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 閑話 大人たちの心配

お騒がせしました。

ネットが復旧しました。ネットが、と言うよりは私のパソコンの問題だったようです。

分からなかったので、友人に修復をお願いして直してもらいました。


お知らせを削除すると、投稿がいつのものか分かりにくくなるので

前回のお知らせはそのままにして、時間を置いてから削除する事にしました。


よろしければ、お付き合い頂けたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

大人たちの心配 (隊長さんと筆頭さん)


 「隊長様。この装いでいかがでしょうか?」

 「筆頭殿。あまりに地味ではないか? 姫様のデビューだ。もう少し華やかなものでも良いはずだ。予算は気にしないでほしい。品格維持費で不足なら私の方で用意する。姫様に相応しいものを選んで欲しい」

 「いえ、そこは問題ありません。デビューに不足がないようにと追加予算が出ましたので。ですが、姫様はあまりに華やかなものは嫌厭されるかと」

 「しかし、これではあまりにも。姫様には」

 隊長は言葉を濁すが要するに地味すぎて気に入らないと言いたい様だ。筆頭も同意は出来るが派手なものは好まれない、と言いたいらしい。二人は目の前にあるドレスを眺めているが、要するに意見がまとまらない。隊長はもう少し華やかに、と言い、筆頭はあまりに派手なものは本人が好まないと牽制をしている。

 目の前のドレスはクリーム色のドレスだ。品位としては相応しいが、年頃の女の子のデビューで着用するドレスとしては、あまり相応しいようには見えない。隊長としてはその考えがあり、姫様にはふさわしいものを着て欲しいと思い、筆頭に意見を述べている。筆頭もその意見には賛成だが姫様本人が嫌がるだろうと予想していた。どちらも本人の事を考えてるが、意見が真逆なので話がまとまらない。


 ドレスでこれなのだ。今から小物も靴も髪飾りも決めなければならない。本来ならデビューの装いは本人の意見も考慮する。相談し、試着をしながら決めていくものだ。

 だが、今回に限ってはその手段は取れなかった。


 なぜなら離宮の姫様は今、ダンスという難敵とパートナー問題という難題とも向き合っているのだ。その上装いまで決めろと言われたら心労で倒れそうな勢いだと思われた。二人はその辺を考慮し、自分達がある程度用意し、姫様に選んでもらおうと考えていた。そのため姫様に近い二人が、相談し決めるという運びになったのである。二人の見落としていた事は、ここまで意見が合わないとは考えていなかった事だろう。 


 二人の意見が割れている。華やかなものを好み本人を着飾らせたい男性と、本人が好みそうなものを選ぶ女性とで意見が合わない。これは男女間の衣服に対する永遠のテーマなのかもしれない。


 普段なら身分も考慮し、女性という立場の筆頭が引いただろう。だが、今回は引けなかった。なぜならデビューの装いとは女の子にとって特別なものだ。それなのに何も知らない男性に選ばせたくない、という本人も無自覚な心理が働き、現状を産んでいた。意見がまとまらない二人は自然とため息をついていた。だが、ここで引いたのはやはり身分も考慮した筆頭だった。

 

 「では、隊長様。デザイナーを呼んでデザインをしてみますわ。小物も揃えてみます。その上での判断ではいかがでしょう?」

 「承知した。筆頭殿、種類もいくつか用意してほしい。今回着用しなくても今後、着る機会は増えていくだろうから無駄にはならないはずだ」

 「承知いたしました。デザイナーとも相談してみます。小物まで含めて3種類ほどでよろしいでしょうか?」

 「いや、5〜6種類は欲しい。先程も言ったが予算は気にしないでもらいたい。小物も質の良いもので、立場に相応しい物でお願いしたい」

 「お任せください」


 筆頭は隊長の頼もしい発言(予算は青天井と判断する)に自分の満足行くものを用意することを決めた。

 装いに予算の上限がないのは嬉しいものだ、と実感する筆頭だが、唯一の心配は意見が合わない事だった。

 

 筆頭の心配は的中する。出来上がったドレスで再度、意見を戦わせる二人の姿があった。

 姫様が知らない大人の苦労だった。



 大人たちの心配(管理番と商人)


 管理番と商人は、商人の自宅で食事を楽しんでいた。姫様から提供された調理方法を練習し、試食するという名目で二人で食事を楽しんでいる。因みにこの試食会に隊長が参加することは少ない。身分が違うということもあるが、姫の護衛と他の仕事で時間が取りにくいというのが大きな原因だろう。隊長の事はあまり好きではない商人だが、この会に呼ばない、という事は考えた事はなかった。


 離宮の姫様からはトリオと呼ばれて馴染んでいる3人組。

 隊長と付き合いがあるという事は、この国では大きな意味を持つ。このコネを使いたくないと思ってる商人は、何度も隊長への橋渡しを頼まれているがすべて断っている。この事が他の仕事仲間から妬まれているのは知っているが、隊長との付き合いを商売に利用する気はなかった。もちろん、姫様との付き合いもその中に含まれる。

 その姫様はこの3人は仲が良いと思っている。

 その姫様をがっかりさせたくないという事と、隊長はあまり好きではないが貴族にしては良いところもある、と考えている商人は人付き合いは大事にするべきだ、という考えもあり、試食会と言う名の食事会をする時も必ず声を掛けるようにしていた。


 食事会に参加する事は少ない隊長だが、声を掛けられること自体は悪くないと思っているのか、断る時はいつも申し訳なさそうにしている。そこだけは年相応だな、と感じる商人だった。


 今回も試食会の声を掛けたのだが、時間が取れないとのことだった。がっかりしている様子は少し可愛いところがあるな、と感じた年長組二人は隊長に気が付かれないよう必死になって笑いをかみ殺していた。お詫びと称し、差し入れのワインをもらったので、明日は管理番がお裾分けを持っていく予定だ。忙しい隊長の慰めになれば良いと二人は思っていた。


 「最近の隊長殿は忙しい様子だな」

 とは商人。なんのかんのと言いながら心配している。それに同意をするのは管理番。こちらは純粋に気になっているようだ。

 「ああ。筆頭殿もお忙しそうだし。デビューの用意とはこんなに大変なんだな。妹の時は気にしてなかったから知らなかったよ」

 「用意するのはドレスだけじゃないしな。小物も揃えたり、髪型や着付けの担当者を用意したりするはずだし。まあ、姫様の場合は離宮の侍女たちで良いんだろうけど。なんにせよ、我々には手が出せない事だから。お二人に頑張ってもらうしかないよな」

 「なあ、姫様。大丈夫かな? 殿下の事もあるし。嫌な思いをしないと良いけど」

 心配げな管理番が言い出した。

 「そうだな。貴族ってやつは嫌なやつが多いからな。姫様みたいな方のほうが珍しい」

 とは商人。管理番の心配に同意見らしい。

 「姫様は特殊な環境におられたから、他の害意をご存知じゃないだろう? 会場は隊長様がいるから心配ないけど。学校に通われてからの事が心配だよ」

 「いじめとかないよな? 姫様に直接文句を言いに来るなら問題ないだろうけど。集団は怖いからな。何事もないと良いけど」

 お前は親か、と突っ込まれそうな事を心配している最年長者の商人がいる。

 管理番も気持ちは同じなのか、心配を深掘りしていた。

 「ああ。外交問題とか考えれば下手な事はできないはずだが。そこに気が付かない、とかないよな?」

 「学校に通うくらいだ。そこら辺はちゃんとしてると思うけど。子供は何をするか分からないからな」

 「勘違いしている馬鹿なやつはどこにでもいるもんだ。粋がって変なことをしないと良いけど」

 「確かに。国の大きさがあるから何でも言っていい、なんて子供じみた事をする奴がいないとも限らない」

 どこかの殿下の事を、どこぞの隊長が心配していたが、どこぞの管理番と商人も同じような人間がいないか心配していた。


 何か手が打てないか、心配している管理番は【忠告する】と言う手しか思いつかなかったようだ。

 「姫様にお伝えするか?」

 「姫様の事だ。理解されているような気がするが」

 「そうだけど、でも、心配だし。それとも入る前から先入観を持ってしまうのは良くないかな?」

 「そうだよな。先入観は良くないよな」

 と管理番の意見に同意する商人がいる。

 

 そして一周する。

 「「心配だ」」


 年長者二人組の不安は尽きない。


 自分たちが心配をしても仕方がない。そこはわかっている。だが、心配なものは心配なのだ。

 姫様なら大丈夫、そう思っているが気になることは仕方がない。

 自分たちに手が出せない場所だから更にやきもきしてしまうのだ。


 年長者二人組の心配は尽きなかった。


今回は少し長くなりました。

一つ分だと少し短くて、二つ分だと少し長いのですが、大は小を兼ねる、という事で

二つ分投稿する事にしました。


大人の心配を、だよね~と思っていただけたら嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[気になる点] へ~、トリオで試食会してたんだ! 良い感じだなぁ
[良い点] パソコン修理お疲れさまでした。 [気になる点] 離れの頃はわかりますが、離宮を与えられた姫様になってからは品格維持費自体が青天井のはず。姫様が聞いたらもったいないと気にするだろうが、隊長さ…
[良い点] 四者四様のそわそわ感が微笑ましいですね。本人達はそれどころじゃないのでしょうけど。 隊長さんは、もう保護者というより距離の近い叔父と言うか溺愛気味の父親みたいでニヤニヤしちゃいました。 […
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