お茶会と言う名の報告会
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令嬢は母親にいちごジャムを使ってもらうために父親に一緒に説得してもらおうと思ったらしい。忌避感が強いので自分一人で説得するよりは父親が一緒のほうがうまくいくだろうと考えたのだそうだ。父親は令嬢の話に納得し、説得するからには自分も一度口にする。という主張をしたので、ジャムを口にしたらしい。ちなみに父親は紅茶に入れるよりパンに付けて食べることを気に入ってくれたという事だった。
父親はジャムを気に入った上で、生産地域や生産量を確認してきたという事だ。令嬢は自分が知っている情報をすべて話したそうだ。父親はその話を真面目に聞いてくれたそうだ。その上で令嬢が言っていたように、流行を作る人が使用すれば、売り切れや欲しがるばかりに無茶なことを言い出す人がいるからと侯爵である父親も心配してくれたらしい。
いちごは自家栽培自家消費だったので、ある程度の量は作れるが大量生産には対応しきれないだろう、という判断になったそうだ。取り合いになると揉める、という結論に達した。
令嬢は私と話していた生産者の話で気がついていたようなのだが、いちごを生産していた地域は令嬢の父親が治める所領とのこと。自分の所領なら、と侯爵家が一括で買い上げることにしたそうだ。
その上で今後の販売に対応できるように生産量を増やし、流通に対応できるようにサポートしていくことにしたと。初めから商人が関わっているので流通は商人が仲介する事は決定。もちろん私へのインセンティブはそのまま。
なんか、私が考えていたよりも話が大きくなっているので驚いている。どうして侯爵家が、とも思ったが自分の所領の生産性を上げるのであれば、混乱しないように介入するのは当然だな、と納得できる話でもあった。
令嬢は私が考えていない方向だろうと父親に訴えたらしいが父親からは生産者が困る方が姫様は望まれないだろう、と言われ引き下がったようだ。
「姫様はあの地域の者たちが寒くないようにと収入を上げることを考えていらっしゃいました、そう思うと困ることは望まれないという父の判断に反論ができませんでした。勝手なことになり、申し訳ありませんでした」
「そんな事はないわ。一括で買い上げてくれるのよね? 彼らの収入が上がって、寒い思いをする子供がいなければそれでいいのよ。問題ないわ。それに売れるかどうかわからないよりも買い上げ先がはっきりしている方が安心だわ。それに商人が入るのだもの。勝手に値下げとかもされないだろうし。そういう意味では第三者もいるし、良いことだと思うわ」
「そう言っていただけると。少し気持ちが楽になります」
令嬢はしきりと下げていた頭を上げた。私がどう思うか心配だったらしい。緊張が解けたのかホッとしたようだ。姪っ子ちゃんは自分が口を挟むことではないと思っているのか黙って聞くことに徹していた。自分の立場をわきまえているらしい。私も見習いたい部分だ。
だが、心配なこともある。侯爵家が一括で買い上げるのは問題ないが、その後の消費は大丈夫なのだろうか? 自家消費では限界があるのではないだろうか? 作られたものを無駄に廃棄されてはもったいないし、食べ物を廃棄してほしくないと思う。その心配を確認したらそこは心配なかったらしい。
「実は家族でお茶を楽しむ時にジャムを出したんです。初めこそ母は口にしなかったんですが、わたくしと父が食べて美味しいと話していたら、母も試してくれて。そしたら父やわたくしよりも気に入ってしまって」
そこからは私が思いもよらない話になった。一括購入は令嬢の父親が決めたことでその先は自家消費で終わらせるつもりのようだったのだ。使用人の人達にも配って忌避感を減らしていく方向で考えていたらしい。だが、令嬢の母親が普通のお茶会で使うのではなく、親しいお友達だけで開く気楽なお茶会があるので、その時にお披露目をすると言い出したのだそうだ。そこで気に入ってくれたお友達だけにプレゼントする、と。
外では購入できない特別なものだから喜ばれるだろう、との事だ。
「そうなのね。まあ、皆さんに喜んでもらえるのなら良いと思うわ」
「ありがとうございます。姫様」
これは、どういう事になるのかな? もしかしてこのままいくと侯爵家の特産品になるのかな? 他では作られないものだからそういうことになるよね? そんなつもりじゃなかったんだけど。まあ、あの地域の人達が困らなければそれでいいけど。侯爵家の特産品になったらそれなりに困る人は出るんじゃないかな? 大丈夫かな? お貴族様の力関係とか。私には関係のない話だからいいかな。気にしなくても。令嬢の父親も娘に力関係の事まで話す気はないだろうし。私のインセンティブはそのまま入るし。心配な事は商人の事かな。商人に直接なにかされるのはいただけないもんね。勝手に美味しいところだけを持っていっておいて、商人に不利益な事をされたらたまらないわ。そんな事を許す気はないし。商人のことだけは本人に確認だけはしておこうかな。次回の昼食会で話してみよう。
令嬢は可愛い人だし、好感を持っているけど父親に関しては会ったこともないし、話したこともないので少し警戒は必要かもしれない。ジャムは寒さの解消や子供が困らないために考えたものだ。違う方向に使われて侯爵家だけ潤って彼らに還元されないって事になっては本末転倒だ。商人に何かされない限りそんな事はないと思うけど、時々は進捗を聞いておこう。
令嬢の父親はどんな人なのだろうか? 隊長さんに聞いてみようか? 令嬢よりは父親とは面識があると言っていたので人柄を聞いてみることにしよう。
私は侯爵家の考えがわからなかったので隊長さんにアドバイスを求めることにして、この話はここまでにした。令嬢は父親が一括買い上げ、母親のお友達へのプレゼントにする件を信じているので、それ以上の事はわからないだろう。それに父親が違うことを考えているとは思っていないだろうから、深く話を掘り下げるのはどうかと思う。
生産者の収入が増えるということでこの話は終了にしよう。
私は一息つくと姪っ子ちゃんにテストの事を聞くことにした。テストについては私も不安に思っているので、他の人の感想を是非聞きたいと思っているのだ。