おばけとか言ってるけど、実はこの小説幽霊しか出ないんですよ!
「よし。そうだ。いや、もっと髪のボリュームをだな・・・」
俺は安藤先生を模写(本人曰く)していた。というのも、俺はアリスの非道な罠で、安藤先生の頭髪を笑ってしまったからだ。安藤先生は、それはそれは見事なおでこをした31歳の男性教師で、俺の担任にして顧問だ。最近娘から『ハゲ、かっこ悪ーい』と言われたそうで余計気にしているんだとか・・・。俺は心を無にして、毛が生えた安藤先生の顔をひたすら書いていた。
「先生デキマシタ」
「だめだ! もっと頭のてっぺんの髪の毛をつんつんにするんだ!」
「ハイワカリマシタ」
なぜ俺はこんなことをしているのだろう? 俺の頭の中に疑問符が浮かぶが、なんとかそれを振り払って髪の毛を逆立てる。
「だめだめ! ドラコンポールのゴキュウみたいになってるじゃないか! もっと自然に!」
俺は先生のお眼鏡にかなうものを書くまでに3時間もの時間をかけた。
「よし。いい出来だ。これは俺がもらっておこう」
「ハイ。アリガトウゴザイマシタ」
「さて、何があったんだ?」
「え?」
安藤先生は急にまじめな顔をして聞いてきた。
「あんなに暗かったお前が急に明るくなったんだ。何か原因があるんだろ」
安藤先生は意外に勘が鋭いのかもしれない。それとも俺はよほど元気がなかったのだろうか。
「おっと、隠さなくていいぞ。わかってる。彼女ができたんだ。そうだろ?」
安藤先生はニヤニヤしながら言った。全然するどくないわ。
「男が急に明るくなる理由なんて古今東西一つだけ。女だ」
「え! 幸助彼女いるの!? ふ、ふーん。まあ、知ってたけど・・・。全然悔しくなんかないけど・・・」
いないわ。お前は何を知ってたんだ。というかお前は気づけよ。
「いや、できてないですよ。いいことがあっただけです」
「そうかそうか。まあ、そういうことにしておこう」
「そうだよね。やっぱり幸助みたいなパッとしない奴に彼女なんてできるわけないよね!」
アリスはうつむいていた顔をパッと輝かせた。さすがに傷つく・・・。
「・・・どんな理由であれ、お前に元気が戻ってよかったよ! お前は唯一の美術部員だからな! お前が暗いと俺まで暗くなっちまう」
「先生・・・。ありがとうございます」
俺はぺこりとふさふさの頭を下げた。安藤先生は髪は少ないが、生徒思いの良い先生なのだ。俺は先生の言葉に何回も救われている。きっと今まで、頭が禿げ上がるようなつらいことや苦しいことなど、いろいろなことを経験してきたのだろう。
「いいってことよ!」
先生はニカッと微笑んだ。
「それと・・・もし次ホームルームで笑ったら、この絵の模写20回やらせるからな」
先生は変わらずの笑顔のまま言った。俺は引きつった笑顔でハイということしかできなかった。
☆★
「ねえねえ、本当は彼女とかいるの?」
学校の帰り道、今まで隣で黙っていたアリスが突然聞いてきた。
「いないよ。それは俺とずっと一緒にいたアリスが一番わかってるだろ」
「本当に?」
アリスは一歩前に出て、くるりと身体を回し、上目遣いに俺の目を見て聞いた。
「本当だよ」
「そっか。よかった!」
アリスは満面の笑みを浮かべた。
「よくねえよ! 何をもって良しとしたんだお前は!」
俺の声が閑散とした通学路に響き渡った。俺は慌てて辺りを見渡す。幸運なことに通学路には俺とアリス以外誰もいなかった。ご近所さんには何も見られていないようだ。
「それは内緒♪」
アリスは俺のつっこみぶりを見て、機嫌がよさそうにフフフと笑った。その表情を見て俺は少しドキリとしてしまった。赤くなった顔を隠すように、俺は足早に家に戻った。
「ただいまー」
「おかえりー」
母さんがリビングから声をあげる。
「そういえば、明日父さんがアメリカから帰ってくるわよ」
「まじ? じゃあ、明日はごちそう?」
「そうね。明日は土曜日で幸助も休みだし、豪勢にやるわよ!」
「やったぜ!」
「とりあえず、ご飯の準備もできてるから、手洗いと着替えやっちゃいなさい」
「はーい」
俺は手を洗った後、着替えるために自室へと向かった。
「和樹さんと会うのも久々だなぁ」
アリスが久々というのも無理もない。父さんは仕事柄海外出張が多く、あまり家にいないことが多い。
「・・・父さんなら何かわかるかもな」
「? どういうこと?」
アリスは首をかしげる。
「明日になればわかるよ」
俺はわざとらしく意味深なことを言って、夕飯を食べにリビングに向かった。
著作権あるかと思って少し変えたけどアウトか? それと、最近流行りの長文&ネタばれタイトルにしてみました。
投稿遅くなってごめんなさい。次で物語が大きく動くから許して!