うるせー、爆乳女
朝。それは一日の始まりであり、その日が良いい日になるかどうかの分岐点。たいてい寝覚めの悪い日が良い日になることは少ない。そして、今日の朝は良い目覚めとはとてもじゃないが言えなかった。
お互いにぎくしゃくとした雰囲気が流れる。そりゃそうだ。アリスは俺のことを殺そうとするくらい怒っていたんだから。今だって俺の方を見て顔を真っ赤に染めている。口元を抑えてはわわ! とか言っている。エロ本がバレただけなのに、怒りが深すぎるぜ・・・。
「幸助・・・おはよ」
アリスは俺を見てぼそりと言った。
「あ、ああ。おはよう」
ギクシャクとした雰囲気を全身で感じつつ、俺はベッドから抜け出した。普段は毛布からなかなか出れないが、今日はすぐに布団から出ることができた。
「悪いけど、着替えるから外に出てくれないか?」
「あ、ごめんごめん」
パジャマを脱いでズボンとワイシャツに着替える。まだご飯は用意されてないだろうが、とりあえずリビングに行くことにした。
「あら、今日は早いわね」
「まあ、いろいろあってね。ははは・・・」
「そ。じゃあご飯用意するわね」
母さんが炊飯器からご飯を取り出し、みそ汁を温める。俺は冷蔵庫に行き、納豆を取り出す。
「よし。じゃあ食べちゃって」
「いただきます」
「ねえ、納豆混ぜすぎじゃない?」
「納豆は200回が最も粘り気がちょうどいいんだ」
「ふーん。あんたって昔から変なこだわりあるわよね」
「そうか?」
「うん」
「そういえばさ、幽霊って着替えはどうなってんの?」
アリスの服は、昨日のねこちゃんパジャマから普段学校で着るブレザーへと変わっている。
「うーん。わかんない」
アリスは、腕を組んでひとしきり考えた。
「着替えたいなって思ったら服が変わってるよ」
「へー。じゃあ、貞子のあのワンピースは貞子の趣味なんだ」
「貞子に会ったことないから知らないわよ」
「幸助? 何をぶつぶつ言ってるの?」
母さんは大丈夫か?といった顔で聞いてきた。
「こっちの話だから気にしないで」
「ふーん。そう」
母さんはあまり追及をしなかった。勘のいい母さんのことだからきっと何か勘づいてはいるのだろう。だけど、まだアリスのことを言うべき場面じゃない。
「ごちそうま」
「食器ちゃんと入れておいてね」
「はいはい」
「はいは一回まで」
「はい」
俺はカバンを取り、家を出る。
「気を付けて行ってらっしゃい」
「はーい。行ってきます」
俺は家を出て、普段ならまっすぐ行く道を曲がっていくことにした。
「ん? まっすぐ行かないの? まっすぐ行った方が近いじゃない」
「今日は早いから、回り道して時間をつぶそうと思っただけだよ」
俺の家から学校への最短ルートにはアリスの事故現場ある。それを見せるとアリスが傷ついてしまいそうで、消えてしまいそうで何となく嫌だった。
「ふーん。意外と気が利くじゃない」
アリスは俺の意図を見透かしているのか、ニシシと笑った。
「うるせー、爆乳女」
俺はそっぽを向いて悪口を言った。普段のアリスなら絶対怒るだろう。
「なんだとー、むっつりスケベ」
アリスは口角をあげて答えた。
「「ふふ」」
俺たちは顔を合わせて笑った。
久しぶりの投稿ごめんなのじゃ・・・。完結はさせるのでご安心を。