祝 お出かけ ②
いつも読んでいただいてありがとうございます。
今回は初のお出かけです。
離宮に引っ越しして初めてスローライフ的な内容が書けそうです。
私の書きたいことが多すぎて回数が少し多くなりそうな予感がしています。
お付き合い頂けたら嬉しいです。
今日はいよいよ初の外出である。
私は隊長さんの横を歩いている。いつもエスコートしてもらっているので定番の位置だ。護衛の騎士さんは私の後ろを歩き、令嬢の護衛さんが二人前方を歩くらしい。というのは今から待ち合わせの場所に行くからで、隊長さんからレクチャーを受けているからである。街中でして良いこと、悪いこと、注意事項などモロモロのお話である。お前は父親か、というツッコミを入れたくなるくらい細々とした注意事項を言ってくる。本気で心配しているし安全のためなので理解はしているのだが、最後には本当に理解したのかと私に復唱させる始末だ。どれだけ心配なんだと言いたくなる。警備隊長さんの責務だし、私も安全には代えられないし前回の失敗もあるので、初めは真面目に聞いていたし復唱もしていたのだが、あんまりしつこいので諦めて一言返してみた。
「隊長さん。心配しているのはわかるけど、要は隊長さんと一緒にいれば大丈夫ってことよね? 違う?」
「違いませんが、何があるかはわからないので私の近くから離れないこと。一人で行動しない事。この二点はお約束ください」
「わかっているわ。私は初めてだもの。一人で動いたりしないわ。迷子になる自信があるもの」
そう私は方向音痴なのだ。一人で動けるはずがない。前の生活ではナビに助けられ一人で行動もできたがここではそんなことはできない。迷子になったら帰れなくなる自信がある。そう思うと一人で動くという選択肢はなくなるのだ。その点は信用していただきたい。
隊長さんも私が一人で動く様子がないとわかって少し安心してくれたようである。どれだけ私が危ないことをすると思っていたのだろうか。私は良識があるつもりだ。人を困らせることはしない、はず。最近そうでもないかな? 心配になってきた。気をつけよう。
そう自分を振り返っていると待ち合わせの場所が近くなってきたらしい。馬車のスピードがゆっくりになる。
待ち合わせの場所は定番の場所だそうだ。
街の中心にある噴水の前と言う事だった。城下の作りは城門で簡単な検問を受けて中に入る、中心まで真っ直ぐな道があり噴水を中心に放射状に道が広がっている。そこから商店街や工作店などの大まかな地区に分かれるのだそうだ。ざっくりだが場所の説明はそんな感じだった。中心部はそう大きな危険性はないのだが街外れは危ないこともあるらしく。スラム、というほどではないが貧困地区はそれなりにあり、そこが危険地帯と認識されているそうだ。馬車を降りる前にもう一度スラムの方には行かないように念を押されていた。そんなに信用できないのか、と言いたくなるが心配の表れと思い頷くに留める。なにせ噴水の前には管理番と姪っ子ちゃんが待ってくれている。そこに令嬢が向かって歩いているのが見えた。私が最後になる。人を待たせるのは好きではないので、隊長さんを早くと急かしていた。その私に苦笑しながら隊長さんがエスコートしてくれる。
二人が合流し私に気がついた。姪っ子ちゃんが手を振ってくれたので私も振り返す。その様子を見ていた令嬢と管理番は苦笑していた。確かに私に手を振るのは問題だが、今日は私は【姫様】ではない【お嬢様】なのだ。友達に手を振ってもらったっておかしいことはないのだ。胸を張って言いたい。
「お待たせしたかしら?」
「いいえ。わたくしたちも今でしたの」
令嬢がニコニコしながら答えてくれる。姪っ子ちゃんも頷いていて、私達は今の段階で気分が上がっている。本当なら気ままに歩きたいのだが流石にそうは問屋がおろさなかった。
露店は予定の店に行くまでにあるらしいので、そこは気ままに覗いていいらしい。だが、お店は決められたお店だけにしてほしい。と言われていた。警備の関係で飛び込みで入るのは心配だそうなのだ。みんなもそれに同意してくれていて、私も勿論同意した。気ままに入れないのは残念だが、露店は覗いて良いのだ。高望みはいけないだろう。城下に行けるだけでも嬉しいし、そこまでわがままを言う気はなかった。
お店は令嬢と姪っ子ちゃんのチョイスだ。案内してくれると言っていたので、おまかせである。事前情報がないだけに楽しみで仕方がない。
「では、お嬢様。初めはわたくしがおすすめするお店ですわ。どうぞ、こちらですの」
令嬢が私を誘いあるき出す。東西南北のわからない私である。導かれるままにあるき出した。その道には露店が多く並んでいる。どのお店も布やクツ・バッグ・シャツやスカートなどの服飾や布製品が中心だった。私は服には興味がないがバッグやクツは大好きだ。特にバッグが大好きで買い物に行くと友人にこの前もバッグを買ったよね? と言われるほどバッグを買っていたものである。露店のバッグに視線を流しながら帰りにバッグを見ようと心に決め、お店に到着する。露店に気を取られすぎたせいかお店の前まで何屋さんか気にしていなかったのだが、このお店は。
「ドレス屋さん?」
「はい」
姪っ子ちゃんがにっこり笑い、その後に令嬢が続く。
「お嬢様は、デビューのときとても落ち着いたドレスを着用されていましたでしょう? せっかくですのに、もう少し可愛らしいドレスの方がお似合いになると思いますの。せっかくですので、わたくしと姪御さんで見立てさせていただけたらと思いまして」
「わたくしもそう思いました。せっかくのデビューでしたのに。紺一色のドレスなんてもったいないと思いました。大人っぽくて素敵でしたけど。もっと可愛いのでも良かったと思うんです」
二人の力説だった。私の横でうんうん、と頷いている隊長さんがいる。そのちょっと斜め後ろにいる管理番は困り顔だ。令嬢がいるので口を挟めないようだ。
二人は私に力説した後、行きましょうと店の中へ誘われた。
お店の中はすっごかった。
さすがはドレス屋さん。ショーウインドウにはドレスが飾ってあり、後ろの方も見せるようにドレスがトルソーに着せられている。奥に階段がありその上はいくつかの部屋に分かれている様だ。試着室なんかもあるのかもしれない。ドレスが並んでいる反対側の奥には応接セットがあり、くつろげるようになっていた。私は初めて入るドレス屋さんにドキドキしながらお店の中を見回していると店長さんが迎えてくれていた。
前も今回も含めて人生初のドレス屋さんである。緊張するし(自分が買うのでなければ)興味もある。どうなるのだろうか。
ドキドキする。