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現実はいつだって正直だ

私は美味しくない朝食を終え、リビングで本を読んでいる。今日は昼からダンスの練習だ。私は完全なインドア派なので、昼から練習が決定しているのにその前に無駄に体力を消耗する気はない。


なのでこの国の歴史小説を読んでいると、隊長が朝の挨拶に訪れた。隊長がこの時間に出勤なんて珍しい事だ。時間に正確で遅刻なんてしたことのないので、その事に驚きつつも挨拶を交わす。

「おはよう。珍しいわね。こんな時間になるなんて」

「おはようございます。申し訳ありません。宰相閣下に呼ばれていまして。その関係で遅くなり申し訳ございません」

「いいのよ。お仕事なら遅刻じゃないもの。それとも遊びの約束でもしていたの?」

「流石にそれは。少し面倒な話をされまして」

隊長は言葉を濁すと私の方をチラ見する。これだけで私の事で呼び出されたのは間違いないようだ。


隊長は先を続けないので、私から話し出してほしいのだろう。だが、宰相からの話という事は厄介事だ。しかも発端は陛下だろう。間違いなく。聞きたくないのが私の本音である。無駄な抵抗だな、と思いつつも違う話を振ってみる。君子危うきに近寄らず、を身をもって実行したい。

「今日は昼からダンスの練習なの。少しは上達しているといいのだけど。今日こそは講師の足を踏まずに済ませたいわ」

「姫様」

隊長は呆れたように私を呼ぶ。言外に分かっているのに話を逸らすな、という言葉が滲んでいる。しかし、私はその言葉に乗るつもりはない。

「それとも2回で済めば上出来かしら?隊長さんは上達する秘訣を知っている?」

「姫様」

今度は諦めてください、という副音声が聞こえてきた。それは私の気のせいではないはずだ。しかし、気のせいにしたい私は聞こえない振りを継続する。

「今日は練習用のドレスではなく舞踏会用のドレスで練習するという話だったわよね?私はそのドレスで踊れるかしら?筆頭には動きやすいドレスを選ぶようにお願いした方が良いかしら?どう思う」

「姫様。諦めてください。分かっててお話しされてますよね?」

諦めたらしい隊長さんは直接的な方向に話を持ってきた。どうやら観念しなければならないようだ。


隊長さんには申し訳ないがため息が出る。

「陛下が何か仰ってるの?今度は夕食会でも開いた方が良いのかしら?」

「夕食会だったらよかったのですが」

今日の隊長さんの言葉は歯切れが悪い。奥歯に物が挟まった様子だ。私は覚悟を決めて隊長さんに先を促す。覚悟が決まったら答えを聞きたくなった。はっきりしなくてスッキリしない。

「隊長さん。覚悟を決めたわ。いつでもいいわよ」

「そうですか。安心しました。ではお言葉に甘えて」

隊長さんの言葉に私はゴクリと息をのむ。

何が来るのか。できれば夕食会かお茶会程度で終わってほしい。それが一番お手軽に終わる内容だ。私の決意に満ちた眼を見ても隊長さんはからかう事なく言葉を紡ぐ。

「実は陛下から依頼がありました」

「依頼?食事会の依頼ってこと?」

「いいえ。陛下からの依頼は厨房で料理長にレシピを教えてほしいそうです」

「??どういう事?」

「料理人に料理を指導してほしい、という事です」

「何それ」

私は思いがけない事を聞いて素になってしまった。言葉遣いが乱れてしまったが、そこを気に掛ける余裕はない。


私が料理人に料理の指導をする?何それ?どういう事?ありえないだろう。第一、料理人の皆さんに失礼だ。私の料理は素人の家庭料理だ。プロに教えるようなものではない。それなのに料理指導?ありえないだろう。

完全に固まった私は再起動が出来なかった。

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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[一言] これまで姫様は、突発的な事件にも適時適切に対応できていて、なろうの主人公にありがちな茫然自失で棒立ちになるようなことのない、状況対応能力に優れた人でしたが。 彼女にして遂に固まってしまう案件…
[気になる点] 料理人がプロだというお話で、失礼とあったのですが、王族、貴族の身分制のあるお話なので、書きぶりに違和感がありました。主人公にいじわるして処罰された文官やメイドの方が、料理人よりも身分が…
[良い点] とても楽しくて更新を心待ちにしてます! [気になる点] 前振りからストーリーの進行を逸らして本編になかなか進まないから更新を開くたびにため息を吐いてしまう…陛下と料理長のやりとりから3話も…
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