試験
私は現在、緊張しながら校門の前に佇んでいる。今日はクラス分けの試験の日なのだ。よくよく気がついていなかったが入学試験は正しい入学試験ではなかった。正確に言うと、家庭教師が生徒の学力を報告し普段の試験を提出して入学試験代わりになるのだそうだ。正式な? 試験は今回のクラス分けの試験が本格的な試験になるそうだ。入学は学力があれば誰でも入学できるというのは家庭教師の試験を乗り越えれば出来るということなのだろう。ある意味門戸は広いというのは良いことなのだと思える。後は本人の努力次第だ。そしてその努力次第は私にも適応される。私も学力が足りなければふるい落とされるということだ。
私はその試験に今から挑まなければならない。大丈夫だろうか? 不安で仕方がない。隊長さんたちは大丈夫というが入学試験を受けた覚えがないだけに正式な試験は前世ぶりだ。しかも前の試験はマークシート式だったので、わからないときは勘に任せていたが、今回は記述式だろうから勘に頼ることはできない。そこは辛いところだ。
校門に到着すると上級生の案内があり試験を行うクラスに通される。そこは私が子供の頃通っていた学校のクラスと大きな差はなかった。勉強という目的は同じなので中身は大きく変わらないのだろう。私は一人で納得すると名札がついている席に座った。そこは窓際の席で落ち着く事ができる場所だった。
その席に座り周囲を見回す。やはり顔見知りの人は誰一人としていなかった。そこを寂しく思いながら座っていると。少しずつ席が埋まっていく。その中に姪っ子ちゃんはいなかった。残念だ。
あまり周囲をジロジロと見るわけにもいかず、試験が始まるのを静かに待つ。私が落ち着かなかったり、騒いでいたりするとマナーの講師である筆頭の名前を汚すだろう。そんな事はしたくないのでなるべくおしとやかを心がける。
表面上は平常心を保っていると、先生なのだろう。一人の男性が入ってくる。神経質そうな男性だ。その先生と思われる人が教壇に立つ。
「皆さん。おはようございます。今日は聞いていらっしゃると思いますがクラス分けの試験になります。不正行為のないよう試験を受けてください。不正行為を見つけた場合は入学資格の取り消しとともにその場で退出していただきます。よろしいですね」
先生からのお達しの後に試験問題が配られる。入学資格が取り消しというのは間違いないのだろう。その言葉の裏にはそんな事になれば家の名前を汚すことになると言いたいのだろう。そんな事を考えつつ、私は緊張しながら試験を受けることになった。
試験は無事に終わった。結論から言えばラノベあるあるだった。試験は大きく難しいものではなかった。手こずったのは歴史だろうか。誰それの家が事業を起こして、だの。何代前の国王が画期的な政策を行ったのだの。そういったものが難しかったのだ。他のものは常識や一般的な四則計算や基本的なものだった。そこはなんとかなったので安心しているが。歴史は嫌いではないがどこそこの家がみたいなものは勘弁してほしい。名前が似ているだけに間違えていないかが心配で仕方がない。
もし、そのへんで間違えていると、一気に点数が下がる可能性がある。点数配分の話はなかったが間違えていれば順位が下がるのは自明なのだ。
私は試験が終わったので隊長さんの迎えを待ちながら間違いが少ないことを祈った。
落ち着かない気持ちを誤魔化すように他の事を考える。令嬢がいないのは当たり前だが、姪っ子ちゃんが見あたらない。試験は全員受けるはずだが、身分が違うので受ける会場が違うのだろうか? そう言えばそのへんの事を聞いていなかった。できれば会いたかったのに残念だ。
おまけ 令嬢の心配
今日はクラス分けの試験が行われるので、わたくしも登校し入学生の誘導を行うことになっています。案内だけではなく、試験会場がわからず迷子になった生徒の案内や、入学生同士のちょっとしたトラブルなども対応する。そうすることで学園内のトラブルを生徒同士で解決し問題への対応力をつけることになっているのです。
わたくしは総会の一員として全体の統括を殿下と行なうため、一人ひとりを案内することはありません。できれば姪っ子ちゃんや姫様を案内したかったと思いつつ、上がってくる報告に耳を傾け相談しながら問題の解決策を探していきます。
この場には殿下もおられるので、殿下も問題解決に当たっておられます。陛下や隊長様、姫様が絡むと問題行動を起こされる殿下ですが、総会の事は基本的に真摯に当たっておられます。どなたのことであっても同じ対応を取ってくだされば、誠実な方だと思えます。どうして陛下や隊長様のことになると子供の様な態度をとられるのでしょうか? 陛下や隊長様は殿下のこの様子をご存知なのでしょうか? わたくしなどでは陛下たちのお心を図ることはできませんが、わたくしのような立場の者でも心配でなりません。
殿下のあの態度が姫様に悪影響を及ばさないか心配でなりません。わたくしなどの言葉を聞いてくださる殿下ではありませんが、これからも殿下の様子は気をつけていく必要があると思っています。
姫様や姪っ子さんだけでなく、今年の新入生が楽しく過ごせるよう心を砕いていきたいと思っています。
姪っ子ちゃんの場合
今日は試験の日です。わたしは姫様たちとの外出が終わってから、勉強の毎日でした。外出で問題行動があると両親や叔父様から叱られた後、今度はクラス分けの試験があるからと叔父様から毎日課題を出され、出来るようになるまで繰り返し問題に取り組むことになりました。
正直に言うとこっそりとサボりたかったのですが、クラス分けの試験ということで、ここで頑張れば姫様と同じクラスになれるかもしれない、ということを言われたので頑張らないといけないと思ったのです。ご令嬢は上級生になるので、同じクラスにはなれません。でも、姫様は同学年なので同じクラスになれるかもしれません。そう思ったら頑張るしかありませんでした。
試験の前日まで叔父様はつきっきりでわたしの勉強を見てくれました。叔父様はわたしの点数が低いと隊長様たちの手前恥ずかしい思いをするからなのでしょうか? それとも姫様と同じクラスになって欲しいと思っているのでしょうか? 聞いていないのでわかりませんが、どちらにせよ叔父様は勉強を教えてくださっているので無駄にはならないように頑張りたいと思っています。