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どうして殿下が出てくる?

いつも読んで頂いてありがとうございます。


300話、達成しているとは気が付いていませんでした。

感想欄を読んでいて教えて頂いた感じです。

ここまで来れて嬉しいです。

これからも、よろしくお願いいたします。

 久々の外出を満喫した私はリフレッシュして満足していた。やはり気分転換は大事なのだと思う。

 離宮に帰るときも隊長さんに乗せてもらったけど、問題ない安定の走りだった。帰りは行きと逆で離宮の近くぐらいまで走ってから馬を歩かせていた。行きとは違う景色を満喫できて私には嬉しい事である。


 離宮の近くは花壇が多くこれぞ宮殿の庭、という感じの作りになっていた。

 遠目でしか分からなかったが、バラのアーチのようなものも見えてる。

 隊長さんの話ではその場所はバラ園になっていて、庭の中は迷路のようになっているそうだ。初見の人は間違いなく出られないらしい。庭の中になんて物を作るんだ、と思ったら庭師さんの遊び心で陛下の許可もあったらしい。茶目っ気があるが、知らない人には大迷惑な話だと思う。私は出られない事間違いなしだ。

 そのバラ園は、あまりにも美しかったので妃殿下のお気に入りになったそうだ。出産前など体調の良い時はその庭を散歩するのが日課だったらしく、思い出のある庭園になっているので、今でも当時のままなのだそうだ。


 こうして妃殿下の話を聞くと陛下は愛情深い人のようだ。離宮の事もそうだ。妃殿下を偲ぶためにそのままにしていたというのだから。

 そこから考えても殿下への対応がいまいちわからない。そんなに愛情深い人なら、殿下への対応も、もう少しあっただろうに。なんで、あんなに冷たい関係なのだろうか? 関係を拗らせているようにしか見えない。他人様のご家庭に首を突っ込むのもどうかと思うが純粋に不思議だったのだ。

 だが、これ以上の好奇心はやめておこう。好奇心は猫をも殺す、という言葉があるくらいだ。ろくなことにはならないだろう。


 私が脳内考察をしながら景色を眺めていると、隊長さんがバラ園の事を聞いていたのに無口になった私を心配そうに覗き込む。心配をかけたのが申し訳ないので別な話題を振っておこう。


 「綺麗なバラだと思って。離宮では見ないわよね?」

 「はい。離宮の庭園は、妃殿下が離宮に入られてから希望をお聞きして、作る予定でしたので作っていません。そう思うと少し寂しいので姫様のご希望に合わせてお作りしましょうか?」

 「いいえ。妃殿下が作られていないのに、間借りしている私の希望に合わせて作るなんて申し訳ないわ」

 「そうですか? 今、住まわれているのは姫様です。その点は気になさらなくてよろしいかと」

 「気にするわ。陛下も殿下にとってもあの離宮には思い入れがあるわ。私が使わせてもらっているのも申し訳ないのに」

 「姫様らしいですね」

 「それに、私は花を眺めるのは好きだけど。毎日見るかって言われると、そうでもないよのね。どうせなら、食べられる野菜を作る方が好きだわ。家庭菜園とか」

 「家庭菜園? 自宅で野菜を作るのですか?」

 「そうよ。自分たちが食べる分だけね。小さな畑で作るの。楽しいのよ、種から芽が出て大きくなって実になっていくの。隊長さんは見たことはないでしょう?」

 「はい。見たことはないです。簡単にできるんですか? 以前、お芋さんを収穫したことがあると言われていましたが、その家庭菜園で作られていたのですか?」

 「ええ」

 

 ボートで隊長さんがたっぷり悩んで答えた気持ちがわかった気がする。今度は私が悩んで答える番だった。

 まさか、お芋さんの話を隊長さんが覚えているとは思わなかった。ここでその話がでてくるとは。なんともブーメランに攻撃をされた気分だ。

 まさか、幼稚園の体験学習です、とも言えないので家庭菜園ということにしてお茶を濁してしまおう。

 私はそう結論づけると隊長さんの言葉に頷いた。

 「ええ。お芋さんは簡単に作れるから、家庭菜園でも十分作れるわ」

 「そうなのですね。では、姫様。家庭菜園でしたか。野菜をつくられますか?」

 「??」

 私は隊長さんの言っている意味が分からず、無言で隊長さんを見上げてしまった。


 


 「ここを家庭菜園にするの?」

 私は離宮の裏手に来ている。

 さっきの隊長さんの言葉の意味を教えてもらうべく行動を起こした結果、離宮の裏手に来ていた。

 隊長さんいわく、離宮の裏手に小さな空き地があってそこを好きに使って良いというのだ。

 その空き地は使用用途が決まっておらず、何に使ってもよいので、家庭菜園を作ってはどうか? という話だ。

 まさか世間話から家庭菜園を作って良いという話になるとは想像もしてはいなかった。

 だが、そう言われるとその場所が気になるのが人情というものだ。

 


 「敷地としては大きくはないのですが、小さな畑、と言われていましたので、どうでしょうか? 小さすぎませんか?」

 「これって小さいの?」

 「??」

 隊長さんの小さい発言にオウム返しをしてしまう。私の感覚では小さいとは言えなかった。なにせ、家がひとつ建てられそうなほどの敷地があるのだ。前に住んでいた離れは入るのではないだろうか? これを小さいと表現する隊長さんはやっぱり高位貴族なのだと実感する瞬間だ。

 私の小さいはネコの額ほどの小さな畑で十分である。

 私の戸惑いがわかっていない隊長さんは、土地が足りなかったのかと心配しだした。

 「姫様。不足ですか? 不足であれば、整地を行えば広げることは可能です」

 「いえ、十分すぎる広さよ」

 私は頭痛がしそうなこめかみを押さえながら否定する。これ以上、土地を広くされても困る。今でも大きいのだ。使い切れる自信はない、正直、この広さの三分の一、四分の一くらいでも大きいのだ。

 そこは誤解のないように訂正しておこう。それに私が家庭菜園をするのが決定事項のようになっているが、私が土いじりをして問題にはならないだろうか?

 まあ、料理を作っているので今更な気がしないでもないが、いいのだろうか?

 その点については正直に聞いてみよう。問題なければ、ぜひ、家庭菜園は作りたいと思っている。ずいぶん前に考えていた、小さな野望の一つである、目標を完遂できるなら完遂したいと思う。



 「隊長さん、今更だけど、私が土いじりをして問題にならない? 筆頭や隊長さん、陛下の評判が悪くなったりしないかしら? そこだけは心配だわ」

 「まあ、そこは言いようですので、どうとでもします。ご安心ください。姫様が気持ちよく過ごしてくださるように配慮するのも我々の務めです」

 隊長さんの仕事は私の護衛じゃないの? と思ったけど気遣いは嬉しいので、そこは不問にする。問題にならないのなら、ぜひ、力強くお願いしたいと思う。

 なにせ以前から作りたいと思っていたのだ。ぜひともお願いしたい。

「問題にならないのなら、家庭菜園で野菜を作りたいわ」

 「お任せください。姫様も学校で気疲れをされているご様子。離宮にいるときだけでも健やかにお過ごしいただきたいと思います」  

 「ありがとう」

 隊長さんの気遣いは正直嬉しかった。


 本当に学校は大変だ。授業は問題なくついていけるけど、ダンスの授業とお友達問題がこんなに大変だとは思わなかった。普通にお友達ができておしゃべりして、ランチをして、学校帰りに寄り道をする、なんて普通の学生生活を想像していた。

 ぶっちゃけ、こんなに身分が絡んでくるとは思っていなかった。学校なのでもう少し緩いと思っていたのである。この認識の甘さは反省点だと思う。

 お友達が欲しいと思っていた私だが、ここまで拗れてくると、正直面倒になってきていたし、令嬢の手を煩わせているのも申し訳なく感じている。

 ここまで、人に迷惑をかけてまで、と思わなくもない自分がいる。自分でも収拾がつかなくなって、どうすれば良いのか分からなくなっているし

 申し訳なさと、面倒くささがミックスされて、どうにでもなれ、と思わなくもない。

 この件について、隊長さんは口が出せない部分なので、筆頭と令嬢に相談しようと思っていた。


 せっかく、今日リフレッシュしたのだ。気持ちよく過ごしたいし、家庭菜園を作って良いのならその事を考えてみよう。

 それに、せっかく家庭菜園を作るのだ。商人に相談して種や苗を検討したい。

 昼食会はもう少し先なので、商人に一度手紙を出して野菜の種類や苗を相談しようと思う。

 だが、その前にもう一つ行わなければならないことがある。


 土作りだ。野菜はただ植えればいいというわけではない。勿論、育つは育つが大きくならなかったり実がつかなかったりする。まずは肥料をどうするか、その問題から始めなければならない。それに土も柔らかくしなければ、硬い土では根が広がりにくいのだ。

 土を柔らかくしたり、肥料をまいたり正直私だけでは荷が重い。

 ここは協力者が必要だけど誰に頼もうか? 思いっきり力仕事なので男性にお願いしたい。男性とくれば浮かぶのは騎士さんたちだが、護衛騎士さんたちは正直仕事ではないし、庭師さんに相談するか?土いじりだから仕事の範疇として考えてくれないだろうか? 図々しいか?

 私は裏庭? で腕を組み仁王立ちになって考えていると隊長さんから問題があるのか? と心配された。

 土いじりをしたことのない人には分からない心配だろう。

 仕方がない、私は土作りの話をする。

 それを聞いた隊長さんの反応は予想通りだった。

 「土作り? 野菜は植えれば育つのではないのですか?」

 「うん。そう思ってると思ってた。でも。そうではないのよ。野菜を育てるのにはそれに適した環境を作ってあげないと大きく育たないの」

 「知りませんでした。勉強不足で申し訳ありません」

 「大丈夫よ。普通は知らないと思うわ。まあ、とにかく。そういう理由で力仕事があるの。庭師さんにお願いしたらお手伝いをしてもらえるかしら?」

 「いえ、ご安心ください。私と殿下でお手伝いさせていただきます」

 ?? どういう事だ? 隊長さんはともかく、どうして殿下が出てくる?


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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[一言] もう一つ追記です。 姫様の11歳の誕生日が近づいているはずですから、陛下にはいっそ「力仕事を手伝ってくれる、菜園専任の庭師を寄越してくれ」とでもお願いしてみては?「殿下のお手を煩わせるのは申…
[一言] 追記です。 前にも書いたかもしれませんが、王宮ならお抱えの芸術家がいそうですしが、人形のように可愛い(姪っ子ちゃん談)姫様を描くように陛下から命じられれば喜んで描くのでは。バラ園の中の姫様と…
[良い点] 300話達成おめでとうございます。 [一言] 初めましてです。 殿下はまた何かやらかすでしょうか?ワクワク! やらかし案件好きなのです。 隊長さんは姫様に甘えすぎですよね…。自国の殿下…
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