プレゼント 2
そうだった…
本当にうっかりしていた。
お姫様は自分で何かする、という発想がないからキッチンを選択肢から外したんだった。
乗馬を習いたい、とお願いするつもりだったのに。
やらかしたな…
なんでも良いと言われて、自分の欲望が優先してしまった。
私は自分の迂闊さに恥ずかしくなり俯く。
「失礼しました。今のは忘れてください」
「おや?忘れて良いのか? 別に構わないが」
「良いのですか?キッチンを使っても、本当に?」
私はガバリと音を立てるように顔を上げるとニヤリと笑った陛下と眼が合う。
「どうやら、今の様子が姫の素顔かな?」
私は陛下の言葉から顔が赤くなるのがわかった。
自分が何も考えずに行動していたことに気がつく。
私のばか…
なんて迂闊なの、あんなに気をつけていたのに。
いろいろ取り返しがつかない気がする。
こんな状態になったら私、どうしたら良いんだろう…
俯く事もできず、かといって眼を反らすこともできずうっかり陛下と見つめ合っている。
陛下は余裕の笑顔でだ。
陛下は笑いながら私を見ていた。
間違いなく楽しそうだ。
私からしたら化けの皮が剥がれた感じでいたたまれない…
「では、姫。今年はキッチンで良いのかな?」
「はい、よろしくお願いいたします」
私は慇懃に頭を下げる。そして、追加の一言も忘れないようにする。
「陛下、自分で、料理するためにキッチンの使用許可が欲しいのです。本当によろしいのですか?」
そう、キッチンを使っても良いよ、と言われても代理の人が調理するのでは意味がない。
私は指示を出すだけではなく、私が自分で料理したいのだから。その辺が中途半端にならないように陛下に念を押す。
「解っているよ、先程あれだけ熱弁を振るわれたのだから。約束はまもるよ」
陛下は軽く約束をしてくれた。
先程、自分で普通の姫は自分で料理をしないだろう、と言ったのに…
舌の根も乾かぬうちにこの発言である。
その辺は良いのだろうか…
私は疑問に思ったが考えるのは放棄した。
陛下が良いと言ったのだから、良いのだろう…
なにせこの大陸の支配者だ。
陛下が黒と言えば、白も黒となる。
考えても仕方がない…
考えても仕方のないことは考えない、私の主義だ。