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そのキセキを忘れない  作者: 如月一
プロローグ
1/10

終わりを超え、始まりを迎えた者


 この世界には一つのストーリーがある。




 遠い昔、人類はありとあらゆる物を争いによって解決しようとしていた。

 爆弾、鉄砲、毒薬に始まり核兵器、気象兵器、遺伝子兵器に至るまで、ありとあらゆる手段を用いて奪い合った、暗黒の時代——。

 その末に得たのは何もない荒野と、人類の破滅という結果のみ。


 その惨状を目撃した、生き残りの数人の人類は誓い合った。


 もう二度と同じ惨劇を繰り返さないために、もう二度と争いを生まないために、平和な世界を作り上げようと。


 こうした努力が実ったのが今の世界である。




 だが俺は知っている。

 こんなのは嘘っぱちだ。


 俺が見た世界の終焉は荒野なんかではなく、むしろ自然に満ちた美しい世界だったのだから。

 人類はまるで『何者』かに不要の烙印を押され、この世界からの退場を強いられるように、どうしようもない衰退を迎えていたのだから。

 そこに戦争なんて野暮なものはなかったのだから。


 

 どこの誰がこんなフェイクを作ったのかは知らないが、この物語を聞いて俺の中にある一つの仮説がどうしようもないほどに証明されてしまう。


 やはりこの世界はおかしくなっていた。

 それがいつからかはわからないが、少なくとも衰退を迎える直前の人類は醜くも正しくあろうとしていた。何度も同じ過ちを繰り返しても、そこから何かを得ようとしてきた。現状をよしとせずまだ見えない到達点を目指していた。


 しかし衰退から奇跡の復活を遂げた人類は真逆の存在となった。

 いつの日か不自然に現れた、「平和な世界」に甘えた。

 理解できないものと触れ合うことをやめた。

 未知への敬意を抱くことをやめた。


 確かに結果だけ見れば今の我々はかつてこの世界を蔓延った人類たちよりも聡明かもしれない。

 それでもこの「平和な世界」は人類が掴み取ったものではない。

 『何者』かが与えたものだ。

 これからもこんな変化のない無為な世界を続けることを強いられるのならば。


 例え愚か者に成り下がろうとも、この世界を壊すべきだ。

 そしてその『何者』かの存在を証明し、白日の元に晒してやる。

 この世界を見えない支配から解放する。



 そしてそれができるのは、、、もう俺しか残ってはいない。

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