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現実を知ってもらおう

いつもコメントありがとうございます。

長らく管理番と商人を書いていません。そろそろ二人を書きたいと思っています。

いつ頃書けるかな・・・


料理長は突き出されたスープ皿を眺めている。なぜこの皿を自分に出されたのか理解できないようだ。なに? と疑問が顔に出ていた。その様子から私は素直な人なのだろうと当たりを付ける。

素直なその人は分からないまま隊長さんに聞き返していた。


「どういう事? とはどういうことでしょうか?」

「昨日と今日。二日間姫様に出された料理だ。これは料理長の作ったものだろう?」

「姫様にお出しする料理は私の方で調理させていただいています。何か問題でも?」

「食べてみろ。それでわかるはずだ」

料理長の反応に隊長さんは不愉快そうな様子で鼻を鳴らしている。不愉快なのは料理長も同じなのだろう。口角がへの字に曲がっている。だが立場上、隊長さんに何も言えないのか皿を受け取り中を見た。その瞬間料理長が不審な顔をする。それを見た私は自分の推測が当たっていたことを確信する。やはりこのスープは料理長が作ったものではない。


料理長はスープを口にする前に疑問を口にする。

「これが姫様に供されていたスープですか?」

「そうだ。一応パンも持ってきているぞ。そちらも食べてみるか?」

隊長さんはパンも渡そうとするが料理長の手は塞がっていた。どうしようもないので簡易式のテーブルが用意される。その上にパンとスープが置かれ、料理長はその二品を眺めている。その様子が気に入らないのか、隊長さんが食べるように声を掛けていた。

「どうした? 食べないのか? 味は分かっているから口にしなくても問題はないか?」

隊長さん、言い方。言い方が、威圧的。ちょー威圧的。怖いから。

私は威圧的な言い方にかなりビビッてしまった。むしろドン引き。貴族の皆々様はこんな話し方が普通なのだろうか?

隊長さんの後ろに隠れながら料理長の対応を眺めていると、料理長は反発する事もなく、スープを一口食べて目を伏せた。

「申し訳ありません」

料理長が謝罪の言葉を口にする。言い訳もしなかった。その態度に隊長さんがキッと眦を上げた。

「そう言うからには料理長が作ったことで間違いないのか?」

「厨房から出された食事はすべて私の責任です。申し訳ありません」

「質問に答えていないが? 私は料理長が作ったのか聞いているのだが?」

「申し訳ございません」

やはり料理長が作った料理ではないようだ。そうだろう。あまりにも今までの料理と違いすぎる。別な人が作ったのに間違いはない筈だが、その事を言う気はない様だ。作った人を庇っているのだろう。

私はそこまではっきりしたので次の段階に進むことにした。料理長が言う気が無いのであれば、本人に名乗り出てもらうしかない。


「料理長。私を知っているかしら?」

「もちろんです。姫様。初めてお目にかかります。この城の厨房を預かっております。この度はわたくしの不手際でご迷惑をおかけして申し訳ございません」

料理長は何も言わずに私に挨拶をする。

そして頭を下げたまま自分の不手際を詫びてくる。このまま自分の不手際で終了させるようだ。そんな事をさせるつもりは私にはなかった。このまま終了となれば誰にとっても気分が悪いし、特に私の印象は最悪のものとなるだろう。私が一番の貧乏くじだ。

「それで、料理長。この責任はどうするつもりかしら?私にこの料理を出した事がどういう意味を持つかは分かっているわよね?」

「はい。十分に理解しているつもりです」

「そうよね? これは二度目だし。前回の事は侍女長たちが勝手にしたことで、厨房は直接関与していないけれど、私からすれば二度目だと思う気持ちは変わりないわ」

「はい。仰る通りだと思います」

「それで、どうしてくれるのかしら?」

私は追及の手を緩めない。このまま中途半端にすれば有耶無耶になりそうだからだ。筆頭さんも隊長さんも口出しはしてこなかった。本来なら私が直接話をすることはないのだが、筆頭さんも何も言わず私がすることを見守る姿勢になっている。その事をありがたく思いながら事態の収束に向けて続けていく。


料理長の考えを聞くべく話を促す。私の予想が正しければ料理長はこの職を辞めるというはずだ。

「姫様に二度も大きなご迷惑をおかけしています。その事からもわたくしがこの職にあるのは不適当かと思いますので。今日限りでこの勤めを辞したいと思います」

「あなたの後はどうするつもりかしら? 突然の事は他の方にも迷惑をかけると思うのだけど?」

「幸いに副料理長も十分に育っていますので問題ないかと」

料理長の言葉に周囲がざわつく。厨房の方では料理長が辞めるなんて想像もしていないはずだ。ざわつくのは当然だろう。

しかし、料理長が職を辞すると言っても犯人は名乗り出てこない。私の予想ではこの辺りで出てくると思っていたのだけど。計算が甘かったかしら? それとも怖くなって出てこれなくなった?


「そう。副料理長。あなたはそれで良いのかしら?」

ここで終わることは出来ないので副料理長を呼び出す。

私の言葉に真っ青な顔をした副料理長が出てきた。挨拶の言葉も出てこない。無言で首を振り拒絶の意志を示す。本来なら許されない行動だが、今日は目を瞑る。予想外すぎで言葉がないのは理解できるからだ。二人を前に私は困ってしまった。

私の予定ではそろそろ料理を作った本人が出てくると思っていたのだが、やっぱり名乗り出ない。


あれ? 目測を誤ったかな? これって、私がこの人達を断罪してる感じ? こんなに時間を取られる予定ではなかったんだけど。

どうしよう?

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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[良い点] いつもたいへん楽しく読ませていただいております 登場人物に固有名がないのがとても斬新です [気になる点] 料理長が口に出来ない人物 姫が当たりを付けている人物 朝食差し替えを指示した人物 …
[一言] >この城の厨房を預かっております(「料理長です」と続く?)。 すみません、この部分の誤字報告はわたしが書いたのですが、ここは 「この城の厨房を預かっております料理長です。」 となるのではな…
[一言] 姫様がんばって! 王様の無茶振り案件があるので、料理長が責任を取って退職するのが本人の望みのように感じるので此処の失態がわざとのように感じる反面、王様がじゃあ責任取ろうかで厨房の人達まとめ…
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