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プレゼント

「何でも良いぞ」

陛下は機嫌よく私に話しかけてきた。

自分にできない事はない、という自信からだろう。

実際、陛下にできない事など少ないはずだ。

自然の摂理に反すること以外なら、大抵は問題無しのはず。


私は機嫌の良い陛下を見て、方向を変更する事にした。


「陛下、自分でも少し図々しいと思っています。そして私の立場で言うことではない、と言うことも。」

前置きをして反応を見る。

陛下は片眉を上げ面白い、という顔をした。

私を見て頷きを返す。続きを促された。


私は喉を鳴らした。緊張のせいだろう。

この希望が悪い方向に動く事もあり得る。

そう思うと口にすることが一瞬、躊躇われた。


「良いぞ姫。口にしてみよ。子供の戯れ言に目くじらをたてたりはしないぞ」

陛下からの余裕の返答がある。

子供の戯れ言、つまり私が何を言っても、国に干渉はしない。戯れとして流してくれるということだ。

私はその返しで覚悟を決める


「陛下、図々しくもお願いいたします。私にキッチンを使用する許可をいただけないでしょうか?」

「キッチン?」


陛下かからオウム返しの反応があった。

やはり、陛下も意外だったのだろう

少しキョトンとしている


「姫、キッチンと言うと、あのキッチンかな?」

「そうです、陛下。あのキッチンです」

「お茶を入れたり、料理をしたり?」

「そうです、陛下。そのキッチンです。お菓子を作ったりもできます」

「そのキッチンで間違いないのかな」

「間違いありません」


陛下はよほど意外だったのか、キッチンと連呼している。

私もそれに合わせてキッチンを強調した。


私と陛下の間を沈黙が支配した。

やはり、まずかったかな…

私は窺うように陛下を見る。

陛下は私の考えを掴み損ねているようだ。

まじまじと私を見る。

「姫、理由を聞いてもいいかな?」

当然の質問が来た。



「なぜ、キッチンを使いたいのかな?」

「正直に申し上げますわ、陛下」


私はしっかりと陛下を見つめ話しはじめる。

陛下も黙って私を見ていた。


「料理をしてみたいのです」

「料理?」

「はい、料理です。お菓子も作ってみたいです」


私は頷きながら正直に話す。

陛下は何いってるの?と言わんばかりに私を見つめ返した。

ぽかんとした表情をしていて、初めてみる顔だ。


「やはり、難しいお願いでしたでしょうか?」

私は先に引いてみる。

なんでも良いと言ってはいたが、私の立場は小国だが王女で、この国では留学生という名の人質で…

あまり勝手をしてよい立場ではない。

どうやら陛下の機嫌が良いからと調子に乗ってしまったようだ。

私はそこまで思い至ると肩を落とした。


「いや、そんなことはない。そんなことはないが、姫が自分で作るという事かな?」

陛下が少し慌てたように言った。


私は顔を上げると頷いて見せた。

「はい、自分で作ってみたいです。」


私のはっきりとした言葉に陛下は驚いているようだ。

「姫、私の思い込みかもしれないが、姫君達は自分でキッチンに立つことはないと思っていたのだが」

「難しいでしょうか?」

「いや。そんなことはないが…」


陛下はためらっているのか、迷っているのか、なんとも言えない顔をしている。


忘れてた…

普通の姫君は自分で何かを作る、という発想はないんだった…

しまった、私やらかしたなぁ~


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人質生活から始めるスローライフ2
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