表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/354

 閑話 陛下と殿下

いつも読んでいただいてありがとうございます。


自分で書いているのですが

ああ~ 殿下の評判が下がって行く~

と思っています。

 私はこの国の責任者としても見過ごせない問題を抱えている。

 後継者問題だ。私の息子のことだ。この国の今後の事として無視することはできない問題だろう。

 私から見る息子は、どうも思慮にかけその立場にふさわしくない事をする傾向にある。

 自分の立場をわきまえた行動ができない。自分の起こす行動が及ぼす影響を考えることができないようだ。要するに自分の立場を理解できていないか、何をしても許されると勘違いしているかのどちらかだろう。


 今回の一件もそうだ。姫のデビューに出席していた者達に話を聞くと、予定にないスピーチを姫にムリヤリさせようとしていたようだ。姫が無事にやり過ごしてくれたから問題なく開催できたが、これがやり過ごすことができなかったらどうなっていた事か、あの息子には分からなかったらしい。

 加えて、姫に対し問題を起こすのもこれが初めてではない。パートナー問題もそうだ。あの時も聞く限り随分と失礼な対応をしたようだ。相手を考慮した対応を取ることができない。これは外交問題で大きな欠点となる。

 今は盤石な我が国だが、いつ何時何が起こるか分からない。その時のためにも外交はスムーズ、かつ円満な関係を築いていなければならないのだ。息子にはこの事が分かっていないらしい。


 ため息しか出てこない。我が息子ながら理解ができない、配慮が出来ない。ないないづくしで嫌になる。あの息子は私の頭痛の種だ。問題を起こすことしかしない。

 これが問題を起こしているとわかっているのなら、なんの問題もないが、いや、問題はあるが教育の方法を考えることが出来る。しかし、息子には周囲が何を問題としているのか理解できていないようだ。そのことが最大の問題と言えよう。


 どうするべきか。いや、私の後を継ぐことは問題外だ。このままの状態なら継がせることはできない。もう少し様子を見るつもりでいたが、こうも外交問題の火種を何度も起こすのでは、これ以上見過ごすことはできない。宰相には話していないが、賛成してくれるだろう。問題はどうあの息子に話をするかだ。今までの問題が理解できていないのだ。自分の愚かさを理解させるほうが大変だろう。


 私は亡くなった后に申し訳なかった。これは私の育てかたが問題だったのは間違いない。

 私はため息しか出なかった。あの姫が私の娘だったら、いや、男子として私の息子だったなら、考えてもどうしようもない事だが考えずにはいられなかった。

 自分の子供の事だ。最大の責任は私にあるが、ここまで息子が問題になるとは思っていなかったので考えにまとまりがつかず。埒もない事ばかり考えてしまっていた。




 僕は憂鬱な夜を過ごしていた。明日は父上に呼ばれている。この話は宰相が直接持ってきた話だった。宰相自身が直接言いに来るくらいだから、良い話ではないことはわかっている。

 どうせ、また、怒られるんだろう。あの姫が来てから僕は怒られることばっかりだ。良いことなんて一つもない。

 僕の何が悪くてこんなに怒られないといけないんだろう。怒られるような事は何もしていないのに。それに姫は怒られることはないのに。僕ばっかり。


 僕はため息しか出なかった。そして悲しくなる。僕は誰にも必要とされていないんだと悲しくなる。怒られるばっかりで褒めてもらったことはないし、いつも何かを頼んでくる人しか近くにはいないし。どうしてこうもうまくいかないんだろう。

 どうすればいいのかひとつもわからない。


 父上は僕のことなんて嫌いなんだと思う。僕はいつも怒られているし、褒められたこともない。友人たちのことで注意されたり、父上や宰相に推められた友達とは仲良くできなくて、人付き合いが苦手だと思われているし。父上と話をしていてもため息をつかれたり、理解できていないと言われたり。

 そんな事ばかりが続くから、父上と話をするのが怖くなってしまった。リラックスして会話を楽しむことはできなくて。呼び出されるときは何を注意されるのかと、心配が先にきてしまう。


 離宮の姫が羨ましいと思う。

 いつも近くには従兄上がいてくれるし、父上とも楽しく話ができるみたいだし。人伝いに聞く話では、父上とは笑顔の絶えない会食をしているようだ。それに宰相とも話は合うらしい。父上だけでなく、宰相とも楽しく話ができるなんて嘘みたいだ。僕にはできない。


 僕が仲良く話をしたい人はみんな姫を褒めている。僕が褒められることはないのに、悔しいから嫌がらせで突発的にスピーチをするように仕向けたのに。

 令嬢は外交問題になるから、急に何かをしてもらうのは良くないって言っていたけど。外交問題になるはずがない。わが国に対抗できる国なんてないのだから、大げさに考えすぎだ。あまりに良くないと言うから、その時は納得している振りをして会場で直接言い出すことにした。そうすれば慌てる姫が見られるだろう。そう思ったのに、姫は気にする様子もなく、普通にスピーチをしていた。急にスピーチを頼まれたらしどろもどろになると思ったのに、全然気にしてなかった。笑顔だった。開催宣言の後、令嬢から姫に謝罪をしなければいけないと注意された。外交問題になる前に、国同士の話になる前に、自分たちの話で、内々に済ませるべきだと。僕は大げさだと取り合わなかったら、令嬢が悲しそうな顔をして、自分が謝罪に行くと、立ち去ってしまった。いつもなら強引に僕を説き伏せるのに、今日はそこまでではなかったから、大げさだと思いなおしてくれたんだと思う。

 でも、自分が行くと言っていたから、やっぱり僕も謝罪した方が良いんだろうか? そう思って後から姫の所に行ったら、従兄上あにうえが怒っているのがわかった。

 従兄上が最近僕に厳しくなっているのがわかっていたけど、姫の所で僕に会った時、他人を見るような目でとても冷たかった。あんな冷たい目で見られるのは初めてで、どうすれば良いのか分からなかった。それだけ僕に怒っているんだろうか?

 

 姫も僕に言いたいことがあるはずなのに、僕には何も言わないし。そうしているうちに従兄上あにうえは姫とホールに出てしまう。姫がどうして踊ろうと言い出したのか考えろ、と言われたけど。姫が自分で約束してたって言ってたから、だから従兄上あにうえとホールに出たわけだし。それ以外に理由なんてあるんだろうか? 従兄上あにうえの言うことはよくわからない。

 でも、姫を庇っているのはわかる。それにしても、あの姫は感じが悪いと思う。僕が会いに行ったのに僕を無視してホールに出て行ったし、従兄上あにうえとも話をさせてもくれない。

 いつもみんな独り占めしているのに。あんなときぐらい従兄上あにうえと話をさせてくれても良いのに。姫は従兄上あにうえが近くにいるありがたさなんてわからないんだ。どれだけ羨ましいことなのか。わからないなんて。


 僕はこれからどうしたら良いのかわからないけど。

 父上にも、従兄上あにうえにも宰相にも、どうしようもないって、思われてるみたいだ。それは感じている。


 明日も怒られることは確実で。せめてよく寝て明日に備えるしか思いつかないから、早めに休むことに決めると面会の希望者がいると連絡が来る。こんな時間に? と不思議だったが相手を聞くとすぐに了承する。従兄上あにうえから会いに来てくれるのだから、断るなんて思いつかなかった。


どこまでも子供な殿下です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★書籍版公式ページはこちら!! 書籍、電子書籍と共に3月10日発売予定!

人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
あ〜あ、駄目だこりゃ。 でも前にも同じようなくだりありましたよね。 陛下が息子にがっかりして、息子はなんでか分からず不満ばかり、という閑話があったような。
[一言] まだ途中なんだけどまだボンクーラ・バカカースのアホさ加減見続けないといけないのこの作品?
[良い点] 親子間の隔絶、認識の差がよくわかって良いですね。 [一言] 陛下は「相手を考慮した対応を取ることができない」って息子を評してるけど、有能な娘を自国に取り込むために問題アリアリな息子を無理矢…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ