挨拶 2
「お茶はどうかな?」
陛下の勧めに従い、座った私に陛下からの声がかかる。
「ありがとうございます。お言葉に甘えて頂戴します」
私は笑顔で少し嬉しそうな声をわざと出した。
会釈も付ける。
子供が嬉しそうにして、嫌がる大人は少ない。
それに今までも勧められた物はいただいてきたので、ここで断るとおかしな感じになる。
今までは気にしなかったのに断るなんて、急にどうした?
誰かに何かを言われたか?
と、なるだろう。それは避けたい。
陛下の侍女が私にお茶を出してくれた。
「どうぞ」
「ありがとう」
私の所にいる侍女とは違い、穏やかな微笑みを浮かべている。
本気がどうかわからないが、一応は陛下の客の扱いなのでこの対応なのかも
(うたぐり深い自分が悲しい)
とは言え、微笑まれて悪い気はしない。
私も笑みを返しながら侍女をみる。
私のところの侍女にも見習って欲しいものだ。
「姫はまだ8歳だな?随分と行儀の良いことだ。私の子供達にもみならってもらいたいものだ」
陛下からのお褒めの言葉がかかる。
しかし、これを真に受けてはいけない。
属国街道まっしぐらになってしまう。
「ありがとうございます陛下。ですが、私は陛下に失礼のないように気をつけているのです。
陛下にお行儀の悪い子、なんて思われたくないのですから」
私は苦笑いをしながら子供らしく正直に答えた。
下手な嘘を吐くと見破られるので、正直に答えるのが1番だ。
珍しく陛下が声を上げて笑う。
「面白いことを言うな。姫は」
「本当の事ですよ? マナーはお許し頂いた図書室で本を読みました。それを真似ているだけです。
失礼なことしてませんか?初めてなので合っているか心配しています」
私は不安そうに陛下を見る。
子供の私と大人の陛下だ。自然と見上げる形になる。
陛下は口元は笑いながら(眼は笑っていない)私を見ていた。
やばい、笑ってるけど、笑ってない。
何か失敗したか… 怒らせた?
私は背中に冷や汗が伝うのを感じた。
「そうか、緊張しているのか?」
「はい」
私は嘘をつかず、静かに顎を引いた。
「怖いかな?」
陛下は単語で質問してくる。
ちょっと~、その質問、困るんだけど~
私は気持ちの上で泣きが入った。