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お友達を作ってみよう 2

 隊長さんからの注意で動揺が隠せない殿下は、私にどう対応すればいいのか分からないようだ。確かに喧嘩を売ってから即座に挨拶をする事への変換は難しいだろう。特にこの年頃は難しい年齢だ。

 仕方がない。私が折れるのが物事がスムーズに運びそうだ。隊長さんへ一度視線を流す。頷きが返ってきたので、分かっていたがやはり殿下で確定だ。陛下の息子とは信じられないがそこは別問題だろう。

私は礼を取り挨拶をする。

 「殿下とは知らずに大変失礼しました。こちらには数年前よりお世話になっております。残念ながら今までお会いする機会がなく」

 「数年前から?」

 「はい。6歳のころからお世話になっています」

 私は余計な事は言わずに最低限の会話に終始する事に決めた。この様子では建設的な話し合いは出来そうにない。こうなったら面倒だし、時間もないが隊長さんから殿下の侍従さんにお願いしてもらってモロモロ確認した方がスムーズな気がする。事前に会えて良かった。こんな浅はかな感じの子供と分かれば対応も考えられる。これが当日だったら私も戸惑うし面倒も増えていた事間違いなしだ。別な意味で、今日の邂逅に成果を感じた私は辞去の言葉を口にしようとしたら、先に殿下の方が口を開く。


 「お前が父上のお気に入りと言うのは本当か?」

 「お気に入り? 何のことでしょうか?」

 「お前だろう? 父上と食事をしたり、話をしたりする事があると聞いている姫は?」

 「確かに陛下と食事をさせて頂いたり、お話をさせていただく機会はありますが、それだけで気に入っていると言われても、皆さんも機会はあるでしょうから」

 「母上の離宮も使っているだろう」


 殿下は顔に気に入らないと書きながら私に吐き捨てるように言ってきた。

 なるほど、一番気に入らない点はそこか。自分が許可されていない離宮へ、私が入ったものだから自分が侮られているような気持ちになるのだろう。だが、そこは親子間の問題で、私に八つ当たりをされてもらっても困る。それに殿下は分かっているのだろうか? 確かに私の国は小国で、今は人質としてこの国に来ているが、名目は交換留学生。それに立場上は同じ身分だ。お前呼ばわりされるわけにはいかないのだけど。どうしようか? 私が注意したりしていいものだろうか? 正確には抗議案件だと思うのだけど。

 私は殿下に返事もせず立っていた。頭の中は動いているが見た目上は立っているだけなので、人の話を聞いていないようにも見えるだろう。


 「お前人の話を聞いているのか?」

 殿下が大声を出し私に詰め寄って来る。その時点で私は殿下を相手にしない事に決めた。大声を出す人は嫌いなのだ。自分の感覚で申し訳ないのだが、気に入らない事があると大声を出せば何とかなると思っている自己中心的なタイプは、相手にしないのが一番いいと思っている。しかし、殿下がこんな調子でこの国の今後は大丈夫なのだろうか? 注意してくれる人はいないのか? この件だけでも殿下の人柄がわかる。


 「ええ。聞いています。確かに離宮は使わせていただいています。陛下から使うように勧めて頂いたので。陛下から勧めて頂いたのに私が断る理由はどこにもありませんから。どなたからその話を聞いたかはわかりませんが、真偽を確かめましたか? 噂だけを鵜吞みにしていませんか? 人の話は得てして本人の都合のいいように話されるものです」

 「嘘をついてるって言いたいのか?」

 「いいえ。その点を判断するのもご自身です。私が言いたいのは情報の正確さを確認したのか。その話をした方が信用できる人なのかを確認したのか? と聞いています。私が陛下と会食したのは2回です。そのうちの1回は頂いたものへのお礼も兼ねています。お話をしたのは2回だけ。一度は陛下がつけてくださった侍女が問題を起こしたからです。その確認のためでした。もう一度は離宮の案内をしてくださったから。それ以外でお会いしたことはありません。その程度でそんな話が出てくるのはいかがなものかと」

 「それは」

 「それは?」

 殿下は黙り込む。その様子に私は呆れたがこのままでもどうしようもない。隊長さんも侍従さんも、立場上会話に入りにくい。隊長さんは職務中で、侍従さんの手前あんまり露骨な注意は出来ないだろうし。侍従さんからすれば私は一応姫の肩書があるし、なんとも面倒くさい。

 私が話を切り上げるのが一番おさまりが良さそうだ。

 「殿下。ガゼボをお使いになりたいようですので、私はこれで。それから、陛下からデビューの件についてお話があったかと思いますが、私の方からお断りをさせていただくのでご安心ください。もう一点、私は交換留学生としてこちらに招かれました。真意はどうあろうと留学生としての立場に変わりはありません。その私に先ほどの対応はいかがなものかと。誠意ある返答があると期待させていただきます。では」


 私は殿下の返答を待たずにガゼボを後にする。

 正直この国に来てここまで気分の悪い思いをしたのは初めてだ。

 子供を相手に大人げないとも思うが。最近こんな事がなかったから耐性が落ちているのかもしれない。しかし、殿下は私の一番嫌いな部類の人間だ。あの手のタイプは本当に嫌いだし、質が悪い。

 ため息を吐きつつ歩きながら隊長さんには詫びておく。せっかく私のお願いを聞いてくれたのに私がこの対応ではなんとも骨折り損だ。

 申し訳ない。


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[一言] まず、現状確認。 姫は子持ちの前世があるとはいえ、最近は肉体に精神が引っ張られ気味のギリ幼女(九歳くらいまでらしいので)。 そして中身はどうあれ来歴上は 「実質人質の留学生として、六歳で兄…
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