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やっぱり同じか

足の疲労感を感じつつダイニングのテーブルに着く。今日はどうだろうか?私は少しの緊張を持ちながらテーブルに並べられている朝食を眺める。

食べなくてもわかる、昨日と同じだ。私はため息を付きつつ侍女さんに別のスープ皿を持ってくるようにお願いする。彼女が皿を取りに行くのを眺めつつ筆頭さんに声を掛ける。

「やっぱり昨日と同じね」

「お食べにならなくてもお分かりですか?」

「もちろんよ。一応食べるけど同じなはずだわ」

私は席に着きつつ侍女さんを待つ。私の行動を見ながら不思議そうに首を傾げる。何をしたいのか分からないのだろう。

「お待たせいたしました」

「ありがとう」

私はそれを受け取るとスープの中身をある程度移す。筆頭は理解できず私を眺めている。そこへ隊長さんが朝の挨拶にダイニングに入ってくる。今日はいつもよりも早い出勤だ。

「おはようございます。今朝はいかがですか?」

今日の早い出勤は厨房の対応が気にかかり、早めに来てくれたようだ。有り難い。

「同じみたい。今から味見をしてみるけど」

隊長さんへ返事をしつつ一口食べる。間違いない。同じ物を出しているのか昨日と味付けも同じだ。

芸がないな。


私はついそんなことを思ってしまう。だが、昨日と同じならやる事は一つだ。

私は胸の内で今日の予定を立てつつ、朝食を続ける。食べながらも美味しくないものは美味しくない。今日までだから、と呪文を唱えながら食べる。筆頭さんは別皿に避けられたスープを眺めながらどうするのかと気にしているようだ。

なにも教えないのは申し訳ないので、計画の一部だけを伝える。

「筆頭。お昼に厨房に行くわ。そのスープはその時持っていくからそのまま取っておいてもらえる?」

「姫様が直接行かれるのですか?わざわざ行かれなくても料理長を呼び出す事は可能ですが?」

「そうね。わかっているわ。でも私が行くことに意味があるのよ。だから昼食の配膳が終わったら直接行くわ。その時は案内をお願いね」

最後の一言は隊長さんに向ける。隊長さんは何も言わずに頷いてくれた。私が何をするかは分かっていないようだが信頼してくれていると思いたい。

私はその信用を裏切らないように頑張ろう。


長い長い廊下をひたすら歩く。私の前を案内の隊長さんと護衛騎士さん。後ろを筆頭さんともう一人の護衛騎士さんとが歩いている。この大陸の象徴である王宮は広い。詳しくは知らないが始めはそれなりの大きさだったが、必要に応じて増築されたそうだ。その関係で王宮の中は迷路のようになっているらしい。

この広さではそのうち別な場所に壮大な宮殿を作るのかもしれない。と思える程の迷路っぷりだわ。

私は離宮の方が覚えやすかった、まだましだった。という感想を持ちながら厨房へと歩いていく。本来なら緊張してしまうところだが今回は私に勝機があるので緊張はしていない。

「姫様。もう着きますよ」

隊長さんが声を掛けてくれる。私は頷きを返すとそのまま厨房と思われる場所へと入って行った。

ちょっと待って、取次とか頼まないの?

私の疑問をよそに隊長さんは進んでいき、奥の入り口から更に奥に入るドアをためらう事もなく開けた。

ええと、良いの?誰かは知らないけどいろんな人が隊長さんを見ると、立ち止まって頭を下げてるけど、無視ですか?その人たちに料理長の事を聞いたり、呼んでもらったりする選択肢はないんでしょうか?

違う意味で私はハラハラする。だが隊長さんに何も言わない。この人たちもなにも思う事はない様で普通にしているみたいだ。

と思っていたら一人の男性が慌てて隊長さんへ声を掛けていた。

「お待ちください。厨房へ御用でしょうか?何事でしょうか?」

隊長さんはその男性へ一瞥もくれることなく、ドアを開けた。隊長さんは誰にも声なんて掛けられてませんよ、なんとも思っていませんよ、という様子でそのまま声を上げていた。

「料理長はどこだ?」

隊長さん?聞き方、聞き方があるよね?なんですかその聞き方は。もう少し穏やかに。喧嘩を売りに来たわけではないですよ。それにせっかく声を掛けてくれた人も無視ですか?

私は焦るのと、止めて欲しくて筆頭さんを振り返る。が筆頭さんも涼しい顔で焦る様子は見られなかった。


もしかして焦っているのは庶民の私だけですか?この聞き方は貴族の皆々様では同じなんですかね?普通の事ですか?

誰にも確認できず、でも私が焦るわけにはいかないので、涼しい顔をキープしつつ、厨房の返事を待つ。

そうして待っていると奥の方から40代後半くらいの男性がやってきた。身長があるが、お腹周りはかなり大きめのがっしりした感じの男性だ。この人が料理長なのだろう。

私の予想は当たっていた。隊長さんの前まで来ると、挨拶をしていた。顔見知りなのか、お久しぶりです、と言っていた。

私は小さいので隊長さんの後ろにいるとしっかりと隠れてしまう。打ち合わせをしていなかったが、隊長さんは話を進めてくれていた。

「料理長。確認したい。これはどういう事だ?」

筆頭さんから今朝のスープを受け取ると料理長の前に突き出していた。


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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[良い点] 追記です。 隊長さんの後ろに姫様がしっかり隠れてしまっている、というのがビジュアル的に可愛く思えますが。 被害者当人が居ないと思って、厨房側が悪代官の如く 「隊長様、何をおっしゃいますやら…
[一言] 強引に思えるかもしれないが、主人公が海原雄山なら既にこの料理長は死んでいたのだ…
[一言] この料理を作ったのは誰だぁ!(幻聴)
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