お友達の紹介 その後で ③
早いものです。今日は投稿2周年になります。
ここまで続けられたのは、読んで頂いている皆様のおかげです。
最近煮詰まって進みが悪いですが、確実に話を進めていきたいと思います。
これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
筆頭は自分の失態に気が付き申し訳なさからなかなか立ち直れずにいる。
だが、今回の件は私も悪かったのだ。筆頭だけに問題があるわけではない。
今回のランチ会、私は普通の、ただただ普通にお友達を紹介してもらうだけのランチ会と思っていた。自分が主催者側とは思っていなかったのだ。だから楽しく過ごせるようにと思っていたが、もてなす側と思っていなかった。この認識不足が問題だったと思う。
筆頭に確認しなかった私も悪いのだが、筆頭は説明していなかった自分が悪いと思っているのだろう。筆頭の気持ち的に今回の失敗が相当響いている様だ。
私的には気にしていないのだが、筆頭の心情としては簡単に折り合いがつかないのだろう。ここは頑張って自分で折り合いをつけてもらうしかない。私が何を言っても納得できないだろうし。慰められているような感じがして落ち込むばかりだと思う。
自分のミスは自分で納得するしかないはずだ。
私がそう思いこの重い空気をどうしようか考えていると隊長さんが高位貴族の顔を覗かせる。私や筆頭の前でそういった立場を覗かせる事は初めてではないだろうか。そう思うくらい印象にない事だ。
「筆頭殿。姫様の前で、どうだろうか?」
「重ね重ね失礼いたしました」
隊長さんの一言で筆頭が立ち直る。隊長さんが言った一言の意味は私には分からなかったが、筆頭には十分な一言だったようだ。んん? その一言でOKなんだ。私は釈然としないが筆頭は少なくとも表面上はいつもの雰囲気に戻っていた。内心は分からないがこれ以上内情を聞く必要はないだろう。
親しき仲にも礼儀あり。筆頭には筆頭の考えがあって、落ち込む日々が続くようならまた声を掛ければ良いだろう。それに私だけではなく隊長さんもいる。この様子なら隊長さんも筆頭の事を気にかけてくれている。なにかあれば声を掛けてくれるだろう。
私はそう結論を出すと最初の話に戻る事にした。
「侯爵家のお嬢様とはランチ会の後も話をする機会があったわ。とても大人しい印象を受けたの」
「姫様。お嬢様は少し内気な方でして」
「そうね。大人しい、穏やかな印象だったわ」
「はい。お姉様もいらっしゃいます。そのお姉様は優秀な方で、令嬢の友人でもあります」
「それがなにか?」
「お姉様が優秀な分、妹さんの方は少し陰に隠れていまして」
「そうなのね。それがなにか問題になるの? お姉さんが優秀で妹はその陰に隠れる。よくある話だわ。私もそうだし」
「姫様もですか?」
筆頭は訝しげに私を見る。筆頭たちに家族の話をしたことがないので知らないのだろう。
私の姉は優秀だが所詮、小国の話だ。こちらの大国のような場所では埋没するだろう。詳しく話をする必要はないと思うが姉と母は優秀な人だ。その事だけは伝えておこう。
今回の事も姉が対応していたのなら私のようなミスはなかったと思う。そう思うと私の方が筆頭に申し訳ない気持ちになる。
「私の母と姉は優秀で有名な人達よ。言うなれば私は出来損ないね」
肩をすくめ自嘲する。私はこれを当然の事と思っているが筆頭はそうは思わないようだった。というか勘違いさせてしまったようだ。
「姫様は我が国に自ら望んで留学に来られたとお聞きしましたが、お姉さまの件が理由の一つでしょうか?」
不安そうな不満があるような、なんとも形容しがたい表情だ。これは私が居場所がないのでここに来たと思われただろうか? 実際は私しか選択肢がなかったのだが、理由を明確にするわけにもいかないし公的には留学生だ。まとまりが良いように話したほうが誤解が少ない気がする。
私は筆頭に角が立たないように理由をまとめることにした。
「こちらから、留学の話を頂いたのは知っている?」
「はい。耳にしております」
「それでね。姉のように勉強ができるようになりたかったの。だったら最先端の国で勉強したほうが良いでしょう? それに兄は後継者の勉強を始めていたし、姉は縁談が進んでいたし。弟は生まれたばかりで。この状態なら私が立候補しても許可が降りるような気がしたの。だからお願いしてみたのよ」
「そうでしたか。利発な姫様が優秀とおっしゃる姉君や母君にお会いしたいものです」
隊長さん、ナイスフォロー。良い感じに終わりそうだ。
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ。それはともかくとして、そのお嬢様のことよ。お姉様との仲はどうなの?」
「家族関係は良好のようです。ただ、お嬢様が大人しい方というだけです」
「そうなのね。私の周りでは初めての方ね」
「そうですね。ご令嬢や姪っ子さんとはかなり違うタイプの方かと。穏やかな方でもあるので交友関係では馴染みやすいかと」
「準男爵家の方はどうでしたか?」
直球の遠慮ない質問が隊長さんから飛んでくる。どうだったかと言われると可もなく不可もなく、だろうか。緊張しすぎて会話が進まなかっただけだ。他にはどうといった事はない。というか、関われなかったので印象が残っていないともいう。苦笑いで誤魔化しながら言葉を選ぶ。
「申し訳ないけど。印象が残っていないわ。さっきも言ったけどお互いにぎこちなくて」
「そうでしたね。それで謝罪に来たわけですから」
隊長さんの冷静なツッコミに同意する。そのおかげでお嬢様の方が印象深くなったのは間違いない。準男爵家の方はなんとも言えない感じだ。でも本当に可もなく不可もなく、悪い印象もない。
筆頭は悪い印象がないのであれば二人ともお付き合いしてみて良いのでは、との提案だった。確かに一度の事で結論を出すのは早いと思う。
準男爵家の子は緊張していた。自分がどうしてここに呼ばれているのか、理由は分かっていても緊張する事はどうしようもないだろう。
私は筆頭の提案に頷き、できれば次回姪っ子ちゃんも交えてお茶会かランチ会を開きたいと提案する。
これには一も二もなく賛同がありお茶会を開くことになった。
次回はスムーズに楽しいお茶会を開きたいと思う。