学校生活の前に ①
いよいよ学校生活が始まります。
ですがその前に入学式の様子を覗いていただけたらと思います。
姪っ子ちゃんの場合
今日は入学式だった。私は両親や叔父様に来ていただけると思って楽しみにしていたのに、保護者の参加は認められていないのだと聞いてとてもショックを受けていました。
でも、もっとショックな事は姫様とクラスが別れてしまっていたことです。
姫様はやはり優秀で、最優秀組に入っていました。私はその2つ下のクラスです。本来の私であればその成績でも十分優秀なのですが、姫様と同じクラスになりたかったので残念でした。
姫様のクラスを見に行きたかったけど、優秀クラスは別の階にあって行きにくい雰囲気だったので見に行けませんでした。私のクラスには今までのお友達はいませんでしたが、隣の席の子と話すことができてお友達になれそうだと少し安心しました。
お隣の子とお話をしていたら、こんな事を言ってはいけないけど、意地悪そうな顔の女の子に話しかけられました。
「ねえ、デビュー会場で姫様とお話していたのは貴方だったと思うのだけど? 違ったかしら?」
「はい。そうです」
「どうして姫様とお話しをしていたの?」
私は叔父様の言っていた事は本当にあるのだとびっくりしました。
叔父様から言われていたのです。会場で姫様と話をしていたのを見ている人がいるだろうから、なにか言われるかもしれない。もしかしたら、紹介してほしいと言われるかもしれないから断るようにと。
その事を思い出しながら少し緊張していました。何を言われるのか怖かったのです。
意地悪そうな子は同じ制服でも生地の感じが上質なようなので貴族の中でも偉い人のような気がします。わたしは何を言われるのでしょうか?
「叔父が姫様の担当をさせて頂いていて、顔見知りなのでお声をかけて頂いたのです」
「ふーん」
興味なさそうな口ぶりです。このまま離れてくれないかな? って思いますが無理みたいです。
「じゃ、姫様を知っているのね。だったら話が早いわ。姫様を紹介してちょうだい」
やっぱりです。来ました。こんな事を言われる日がくるなんて。自分でも思ってもみませんでした。私は驚きながらも言われていた事をそのまま口にします。
「申し訳ないのですが」
「断るつもり?」
意地悪さんの顔が意地悪な上に怖くなります。叔父様ありがとう。教えてくれてて。そうでなかったら怖くて頷いていたかもしれない。
「いえ。違うんです。姫様を紹介するのは許可が必要なのです。隊長様か筆頭様の許可がないといけないので。一度、どちらかの方とお会いしていただけませんか? 許可がでればそのまま姫様を紹介してくださるそうです」
「え?」
「隊長様達にお会いしていただくときは、私の方から叔父に伝えますので。叔父がお二人にお話してくれると思います」
「なんでそんな事をしないといけないのよ? 学校で話してくれればそれでよいでしょう?」
意地悪さんは強気です。私は言いつけを破るなんて怖くてできません。怒られるくらいならまだ良いけど。隊長様にバレると大変なことになると思います。世間を知らないわたしでも簡単に想像がつくというのに意地悪さんは考えないのでしょうか?
「これは隊長様からの指示だそうです」
「バレないわよ。紹介してちょうだい」
「いえ。すぐにバレると思いますし、言いつけを守らなければ私は家に迷惑をかけることになるのでできません。言いつけを守らなかったら隊長様がどうされるかは簡単に想像がつくと思うのですけど」
「いくじなしなのね」
私は簡単に諦めてもらえないようなので、隊長様の事を持ち出します。そうすると意地悪さんは嫌味を口にしていなくなってしまいました。
隣の席の子はびっくりしたのか、ずっと黙っていました。そして私に大変ね、と声をかけてくれました。次に意地悪さんの事を教えてくれました。
「あの子、子爵家の子なの。姫様が目立つし、隊長様がいらっしゃるからお近づきになりたかったのね」
「だから私に声を掛けてきたのね。 私は隊長様と、お近づきになりたいとは思わないけど」
「そうよね。私もそう思うわ。でも姫様とお話できるってすごいわね。どんな方なの?」
「とてもお優しい方よ。気さくで私なんかにも丁寧に接してくださるの。びっくりしたわ」
「そうなんだ。もっと気取った方なのかと思ったわ」
「そんな事ないのよ。それに近くでお会いすると小さくて綺麗なの。お人形さんって思うぐらい可愛いし」
「キレイで可愛いんだ」
「そうなの。びっくりするくらい」
隣の席の子は私の話にうんうん、と頷いてくれていて問われるままに姫様の事を話していました。姫様の話をすることは止められていないので気にしていませんでしたが、紹介してって言われないか心配していましたがその子からは言われませんでした。
今度は逆に不思議に思ってしまって理由を聞いてしまいました。
「だって隊長様と会わないといけないんでしょ? 怖いから嫌だわ。それに不合格だったらそれはそれで嫌じゃない? だめな子ってことになるでしょう? 親に怒られると思うし。姫様に不愉快な思いをさせたら家に何かありそうだし。あなたは怖くないの?」
「私。そんな事を考えたこともなかったわ。でも、隊長様が怖いのは本当よ。私も怖いもの」
「やっぱり」
隣の子はわたしの話に納得という感じで頷いていました。彼女は納得できると頷くのが習慣のようです。
隊長様が怖いのは本当で、隊長様が優しく接するのは姫様にだけだと思っています。姫様にはとっても丁寧で優しい感じがします。私が初めてお会いした時と姫様に接するときとでは別人の様に見えましたし。
そこまでは隣の子には言えませんが。私がそう思っているのは本当です。
隊長様が私にある程度話してくれるようになったのは、姫様と仲良くさせて頂いているのと叔父様のおかげだと思っています。でなければあの方は私のことなど見向きもしないと思います。
姫様は隊長様があんなに怖いことをご存知なのでしょうか? 私が言うことではありませんが。なんとなくそんな事を思ってしまいました。
姫様と隊長様の事を考えているとお隣の子から言われました。
「ねえ、姫様のことは言わないから、お隣同士仲良くしてね」
「ありがとう。わたしも仲良くしてほしいわ」
同じクラスでお友達ができそうでホッとしました。
皆様のおかげで、人質生活の2巻が発売されることになりました。
3月に発売予定です。
コミカライズの方もコミックスとして発売されるそうです。
こちらが4月6日に発売予定です
どうぞよろしくお願いいたします。