正月用小話
明けましておめでとうございます。
昨年はお付き合いいただき、ありがとうございます。
お正月用に小話を書きました。
本編とは関係のないお話です。別なお話と思ってください。
あら~ そうなるよね、と笑って暇つぶしに使っていただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
「新年、おめでとうございます」
「おめでとう」
私は離宮で年を越していた。正確にはこの国に年越し、という概念はないのだが、私の気持ちとしてはあるので、元日の朝、皆に集まってもらったのだ。
やはり年初は皆に挨拶をしたかったし、今年一年よろしく、と言いたい気持ちがあるからだ。
皆には、離宮にある小さいホールに集まってもらっている。
ちなみに私の感覚ではこのホールは大きいものだと思っていたら、隊長さんに一番小さいホールですよ、と訂正された。
このホールが小さいなんて釈然としない。
私は集まってもらった人達を前に新年の挨拶をしていた。
因みに元日の朝なので、夜勤明けと今から仕事の人達だけとなっている。
休みの人にワザワザ出て来てもらうのは申し訳なかったので、来なくて良いと通達をしていたのだ。
「皆さん、昨年はありがとう。改めて、今年1年もよろしくね。いろいろと皆さんに大変な思いをさせると思うけど、私に協力してもらえたらうれしいわ」
私の挨拶にみんなが一斉に頭を下げ、返事をしてくれた。
「よろしくお願いいたします」
「こちらこそ。では少しだけど身体が温まる甘い飲み物を作ってるの。よかったら飲んでね」
私の合図に筆頭さんと隊長さんが、ワゴンを押して入ってくる。
ワゴンは2つあり、その上にはそれぞれ大きな鍋を乗せてある。
その中身はお汁粉だ。本当なら白玉とかを入れたかったのだが(流石にお餅はなかった)、洗い物が増えるのと、立ったまま飲んでもらうことになるので、フォークを渡すことを悩んだ。その結果、中身は小豆だけにした。
簡単に言えば自販機で売っている缶のお汁粉と思って貰えば良いだろう。
それぞれの鍋の前に並んでもらう。因みに配るのは、私と隊長さんだ。筆頭さんには補助をお願いしている。3人で配る事で皆に親近感を持ってもらいたいからだ。
私の前には護衛騎士さん達が隊長さんの前には侍女さん達が並んでいる。
並んでもらったら、配膳スタート。おかわりもできるように多めに作ってある。
コーヒーカップに(お椀がないので)おしるこを入れながら声をかけていく。
「いつもありがとう」とか「ドレスの見立てがきれいだった」とか一人ずつ声をかけていく。これは隊長さんや筆頭さんも同じだ。その人に合わせて声をかけていく。やはり上司がちゃんと見ていてくれると思うと嬉しいものだと思う。
皆は恐縮しながら受け取っていたが、嬉しそうに見えたのは私の気のせいではないはずだ。
おしるこは評判が良かった。おかわりもしてもらえたし、私としては満足な結果だった。
作ってよかったと思っている。
しかし、一つ落とし穴があった。
おしるこはお休みだった人たちの分は残してはいなかった。ワザワザ残す必要もないと思っていた私は、全部を配っていた。みんなも喜んでいたので残さなかったのだ。
しかし、それが後からちょっとした紛争になったらしい。
おしるこ紛争?かな?
隊長さんと筆頭さんに相談を受けた私は、もう一度大鍋におしるこを作っていた。
そんなに食べたかったのかな?
後から紛争は解決したとの報告を受けて一安心だった。
おしるこ一つで片付くなら安いものだ。私の労働時間は気にしないことにしよう。
私も食べれるし良しとした。
余談がもう一つ、隊長さんが商人に自慢していたらしい、次のお食事会で商人から聞いた話だった。
おしるこ一つでここまでの騒動になるとは・・・
想像もしていなかった。
おしるこ紛争、恐るべし。
本年もよろしくお願いいたします。