第三話 初戦闘
しばらく歩いていると、城門らしきものが見えてきた。
近づいてみると、『一層へ』と表示される。
どうやら、ここで間違いないみたいだ。
城門の先は、真っ白い空間になっているが、ここに入ったらまたどっかに飛ばされるんだろう。
躊躇わずに城門をくぐり、光のなかを進んでいく。
眩い光が顔面を覆うが、眩しいとは思わない。
奥へ奥へと進んでいくと、俺の意識が光の中へと吸い込まれる。
目を開けると、そこには平原が広がっていた。
見渡す限りの平原。
空を見上げると、太陽が青い空を照らしていた。
これだけをみると層になっているなんて思えないな。
まあゲームなんで何でもありなんだろうけど。
周りを見渡しながら、土の地面を踏みしめて進んでいく。
すると、前方に猪のような生物がいた。
あれがモンスターだろうか。
モンスターの可能性が高いので、バレないように足音を忍ばせて近づいていく。
残り5メートルとなったところで、猪の上に何かが表示された。
LV1 フィジカル・ボア
HP 100/100
MP50/50
どうやら、猪のステータスらしい。
フィジカル・ボアというのか。
HPは俺と変わらず、MPは低め。
知能がある分俺の方が上手かな。
フィジカル・ボアはまだこちらには気付いていない模様。
残り1メートルとなったところで、『始まりの剣』を片手にボアの背中目掛けて一気に踏み込んだ。
「オラァッ!」
右腕の出せる全力でボアを狙って剣を左から右へと薙いだ。
俺の殺気に気づいたのか、剣が当たる直前でフィジカル・ボアは横へステップをした。
微かな手応えを感じる。
フィジカル・ボアを覆っている毛皮が切れていた。
「チッ」
奇襲作戦は失敗。
だが勝負に負けたわけではない。
正々堂々と挑んでやる。
先程の一撃で、ボアはこちらを認識した。
現在進行形でこちらに威嚇してきている。
ボアとの距離は3メートルほど。
じりじりと睨み合いが続く中、ボアがこちら目掛けて突進してきた!
速い。
俺は避けることも叶わずに、吹き飛ばされる。
痛ってぇ……
現実ほどの痛みではないにしろ、多少の痛みはある。
目を閉じると、HPは45まで減っていた。
すかさずポケットから回復薬を取り出し、飲み干す。
すると徐々に、突進された痛みが引いてきた。
ふたたびHPを95まで回復していた。
なるほど。回復薬は一つあたり50回復なのか。
痛みが完全に引くと、ボアの方へ向き直り、正眼の構えをとる。
LV1 フィジカル・ボア
HP 90/100
MP10/50
フィジカル・ボアのMPが減っていた。
先程の突進はスキルだったわけか。
残りMPが10なので、あの強力な突進はもうできない筈だ。
再びじりじりと睨み合いが続く。
「決めるッッ!」
大きく踏み込み、ボアに向けて剣を振る。
すかさずボアは横ステップで回避しようとしたが、剣先がボアの首元を裂いた。
だが、血は出ない。
さすがゲームといったところだろう。
ボアは再びこちらに威嚇をし始める。
一見あまり攻撃が効いていないように見えるが、ボアのHPは残り40だ。
再び踏み込み、ボアの首目掛けて剣を薙いだ。
ボアは急な攻撃に一拍反応が遅れ、大きく首を裂かれる。
その瞬間、ボアのHPが0になり、ボアは光の粒となって消えた。
経験値10を手に入れました。
10ゴールド手に入れました。
頭の中にナレーションが響く。
どうやら倒したっぽい。
レベルは上がらなかった。
「どうせならフィジカル・ボアでレベル上げするか!」
ボアでレベル上げをすることを決心した。
所持品から回復薬を取り出し、ポケットに詰める。
先ほどの戦いで攻撃パターンはなんとなく分かった。
とりあえず突進攻撃はダメージが大きいので、なるべく避けるようにしよう。
フィジカル・ボアと戦うべく、俺は歩き出した。
空を見ると、太陽の位置は変わっていない。
夜の概念はなさそうだ。
ボアを探している途中、1人の男がボアと戦っていた。
おそらくは『剣士』か『剣聖』だろう。
剣をうまく使ってボアと対峙している。
刹那、男が目にも見えぬ速さでボアへと踏み込み、首を一閃した。
圧倒的。
一撃で首を飛ばされたボアはあえなく光の粒となって消えていく。
「なるほど。あれがスキルか」
例の攻撃をした後、男のMPが少し減っていたので、今の攻撃はスキルだと思われる。
俺もさっさとレベル5まであげるか。
『時空魔戦士』のスキル気になるし。
そんなことを考えつつ歩いていたら、ボアが見つかった。
戦闘経験も積むべく、今回は奇襲作戦はよそう。
面と向かってボアと対峙する。
LV2 フィジカル・ボア
HP120
MP60
LV2のボアだ。
どうやら同じ種類のモンスターでもレベルは異なるらしい。
ただ、HPもMPも多少増えた程度なので、問題はないだろう。
そんなことを考えていると、ボアが突進してきた。
ボアが俺にぶつかる瞬間、俺は横へステップして突進をかわす。
さすがに警戒を怠らなければ避けることは容易いな。
ボアは再びこちらを睨む。
だが残りMPは20だ。
突進攻撃は消費MP40だと思われるので、攻めるなら今しかない。
俺は右手を大きく引き、左手でポケットから回復薬を出すフリをした。
ボアの注意が一瞬左手に集まる。
その瞬間、ボアへと踏み込み、残り1メートルとなったところで引いていた右手を突き出した。
一瞬の隙を突かれたボアは、頭から串刺しにされ、光の粒となって消えていく。
俺の攻撃力が高いのか、ボアが弱いのかはわからないが、一撃で倒すことができた。
経験値15を獲得しました。
15ゴールド獲得しました。
レベルが2になりました。
おお。
たったボア二体でレベルが上がったぞ。
すかさず『ウィンドウ』を開いて『ステータス』を確認する。
LV2 かみかみ
HP110/110
MP110/110
状態 健康
称号 無し
LVが上がると、HPとMPの上限が上がるらしい。
ついでに、HPとMP全回復。
状態と称号はなんなのか知らないが、後々わかってくるだろう。
さて、この次にやることと言えば……
「さっさとレベル5まで上げるか!」