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宴? 3

コメント、誤字報告ありがとうございます。

ペースを守りながら継続できるように頑張ります。

これからもお付き合いいただけたら嬉しいです

よろしくお願いします

「どうなのだ?」

「もう良いですよね?」


陛下と宰相が隊長さんに『早くしろ』というように急かしているのが聞こえてきた。

私が唐揚げをお皿に盛っている間の事だ。

隊長さんの真面目な声が返事をしているのが聞こえてくる。


「いえ、まだはっきりしないので。もう少し食べて確認しませんと。お待ちください」


そういいながら、次のポテトを口に運んでいた。


私はその返答を聞いたとき、開いた口が塞がらなかった。

正直にいうと頭痛がした。


何が分からないと言うの?

そんなことをしていたら、ポテトが冷えちゃうでしょ。何を考えているのかしら、隊長さんは。

まさか、ポテトを独り占めする気とか?

まさか、そんな事はしないよね?子供じゃないし。


そのことに思い当たった私は、どうしたものか悩む。

隊長さんは、毒味役(一応?)だ。私が発言をして何かの合図と思われても困ってしまう。でも、せっかく温かい物を作ったのに、冷えてしまっては意味がない。


私はそこまで考えると、揚げ物にお代わりが必要な可能性も考慮しておく事にした。

しかし、宰相は一枚上手(?)だった。


「隊長だけで確認できないなら、私も毒味をしましょう。陛下はしばらくお待ちください」


宰相は(キリッとした表情だった)そういうと、隊長さんと同じようにポテトを摘み口に入れる。

その瞬間驚いたように小さな目を大きく開く。それに陛下が反応した。心配になったようだ。


「大丈夫か?どうしたんだ?」

「陛下。隊長の言うことは正しいようです。これはもう少し食べてみないとわかりません。陛下はどうぞお待ちください」


宰相は真面目な顔で言いきった。覚悟を決めたようにも見えなくもない。


逆にその言葉にポカンとなる私がいる。同時に心配になった。


どういうことなの? 本当に何か問題があったのかしら?


キッチンの中からテーブルの方を観察する。


心配する私と陛下を置き去りに、隊長さんと宰相は次々とポテトを口に運んでいくのが見えた。

着々と皿の上のフライドポテトは二人の口の中に消えていく。そうなると必然的に皿の上は寂しくなっていく。


陛下の分、なくなるんじゃない?


陛下も同じ心配をしたのだろう。若干切れ気味に宣った。


「もう十分だ。お前たちを見ていて問題ないのはよくわかった」

それだけを宣言するように言うと、ポテトにフォークを(流石に手で摘むのは抵抗があるようだ)伸ばす。

それを見た宰相と隊長さんは残念そうな顔をした。


やはり独り占めする気だったようだ。

だが陛下を止めることはためらわれるのか、邪な心があったから後ろめたいのか、何も言わなかった。


「良い味だ」

陛下も同じように食べだすと、当然ポテトはなくなっていく。  


これは私の分はないな。

試食会の再現だろうか?


私の心境は諦めの境地になった。

それに唐揚げとピザを出すとき、お酒も変えようと思っていたけど、そこまでの余裕があるかな?


3人で食べ始めたので、まずは唐揚げをテーブルに出す。

隊長さんが私を見たので、毒味は待ってもらった。

「次の料理を持ってくるので」

「わかりました」


次に出されるのが、ピザだとわかったのだろう。隊長さんは大人しく待ってくれた。


「これは何かな?」

「唐揚げと言います。鳥肉を味付けして油で揚げたものになります」

陛下は興味深げに唐揚げを見るが、宰相はピザの匂いが気になるようだ。


「香ばしい匂いがしますね。キッチンからですか?」

「そうですわ。今そちらにお持ちします。ご覧になっていただけたらわかりますわ」


私は焼き立てのピザを持って行く。

ピザは大皿に乗せていて、それをテーブルの真ん中に鎮座させる。

なかなか迫力があると思う。


隊長さんを除く二人が、子犬のようにクンクンと鼻を鳴らす。

私はその様子に笑いたいのをこらえるのが大変だった。

二人ともお行儀はお出かけしているようだ。


「こちらの大皿の料理は、ピザと言います。小麦粉の生地の上に野菜やチーズを乗せて、高温で焼く料理になります。今から切り分けますね。刃物を出すので、驚かないでください」

最後の一言は護衛騎士に向けて言った一言だ。


陛下の前で刃物は厳禁だとわかってたけど、今回は妥協した。目の前で切ることに意味があるからだ。


私は宣言したどおりナイフを出す。それを見た護衛騎士は一瞬目を凝らし、動ける体勢を取る。


「切り分けますね」


わざと一動作、一動作に一言を付け加えていく。誤解を生まないためだ。


大皿のピザに刃を入れる。はじめはサクッと、下の生地は少し切りにくい。刃を揺らし切れ目を入れていく。3人の視線は私と同時に動く。刃を動かすたび、次の場所を切る度に顔も動いていく。 


途中、チーズが少し伸びたり(ピザあるある?)しながら切っていった。

全部を切り終わると同時に隊長さんが手を伸ばしながら一言。

「では、私から」


毒味の役得、と言わんばかりに、止められる前に動いていた。


「「あっ」」


二人の目の前で、パクリ、といった。

宰相は間に合わなかった、と思っているのか少し唇を噛んでいる。

何となく悔しそうだ。


「はつい」


隊長さんは熱いと発音できずにいた。それでも口を手で覆いながら咀嚼しているようだ。


しかも目の前にあるピースからではなく、チーズの多い部分を取っていた。

溶けているチーズが熱いのは当たり前で、『ポテトひとり占め事件』があって少し時間が経っているが、焼き立てに近いピザは熱いはず。

同じ過ちを繰り返すとは。なんとも。

一言、言いたい。


学習しなさい、学習を。

何回目?



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人質生活から始めるスローライフ2
― 新着の感想 ―
[気になる点] ぼくも毒味したい。。。
[一言] 更新おつかれさまです!!! いつも楽しく読ませていただいています。これからも応援しています。
[一言] だんだん目黒のさんまの気分になってきたなw 異世界食堂とかもそうだけど格式関係なしの気楽な飲み食いできるというだけで味なんかそれほど重要度低くて貴人には価値があるんだろうとおもう。 素人の…
感想一覧
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