表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
222/354

 祝 お出かけ ⑤

 食べ歩きをするべく露店をさがすとあっさり見つかった。しかし食文化が違うためかスイーツ系だった。私としてはガッツリとまではいかなくてもしょっぱいものが食べたかった。どうするか。皆のお腹具合はどうだろうか? 私一人の意見で決めるわけにもいかないだろう。

 「お菓子のような露店が多いのね。食事ができるようなものはあるのかしら?」

 「そうですね。こちらの通りにはありませんが、反対側にはありますよ」

 管理番情報は正しいだろう。隊長さんよりは正確な気がする。令嬢よりも早く姪っ子ちゃんが反応する。食べた経験があるようだ。

 「向こうの通りにあるパンは美味しいですよ」

 「召し上がった事がありますの?」

 令嬢は興味津々の様だ。その様子を見てそのパンを食べに行く事を提案する。二人は一も二もなく同意してくれた。付き添いの二人は口を挟む様子はないのでパンを食べに行くのは問題にならないのだろう。姪っ子ちゃんが先導してパン屋さんに向かう。私と令嬢はその後に続いた。


 「ここが評判の露店です」

 パン屋さんの前に着いた。評判と言うだけあって何人かの人がお店の前にいて商品を選んでいて賑やかだ。令嬢はそんな中に入った事はないのだろう。初めてで腰が引けている様だ。隊長さんの後ろからそっと覗いている。私と姪っ子ちゃんは何を食べようか思案していた。

 隊長さんの後ろにいた令嬢は気になることがあるようで小さな声で私たちに声を掛けてくる。

 「あの、本当に歩きながら食べるのですか?」

 そう聞いている傍から私たちの前をパンをかじりながら歩いていくカップルがいた。令嬢はそのカップルをマジマジと見つめている。それこそ穴が開くほどに見つめていた。

 「嫌かな?」

 私と姪っ子ちゃんはカップルを見送りながら聞いてみる。令嬢は首を横に振り否定する。初めて食べ歩きをするので良いか心配なのだと言っている。まあ気持ちは分からないでもない。新しい事をするときは刺激的だし、ドキドキするものだ。特に今までマナー的に悪いと言われていた事をするときは背徳感も加わってなお一層のドキドキ感があると思う。それに、今日は一人ではない。初体験を皆でするのだ。楽しんで欲しい。しかし外では歩きながら食べる事にもマナーがある。そのマナーを守れば大丈夫なはずだ。

 「大丈夫よ。食べ歩きにもマナーがあるの。残さない。汚れた手で他の物に触らない。食べ終わったごみを道に捨てない。という事よ。それを守れば悪い事ではないわ」

 「食べ歩きにもマナーがあるのですね。では、そのマナーを守ろうと思います」

 「食べ歩きもいいですが、立って食べるスペースもあるのでそこでもよろしいと思いますよ」

 管理番からカウンタースペースを示される。椅子はないが立って食べるスペースがあった。そこを利用している人は誰もいなかったので、私達が使えるスペースはありそうだ。立って食べるだけでも楽しそうだ。そこを借りる事にしてもいいだろう。

 「そこを借りる?」

 私の問いかけに高位貴族(隊長さんも含む)の二人が頷いた。


 ここまでの準備がすめば次はメニューだ。何にしようか?

 このお店はパン屋さんなので、パンにいろいろ挟んである。サンドイッチとホットドッグがメインの様だ。挟んであるのはソーセージやスクランブルエッグ、野菜を挟んだものがある。組み合わせもいろいろだ。ここで姪っ子ちゃんから情報が。

 「お二人とも、ここは、お願いすると自分の好きな物を挟んでくれるんですよ。前に貼ってあるメニューは直ぐに出来ますよって言うメニューなんです」

 これは良い情報だ。そうなると私は好きな物を挟んでもらおう。パンも食パンにしてサンドイッチだ。姪っ子ちゃんは好きな物は決まっているようで迷っていない。最後まで悩んでいるのは令嬢だった。決まったのか注文に向かうとここで令嬢が立ち止まる。私が不思議に思って振り向くと不思議そうな令嬢と目が合った。どうしたのか首を傾げると令嬢も首を傾げ聞いてきた。

 「自分で注文するのですか?」

 WHY? そこから? もしかして自分で注文したことがないとか? 私はその事に気が付いて令嬢の手を取る。

 「行きましょう。自分で注文するのも楽しいわ」

 「そうなのですか? いつも他の者が注文してくれるので」

 「行きましょう。自分でおすすめを聞くのも楽しいですよ」

 姪っ子ちゃんも誘いをかける。令嬢はぎこちなく頷きながらカウンターの前に進む。

 

 「いらっしゃいませ。ご注文は?」

 「今日のおすすめを教えてください」

 何度か来た事がある姪っ子ちゃんはお手本を示すように自ら進み出た。店主さんのお勧めを教えてもらって姪っ子ちゃんは注文を終える。私もお勧めを追加して注文を終える。私と姪っ子ちゃんを見ていた令嬢は緊張した面持ちでカウンターへ出て、ゴクリと息を呑み店主さんに注文をする。慣れないながらも落ち着いた様子だ。学園でも主要メンバーの一人だけに、立ち居振る舞いは礼儀正しいものだった。管理番や隊長さんも注文を終え出来上がりを待つ。私は出来上がりを待ちながら気になる事があった。

 「隊長さん。護衛の騎士さん達はご飯を食べる時間はあるの?」

 「ありがとうございます。緊張状態も長くは続きませんし空腹ですと力も発揮できませんので、交代で休憩を取るようにしていますから。問題はありません」

 「そうなのね。安心したわ、良かった。お腹がすくと辛いもの」


 私は騎士さん達にも休憩や食事の時間がある事に安心していると出来上がったと声がかかったので取りに行く。令嬢も自分で受け取っていた。

 「美味しそうです」

 「本当に。出来立ては温かいですわ」

 「いい匂いがするわね」

 3人で受け取って立食スペースへ行く。私と令嬢、管理番はサンドイッチ。姪っ子ちゃんと隊長さんはホットドッグだ。ホットドッグ組は店主さんのお勧めでソーセージにキャベツ、玉ねぎなんかが挟んである。隊長さんは追加で卵も載せてあったし、サンドイッチも買っていた。こんなに食べれるのだろうか?

 サンドイッチ組は管理番はハムにチーズのチーズサンド、令嬢は野菜サンドでヘルシーだ。私はベーコンレタスサンドのハーフにしてもらった。ハーフも食べやすいようにいくつかにカットしてあった。気遣いが嬉しいし、今食べ過ぎるとおやつが食べられなくなってしまう。そこを考慮してのハーフサイズだ。

 いくつかカットしてある一つを隊長さんが失礼します、と先に食べた。えっ?と思う間もなくモグモグされる。私のベーコンレタスサンドがと放心していると毒見は必要です、とすまし顔で言われた。本当か? と疑うも言う訳にもいかず。表情に出ないように注意しながらお礼を伝えておく。表情に注意してはいたががっかり感は出ていたらしい。予想していたのか隊長さんは自分のサンドイッチを半分分けてくれようとするが、そんなに食べれないのでそこは遠慮しておく。


 皆で食事前の挨拶をすると一口パクリといくが令嬢はやっぱり周囲が気になるのと、大口で食べることに抵抗があるのか、小さく噛んでいた。注意されることはないのだが、周囲に視線を流している。自分が見られていないのか気になるのだろう。ここは何を言っても気になるものは仕方がないので、私は実践して見せる。論より証拠、ではないが大きめに齧って見せた。口が小さいので大きめに齧るとすぐに口の中がいっぱいになってしまう。リスのように頬を膨らませモグモグする。管理番が心配そうにしながら注意してくる。

 「姫様。喉に詰まらせないでくださいね」

 「たいしょーぶ」

 行儀が悪いのは承知だが敢えて口を開けないようにしながら手で隠しつつ答えてみた。隊長さんは苦笑していたが何も言わず、管理番は困り顔だが何も言わなかった。私は口を空にすると令嬢に話しかけた。

 「美味しいわね」

 「え、ええ。美味しいです」

 令嬢は私の行動に驚いて目を丸くしていたが。すぐに笑顔になって頷いた。そして声を上げて笑い出す。その笑い声に隊長さんが目を丸くする。それに気が付かない令嬢ではないが今日は新しい事を楽しむと決めた様だ。私に同意を求めたので力強く同意する。

 「今日はいいですよね」

 「勿論よ」

 お出かけはまだ続くのだ楽しまなければもったいない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★書籍版公式ページはこちら!! 書籍、電子書籍と共に3月10日発売予定!

人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[気になる点] 食べ歩きは良いのですが 食事が美味しくない設定はどこに消えてしまったのでしょうか 日々の食事がキツいというところからこの物語はスタートしていたはずですし、食の文化は王宮が発信しているよ…
[良い点] ようやく屋台での食事が実現、ドレス屋から打って変わって先導は姪っ子ちゃんと、それぞれ活躍の場もあって良いですね。逆に初体験の令嬢の初々しさといったらない(注文を自分でする発想が無いとかさす…
[一言] 令嬢ちゃんもかわゆす
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ