地上二階の校舎の窓から落ちましたが私は無事です
「ええー! 私死んでたの!? それに、今は12月って・・・。えー! アニメの話数とんで話の内容分からなくなっちゃったじゃん!」
アリスにこれまでの状況を説明した。どうやらアリスは自分が死んでいたことに気が付いていなかったらしい。
「なるほど・・・。どおりで話しかけても無視されるし、机に花瓶も置かれるわけだ。いじめられてるのかと思ってたよ」
アリスはポンと掌を拳でたたいた。ニコニコしながら言うその姿は、事故で死んだとは到底思えない。
「私、死んだときの記憶ないからなぁ。車が来てあぶない!っていうのまでは覚えてたんだけど・・・」
即死だったから痛みとかもなかったのか。苦しまないで逝けたようでよかった。いや、全然良くはないんだけど。
「そうだ幸助! 私幽霊になったらやりたいことあったんだ!」
「お、何?」
アリスはニコニコしながら言った。
「壁抜け! やっぱりこれをやらないと幽霊じゃないでしょ!壁抜けする様子取ったらトレンド入り間違いなしだね!」
霊体だからそもそもカメラには映らないけどね。
「よし! いっくよー!」
アリスは、生前と変わらない100m11秒代の快速で教室の端、窓側に向かって勢いよく駆け出した。
「とう!」
アリスは壁にも負けず、勢いよく外に飛び出した!
「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして落ちた。
☆★
「うう。ひどい目にあった・・・」
アリスはふらふらと教室に戻ってきた。
「幽霊だから空飛べるのかと思ってたよ」
「五点着地がなければ即死だった」
ここぞとばかりのドヤ顔でアリスは言った。
「コ〇ンかよ。というか、五点着地なんてどこで覚えたんだ?」
「パパとママが昔教えてくれた」
「アリスのお父さんとお母さんすごいな・・・」
アリスのお父さんとお母さんはどことなくおっかない雰囲気を持っているが、人格者でとてもいい人だ。前にお線香をあげに行った時も、とっておきの料理を僕にふるまってくれた。一番つらいのは二人だろうに、アリスを失った俺の心配をしてくれた。俺が泣いているときも優しい声で、「娘はこんなに愛されていて幸せ者だ」と言ってくれた。泣きたいのは二人のほうだろうに。
「そうだ! せっかくだし、家にきてよ。幸助が来たらパパもママも喜ぶだろうし」
「そういえばここ1か月くらい行くってなかったな。アリスが見えるかどうかの確認も含めて行ってみるか」
「うん!」
夕日がまぶしい外で日の光を胸いっぱいにあびて、俺たちは有住邸へと向かった。淡い期待や、不安を胸に。
もちろん途中で顧問の安藤先生にばれて、部室に強制連行された。
次回以降もう少し早く執筆できるよう頑張ります。