エイプリルフール小話
少し遅くなりましたが、エイプリルフールなので
小話を書いてみました。
本編とは関係のない話です。楽しんでい頂けたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
今日はエイプリルフールだ。
昨年はトリオたちと食事を楽しんだが、今年はその予定がない。だが折角のエイプリルフールだ。なにかをしたい私は一計を案じる。
その結果一つの案を思い付いた。
今日はその案を実行しようと、朝からソワソワしている。
「姫様。今日は落ち着きがございませんが、いかがなさいました?」
私のソワソワっぷりを心配した筆頭からのコメントだ。今は朝食前の身支度の時間だ。室内着に着替え今から朝食の予定だ。私は計画を思い付いてからいつ実行しようかと考えていた。そのせいか、どうにも楽しみすぎて浮かれているらしい。
こんなときは下手な言い訳をすると、ドツボにはまるので私は素直に計画を実行することにした。
「筆頭。あのね。今日は少し可愛いドレスを着てみようと思うのだけど、どうかしら?」
「ドレス、でございますか?」
筆頭が私の意見に驚く。そうだろう。
私が着飾るなんて離宮に来てから、いや、人生初の単語だ。筆頭が驚くのも無理はないと思う。
そう、私の計画は似合わないドレスを着てみると言って、驚かせようと考えたのだ。筆頭も驚いているので、計画は上手くいっていると思う。
最後の締めに冗談だと言って終わろうと思っていたら、筆頭の後ろにいた衣装担当の侍女さんたちが反応した。
筆頭よりも早い反応だった。
「姫様。素晴らしいお考えかと」
「お任せください。わたくし達が姫様にお似合いの衣装を選ばせていただきます」
「まずはお食事をお済ませになってくださいませ。その間にご用意をさせていただきます」
「えっ?」
気合いの入った侍女さん達の言葉だった。私は反論するまもない。
だが、このままでは後が大変なことになるのは目に見えている。
私はネタバラシをしようと試みる。
「あのね。違うのよ」
「ご安心くださいませ。姫様にお似合いの衣装を選ばせていただきます」
「そうじゃなくてね」
「動きやすいものをお好みの姫様ですので、今日はディドレスを中心に選びますわ」
侍女さん②が、にこやかに言いきる。配慮してます、アピールなのだろうか?
だが、負けない、
「派手なものは好きじゃなくて」
「もちろん。承知しております」
良かったよ。分かってもらえた。ここでネタばらしだ、
「ご安心ください。派手ではなくても可愛らしく着飾る方法はいくらでもありますわ」
侍女さん③の台詞に私は撃沈する。止めは筆頭だった。
「姫様。この者達に任せておけば安心ですわ。朝食の後にお着替えをしてみましょう。待ちきれないのは分かりますが、用意する時間も必要ですので」
「筆頭。でも」
「本来なら入浴やマッサージも必要ですが、今日は簡略して試着と言う形で着てみましょう」
筆頭も侍女さん達と同意見だった。そして私以外の全員が満面の笑みだ。
わたしは策士策に溺れる。と言うのだろうか。それとも自業自得? この状況をどう打開すれば良いのか分からず固まってしまう。そして反論する間もなく食堂へドナドナされてしまった。
私は食後の後、いや、食事の後だから食後と言うのだった。あまりの事に私は動揺している。
私は今、衣装部屋でドレスの山と向き合っている。
いや、ハンガーにかけられているから、山とは言わないだろう。
だが、私的にはドレスの山だと思っている。視線はドレスに釘付けだ。
なんだろう、宣言されたので、派手なものは少ないが、可愛らしいものばかりだ。
いや、可愛らしいものを選んでくれると言われていたのでそうなるのは間違いないだろう。これを私は着なければならないのだろうか?
ドレスの山はフリルやリボンは少なく見える。色も柔らかい色ばかりできついものはなかった。一番濃い色はコバルトブルーだろうか? 重々しい感じはない。
色やリボンの観察をして気を紛らわせているが、これを私が着るのだろうか?
私自身が言い出したので、こうなるのは仕方がない事だと思う。そして、わたし自身も困っている。ここまでしてもらって着たくないとは言えない。
しかも言い出したのは私自身だ。
理由はともかく言いだしっぺの責任は取らなくてはならないだろう。
覚悟を決めるしかない。
私はゴクリと唾を飲み込み。ドレスの山に挑むことにした。
筆頭と侍女さん達が手ぐすねを引いているのが見えている。
今後の教訓、エイプリルフールの習慣がないところでエイプリルフールをしてはいけない。
肝に銘じておこう。