ちょっとした楽しみ 3
「おはようございます」
侍女からの挨拶が聞こえる。
私は結局一晩悩み続け、寝るのが遅くなった。
私は眠たい眼を擦りながら返事を返す
「おはよう」
挨拶の返事は聞こえず、視線だけで朝の支度を促される。
やはり、最低限の会話以外はしたくないらしい。
私は何も言わずに朝の支度を始める。
暑さが過ぎ季節は涼しくなって来ていた。
私の誕生日は雪が降りはじめる前、前の生活では仮装をする人が多い日だった。
私は仮装(コスプレは見るのが好き)はしなかったが、道を歩く人たちを眺めながらコーヒーを飲んだり、友達や同僚と行列を眺めに行ってたりしてたなぁ
仮装は可愛いのもカッコイイのもあって、見るだけで楽しかったし。
テンションが上がるのを感じていた。
こっちには仮装の文化もないし、て言うか、私からしたら生活そのものが仮装だしね~
つらつらと前の生活を思い浮かべたりしながらテーブルに着く。
この辺は習慣かな黙っていても身体が動いていく。
私の部屋は離れだがある程度の生活はここで出来る。
バスルームやトイレなどの最低限は揃っているし、食堂もある。
侍女の控えの間の方には簡易キッチンもある。お茶を入れたりするからね。
食事そのものは王宮の厨房から運ばれて来て、その間に冷えて、三食は美味しくない。
食事そのものが美味しくないのに冷えていたら…
やっぱりため息が出る。
私は冷えたものはきちんと冷やして、温かいものは温かいまま食べたい主義だ。
やっぱり、食生活の改善が最優先かな…
「そういえば、プレゼントの件は陛下に申し上げるの?」
私は侍女に確認する。
プレゼントのために陛下に会うのは一年に一度の機会だ。
陛下としても一年に一度も会わないのは問題と思っているのか、プレゼントを口実にしているのか、
その辺は分からないが今まではそうなっている。
今年はどうだろうか?
生存確認だけなら皇子殿下でも問題はない気がするが。
「はい、陛下がお聞きになるそうです」
「ありがたいことだけど、なんか申し訳ないわね。私なんかの事を気にかけてくださって」
人質としてはこう答えるしかない。
実際に、ありがたいことだし。
人質は放置、でも文句は言えない立場だ。
そう考えると私の立場は優遇されているのかな?
私からしたら美味しくない食事でも、こちらではきちんとしたものだし。
部屋も綺麗だし。むしろ女の子の部屋として気にしてくれている感じがする。
内装はピンク系の可愛らしいものだ。
侍女も護衛(実際は分からないが護衛と言われている)もきちんといるし。
「お願いしたいものが決まったの。陛下にご都合をお伺いしてもらえるかしら?」
私は侍女にお願いしておく。
侍女は黙って頭を下げ出て行った。