閑話 姪っ子ちゃんの学校生活
姪っ子ちゃんの、長閑な学校生活を覗いて頂けたら嬉しいです。
お付き合いください。
よろしくお願いいたします。
わたしの学校生活は朝、お母様に起こされることから始まります。
お母様はそろそろ自分で起きなさい、って言われるのだけど、わたしを起こしに来ることが好きなのは知っています。
わたしも甘えているとはわかっているし、この年になって朝が自分で起きれないことが恥ずかしいのも知っています。
でも、お母様に優しく起こされる時間が大好きで、つい寝たふりをしてしまいます。忙しいお母様に申し訳ないけど、これはやめられません。
いつか怒られてしまうのかな、って心配です。その時が来たら自分で起きようと思っています。
お母様に起こしてもらってから、朝食をとって学校に行きます。朝はなるべく近くの学生と一緒に行くか、お父様に送ってもらいます。
裕福な家の方やご令嬢みたいな方は馬車通学ですが、わたしくらいの身分や、商家の人は徒歩通学です。
学校は少し遠いのですが、早めに家をでれば問題にはなりません。
わたしは近くの同級生やその兄弟姉妹の方たちと通学します。
学校に近づくと私達の横を馬車が通り過ぎていきます。その中には豪華な馬車もあります。あの中のいくつかが姫様達の馬車なのだと思うと、なんとなく身分の違いを痛感してしまいます。
姫様が威張ったりする方ではなくて、本当によかったなって思ってしまいます。
車寄せを見ながら校舎に入ると、まずはお友達への挨拶です。
お父様や叔父様から挨拶はしっかりするように、といつも言われています。
とても大事な事だと分かっています。その言いつけは大事にしなければならないと思っているので、挨拶しながら席に向かいます。
わたしはクラスメイトに挨拶をしつつ自分の席に着きます。お隣の方にも声をかけ、なんとなくおしゃべりが始まります。特別難しいお話はしません。今日の宿題をしてきた、とか。昨日の夕食がどうだった、とか。そんな他愛もない話です。
そうしているとあっという間に昼休みです。今日は姫様とのランチ会はないので、お友達と食堂で食べます。
時々ご令嬢のお誘いで姫様たちとランチをしますが、それは週に1回か多くても2回ぐらいです。
わたしが姫様たちと交流があるのは有名で、クラスメイトに何か言われると思っていたのですが、そんな事はありませんでした。
入学式の時に意地悪さんに声をかけられましたが、それも一度だけ、それ以降はありません。
その意地悪さんは、わたしに声をかけてきた次の週、わたしのところに謝罪に来ました。どうしてだかわかりませんが、彼女はそれ以降わたしに近づくことはなくなりました。
どうしてなんでしょう。不思議でなりません。
学校が始まってからも、叔父様はわたしの事を気にかけてくれていて、我が家で夕食を取る事が増えました。
その時の話題は決まって、勉強やお友達関係の事です。皆さんと仲良くできているか、気にしてくださっているのです。
でも、わたしは知っています。
叔父様はわたしのことも気にかけてはくださるけど、それと同じくらい姫様のことも心配していることを。
わたしは入学式のことや、クラス分け授業内容を話します。
叔父様は楽しそうに聞いてくれていました。時々、懐かしいな、なんて言われるので、自分の学生時代を思い出しているのかもしれません。
夕食の席で、わたしは少しだけ心配していたことを確認しました。
意地悪さんの事です。わたしは紹介を頼まれたとき打ち合わせ通りに返事をしましたが、相手は我が家よりも格上の家です。
後で問題になったとき、お父様にご迷惑がかからないか心配でした。でも、勝手なこともできないし。そう思っていました。
でも、本当にそれでよかったのか、お父様や叔父様にご迷惑がかからないか、気になってしかたがなかったのです。
今夜はいい機会ですので、叔父様に心配事を確認しました。そしたら意地悪さんへの対応方法は間違っていなくて、他の人に言われても同じ返事で良いとのことでした。
わたしはホッとしました。誰にも迷惑はかけなくて済みそうです。
ホッとしたせいか、食後のお茶が美味しいです。
ニコニコしながらお茶を飲んでいると、お父様からも、ご令嬢や姫様の事を聞かれます。
ランチ会では失礼がないか、とか話している内容とかです。
お父様は何を話しているかを聞いていますが、わたしは知っています。お父様はわたしが失礼な事をしないかを気にしているのです。
姫様やご令嬢とお出かけをした時に、わたしが失礼な事を沢山していたので、お付き合いを遠慮するように言われたこともあります。
今後、失礼がないように気を付ける事、マナーを学ぶように、と言われて見逃してもらえることになりました。ですが、お父様としては心配で仕方がないのです。できれば、お付き合いをやめた方がいいのでは? と今でも考えているのだと思います。
わたしの失敗の多さを考えると、無理ない事だと思ってしまいます。心配をかけてしまって申し訳ないと思っています。
でも、姫様達とおしゃべりをするのは楽しいので止めたくないと思っています。
今でも仲良くさせていただけるのは、叔父様の口添えが大きかったと思います。
約束したので、その後からマナーの勉強が増えました。と言っても、筆頭様にお会いした時に、こういう事を気を付けましょう、と言う形で教えて頂いていますし、ご令嬢からもランチ会の時に教えて頂いています。ご令嬢も筆頭様と同じで、気を付けるポイントを教えて頂いているのです。
その注意ポイントを聞いていると、わたしが失礼な事をしていたのが理解できます。
お友達同士では良い事も、姫様とお話しする時はダメな事もあるのだと知りました。
姫様はおおらかな方なので、気にされないのだと思います。
ですが、姫様と一緒にいるわたしが失礼な事をして、それを許している姫様を見られるようなことがあれば、それが許されるのだと勘違いされてしまうのだと、姫様が侮られるのだと、令嬢から重ねて言われました。私が原因でそうなる事は、とても怖い事だと思いました。
わたしが原因で姫様のお立場が悪くなるなんて、考えてもいませんでした。
姫様に声を掛けて頂けたり、ご令嬢とお話しできる機会があるなんて、わたしの身分では考えられない事で、違う世界を覗いている気分になります。
わたしはそれでいいけど、わたしの態度でご令嬢や姫様にご迷惑をかけるのは良くないと思っています。
仲良くさせていただいているし、これからもお付き合い出来たら嬉しいので、迷惑を掛けないように注意したいと思っています。
姪っ子ちゃんの本音の一部。
それに、姫様にご迷惑をおかけしたら、叔父様にすっごく叱られるので気を付けなきゃ。
成長しているぞ、姪っ子ちゃん。
これからも頑張って。





