外された理由に不満があるものの、納得できる理由だったのか特にクレームを上げるような事はなかったのですが、商品の説明をしても理解されない事に嫌気がさしていたようです。【交代しろ】【管理番に戻せ】と露骨に言った事はないようですが、せめて勉強してほしい、といった内容の事は何回か言ったようでした。私なら説明不要な内容でも別な担当だと何回も説明が必要なので、嫌になる気持ちは分からなくもありません。
城下で人気の商品で城内でも陛下が好まれる事から徐々に人気が出始めている商品でも、初めは未知の物です。
管理番室は城内に流通されるものを確認する仕事。中途半端な確認はその仕事の質を問われます。そのため、交代した担当から何度も商品の事を教えてほしい、と私に説明を求められたので、それを拒否するような事はしませんでした。理解できるまで何度でも説明を繰り返したのですが、他の職員たちには理解を得られず苦労したものです。それが何回も繰り返された結果、担当が私に戻ることになりました。
その事を商人が喜んだのは言うまでもありません。
そのお陰もあって姫様とのご縁は続いています。
私が仕事や昼食会の関係で姫様とのご縁があるのは周知の事実。
そのため私に姫様の事を聞く貴族は多くいます。隊長様に聞くよりも商人に聞くよりも、私に聞くのが一番早く聞き出しやすいからです。
貴族ではない商人ですが、商会の代表だけあって会うには一苦労するからです。姫様はご存じありませんが、商人に会うには事前の約束が必須です。暇そうにしている商人ですが、実は私や隊長様よりもハードスケジュールなのです。そのため約束をしても、すぐに会えることはありません。内容によっては1ヶ月待たされる人や断られる人も珍しくありません。私や隊長様は時間さえ合えば簡単に会う事が出来ますし、姫様は手紙を出せばいつでも会えると思っておられるようですが、本来はそんな簡単には会えないのです。そういう意味で姫様や私たちは優遇されているのでしょう。
こうやって今までの事を振り返っているのは、姫様の今後で動きがありそうだからにほかなりません。
今度、姫様のご両親が陛下に招待されているそうです。その話に合わせて、いろいろな噂が飛び交っていました。
一つは姫様が殿下と婚約されるというもの。もう一つは姫様がお国に帰ってしまわれるというもの。どちらの噂も私には複雑なものです。
前回の練習会で姫様はご両親様が来られるということ以外、何も言われてはいませんでした。どちらの噂に対しても軽々しく口にして良い内容ではないので、姫様も口にはされなかったのだと思っています。
姫様は、ご両親が来られることを気に病まれていました。そのご様子からすると、まだ国へ帰らなくてもよいと思っておられるのかもしれません。
では、殿下との婚約はどう思われているのでしょう。以前は殿下に良い印象をお持ちではありませんでした。それに陛下からのお誘いもお断りしていましたし。その態度の端々から考えると殿下との婚約は望んでおられないのでないでしょうか? そう思ってしまいます。
婚約の話に口を出せる立場の私ではありませんが、できれば殿下との婚約はない方が良いと思っています。
以前の殿下の噂は良いものではなかったですし、王太子妃となれば気苦労が絶えないと思っています。姫様はお小さい時から母国を離れて暮らしておられますし、こちらに来られてからも、離れにおられる頃は大変な思いをされていたので、これからは大変な思いはしていただきたくないと思っています。
そんな理由を並べていますが本当の理由はわかっています。
姫様が王太子妃となれば、今までのように簡単にお会いすることができなくなるからです。もちろん身分が変わったからといって、態度が変わるような姫様ではないと思っています。ですが、周囲が許してはくれないでしょう。
今でこそ離宮におられる姫様ですが以前は離れにおられました。だからこそ私のような身分の者がお会いできることが許されたわけで、私は本来なら離宮に入る事も許されないはずでした。それを姫様のご好意一つで離宮への立ち入りを許されているのです。それが本宮へ移られる。それも王太子妃ならば後宮へ入られる事となるのでしょう。そうなれば、今度こそ私の立ち入りは許されるものではなくなります。
本来なら、この国の人間として姫様のような方が王太子妃となる事を喜ぶべきことなのに、姫様にお会い出来なくなることが寂しいと思ってしまう自分がいる。そんな事を考える事もおこがましいのに。
つい考えてしまいます。
それに王太子妃は大変な立場です。気苦労も多い事でしょう。今まで大変な思いをされてきた姫様に、そんな大変な思いをしていただきたくない、という気持ちもあります。
そんな思いを纏めると、姫様はこの国に留まっていただきながら、今までのように楽しく過ごしていただきたいと思っているのです。
私は、なんの力もないただの管理番。姫様の今後に口を出す事も姫様のお立場を助けることも、何もできません。それは商人も筆頭様も同じことです。姫様をお助けできるとすれば隊長様ぐらいでしょう。
隊長様は今回の件、どうお考えなのでしょう。
私個人の考えですが、できるなら隊長様と姫様が結ばれてくださればと思ってしまいます。お二人は身分も年回りもいいと思いますし、姫様も隊長様の事は信頼されていると思います。隊長様も姫様を大事にされていますし、どちらかというと姫様には優しく甘い感じがします。あんな様子の隊長様を見るのは初めてだ、とご令嬢も言われていました。きっと大事にしてくださると思うのです。
お二人はどう考えておられるのでしょうか。
私は身分もない、力もない、ただの管理番室の人間でしかありません。
それでも姫様の穏やかな生活を願ってやみません。
本編を進めているのですが、思うように進まなかったら
閑話が続くかも? と心配しています。





