正月用 小話
新年、おめでとうございます。
新年になったので、小話を書いてみました。
本編とは関係のないお話です。時系列もまったく関係ありません。
お正月休みの暇潰しになれば幸いです。
今年が皆さんにとってよい一年でありますように。
もうすぐ年が明ける。元日だ。日本で言うところのお正月だ。
もちろん、こちらの人たちにお正月という概念はない。普通の一日のように新しい年になったという認識があるだけだ。
だが、私にとってお正月は大事なものだ。私だけでもお祝いをしたいと思っている。そして 日頃の感謝を離宮の皆さんに伝えた上で、今年もよろしくと言いたいと思っている。
年が明けた。一年の始まりだ。
一年の計は元旦にあり。ではないが襟を正して行きたいと思う。
というわけで、今年もなにかをしたいと思っている。去年、というか今年はお汁粉を用意した。皆さんに喜んでもらえたし、おしるこ紛争? ではないが足りなくて追加で作ったものだ。今回? 次回も皆さんに喜んでもらえるものを作りたいと思っている。
だが、何が良いだろうか? 人数が人数だ。手の込んだ物や凝ったものは数的に難しい。簡単で美味しくて喜ばれるもの。数もそれなりに必要だ。
そう言えばバレンタインデーはホットチョコを作った。やはり数の関係で、汁物や飲み物的なものが良いだろうか?
そうなると思いつくのはホットワインだが、仕事中の人もいるからアルコールは駄目だろう。では、甘酒? でも、酒粕がないし、米麹もない。手配すれば手に入るだろうが、今からでは間に合わない。もっと早くから考えておくべきだった。私は自分のミスを反省しながら別の物を考える。
冬で温まるもの。豚汁? でもあれは後片付けが大変だし、具材を切る量も作る手間も大変な事になりそうだ。それはちょっと遠慮したい。わがままだが、寒いので片付けが大変なのは遠慮したい。
もう少しお手軽なものが良い。なんだろう。
ジンジャーティーなんてどうだろう? もしくははちみつレモンのホットとか? どちらもお正月らしくはないが、そう思うのは私だけだ。皆に喜んでもらえるか? どうだろうか?
私は決められずに悶々としている。いっそのこと何も出さない? スピーチだけとか? だが、私が離宮の皆に感謝を示せる数少ない機会だ。このチャンスは逃したくないと思っている。本来なら何も用意する必要はないし、用意するものでもない。むしろ今年もよろしく、なんて挨拶をする必要もないのだ。そうは思うが、やはり感謝を伝えられるチャンスは大事にしたいと思う。そう考えると中止する、という選択肢はなかった。
悩みに悩んだが、はちみつレモンのホットにすることにした。はちみつレモンは疲れも取れる気がするし、温かい飲み物は寒い季節は嬉しいものだと信じている。唯一の心配といえば酸っぱいものが苦手な人がいないかだろう。蜂蜜が入っているので甘いのだが、知らない人はレモンというだけで敬遠されるかもしれない。まあ、そのときは無理強いせず紅茶にしよう。紅茶ならすぐに入れられるし苦手な人も少ないと思う。
勝手な判断の上で用意するものははちみつレモンのホットにする事にした。
「皆さん。新年おめでとう」
「おめでとうございます」
職員の皆さんからの挨拶が返ってくる。私は挨拶を続ける。
「昨年はありがとう。皆さんのおかげで無事に一年を終えることができました。本年もよろしく」
「よろしくお願いいたします」
職員の皆さんからも挨拶が返ってくる。後は昨年と同じだ。
昨年と違うのは休みの人は出てこなくても良いけど、温かい飲み物を用意してあることを伝えておく。ついでに翌日分も用意しておくので好きなタイミングでどうぞ、ということにした。皆が口にしたのに自分がないのは寂しいだろうと思ったのもあるし、前回の教訓もある。
去年は食べられなかった方々が残念がっていたという事で、筆頭に相談され追加で作ったのだ。
今回はそんな事にならないように、皆さんに事前のインフォメーションと翌日分も作っておくという安全策。大事だと思っている。
特筆すべきことはないが、皆さんには好評だった。
そして当日、翌日分ともにはちみつレモンが残らなかったのは意外だった。