お友達の決着 おまけ 料理長のささやかな野望
姫様のお友達が決定しました。
これからどういった関係になっていくのか、未知数です。
少し短くなってしまったので、おまけを書いてみました。
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
離宮に帰った途端、筆頭からお友達の件について話があった。
「姫様。お友達の件ですが、子爵家の方以外は問題ありませんので、令嬢にお願いしておきます」
筆頭の発言は決定的な話し方だった。
私との相性はともかく、子爵家の子はどうしてだめだったのだろう? 私との相性が悪いだけが理由ではないと思う。
「理由を聞いても良いかしら?」
「姫様との相性が悪いからです」
筆頭の隣にいた隊長さんが軽く答えてくれた。が、私からはその軽い言い方と笑顔が胡散臭く見える。その思いは視線に出ていたらしい。
「姫様。信用してはいただけませんか?」
「できると思う?」
「難しいでしょうか?」
隊長さんの反応で私との相性が問題ではないことが確定だ。私は昨日の話を思い出し、理由を知っておく必要があると感じた。
「隊長さん。昨日の話でわかったわ。私は利用されないためにも理由を知っておく必要があると思うの。どう思う?」
「確かに、必要ですね」
昨日の話を持ち出すと隊長さんは白旗を上げてくれた。だが、理由は思ったよりも大げさなものでなかった。
「あ、そうなの。思ったよりも普通の理由ね」
「そうですね。まあ、令嬢の学友でもあるので一種のスクリーニングは終了していますので、親戚や周囲の問題はありませんでした。ただ、この姉妹は姫様とは難しいかと思いましたので」
「そうね、自己中心的で思い通りにならないと癇癪を起こす人はちょっと」
「姫様を相手にそんなことはしないとは思いますが。万が一、がありますので。用心をしようかと思った次第です」
「ありがとう。その考えを支持するわ」
私は隊長さんの気遣いに感謝しつつ、子爵家の女の子のことを考える。
癇癪持ちの子とお友達になるのは遠慮したい。何か気に入らない事があると不機嫌になるような人とは付き合いにくい事は確定だ。同じクラスの子達も大変だろうと想像する。
その思いは膨らんでいく。
クラスメイトが相手なら遠慮なくその子は癇癪を起こしたりするものではないだろうか?
続けて姪っ子ちゃんが同じクラスな事を思いだす。姪っ子ちゃんの身分はそう良いものではない。
デビュー会場で私と話をしていたことは見られているはずだ。そういう意味では目立っていたはず。その関係で姪っ子ちゃんに何か言ってたりしないだろうか? 嫌な思いをしていないと良いけど。
私は姪っ子ちゃんのことが気になり隊長さんに話しかける。
「ねえ、隊長さん。姪っ子ちゃん、大丈夫かしら? デビュー会場で目立っていたと思うのだけど。子爵家の子になにか言われてないかしら?」
「そうですね。会場では見られていたでしょうし。その可能性は考えられますね。今度、管理番から聞いてもらいましょうか?」
「ええ。その方が良い気がするわ」
「かしこまりました」
心配になった私は隊長さんに姪っ子ちゃんの事をお願いしていた。
昼食会のときに管理番に直接確認するのでも良いのだが、次の昼食会までに時間があいてしまうので待ちきれなかったのだ。
私が原因で姪っ子ちゃんが嫌な思いをしてしまっては、姪っ子ちゃん本人にも管理番にも申し訳ない気がする。
入学してある程度の問題があることは覚悟していたが、それなりに楽しくは過ごせると思っていた。だが、初めから想定外の事が多すぎる。
穏やかなスローライフはどこに行ったと声高に叫びたい。
おまけ
料理長のささやかな野望
料理長は今、静かな野望を胸に抱いている。
料理長から考えると大きな野望だが、陛下からすると歓迎するべき野望だろう。その大きな野望は、姫様からの料理指導をもう一度お願いできないか、というものだった。
出来うることなら定期的にお願いしたいくらいの料理長である。
以前の料理長からすると考えられない事だが、姫様の心遣いを学んだ後からは姫様の気遣いを学ぼうとしている料理長である。
だが、姫様は学校に通い出している。学生生活もあるのに、自分たちの料理指導をお願いするのはどうか? という分別は持っていた。
こうなるとあの見習いが羨ましくなる料理長だ。懲罰という形ではあるが離宮で姫様の手伝いをしているのである。姫様の料理を直接見ることができるのだ。羨ましくて仕方がない。自分では望むことのできない立ち位置なのだ。あってはならない事だが、権限を使って立場を変わろうか? と考えてしまう料理長だった。以前は姫様を恨めしく思いスープストックのようにグツグツと煮詰まっていたが、今の料理長は別の意味で煮詰まっている。
料理長は自分の野望が胸にありすぎて煮詰まってしまっている。
どうしようか。陛下にお願いするか? お願いすれば陛下は快く姫様に打診をしてくださるだろう。だが、それは姫様の心象を悪くするだけだ。
では、どうするか?
先日姫様から塊肉をみじん切りにする依頼があった。コロッケの要領だと伝言もあった。コロッケなら自分たちに依頼が来るはずなので別な料理を作られたのだろう。
その料理が気になる。
気の良い姫様だ。お願いすれば教えていただけるとは思うが、料理をする人間にとってレシピは重要なものだ。簡単に教えて下さいと言って良いものだろうか? ということにも気がついた。
料理指導もレシピを教えてくれ、と言っている事と変わらないのだが、料理長はその事には気が付いていなかった。レシピを教わる事と料理指導は別物だと思っているらしい。
煮詰まり考え込んでいた料理長はある事に気が付いた。
姫様の料理はミールキットという形で街でも販売されている。それを購入すれば良いのではないか? 今までは食堂で食べたから美味しくなかったのであって、ミールキットで自分で作れば味が変わるのではないだろうか?
その考えに行き着いた料理長は副料理長に依頼する。
「ミールキットというものを買ってきてくれ」
「ミールキットですか? 商人殿のお店で売っているという」
「そうだ。使った事はあるか?」
「いいえ。噂には聞いていますが、どうなんでしょうか?」
「もう一度、姫様に料理指導をお願いするわけにいかないだろう。それを思えばミールキットとやらで練習するのが良いかと思うのだ」
「確かにそうですね。わかりました。買ってきます」
「頼んだぞ」
副料理長も姫様の料理が気になっていた。料理指導をお願いしたいと思っていたので、料理長の話は渡りに船である。今から料理の下ごしらえが始まり、現場監督の役目のあるはずの副料理長だが、そんなことは後回しとばかりに自らでかけてしまった。
ミールキットを買いに行くつもりなのだろう。
本来なら止める立場の料理長も黙認しその後姿を見送っていた。
料理長はミールキットを使いこなすことができるのだろうか?
料理長に幸あれ。





