第二話 チュートリアル
目を開けると、俺はどこかの街の真ん中に立っていた。
「…………は?」
ここはどこだ。
俺はさっきまで電車に乗って帰っている途中だったはずだが……
とりあえず今いる場所を確認するため、視界を右へ左へと動かす。
四方八方街。人々が行き交っている街。
こんな街知らないし、来た覚えもないぞ。
現在の位置を確認するため、俺の目の前に立っている女性に声をかけた。
「すみません。ここってどこですか?」
「あっ! 新しい冒険者の方ですね!」
冒険者?そんなものになった覚えはないが。
「あの……違いますけど……」
「えっ? 違う? じゃあ……迷子?」
まあ迷子でもあながち間違ってはない。
「まあ、そんなところです」
「そうですか! 私はこの『レジェフロ』の案内人です! なのでわからないことがあったら聞いてください!」
『レジェフロ』の案内人?
もしそうだとしたら、ここはあのゲームの中ということになるが。
とりあえずいくつか質問してみよう。
「俺電車に乗ってたはずなんですけど……ここはどこなんです?」
「ここは『レジェフロ』のゲーム内でございます! 地球がある世界とは異なる世界線なので、ログアウトしていただければログインした元のところへ戻ることができます! ただ、この世界は地球の千分の一秒で時間が進んでいくので、こちらで過ごした時間は、地球でもほんの少し時が進みます」
世界線? 千分の一?
何を言っているのかはわからない。
ただ、簡潔に言うと、こっちの世界での千秒は、地球での一秒ということか。
「ログアウトってどうやるんですか?」
「『ウィンドウ』とつぶやくと、いろいろな画面が出てくるので、そこでログアウトしていただければ結構です。ログアウトしている時は、こちらの自身の時は止まりますのでご安心ください」
そんな機能があったのか。
それにしてもこんなハイテクなゲームだとは思わなかった。
俺が知らないだけで現代では主流なのか?
とりまログアウトして、家帰ってから続きをやるか。
「ウィンドウ」
そう呟くと、『ブワンッ』という音と共に何かしらの画面が表示された。
・ステータス
・所持品
・装備品
・所持スキル
・ヘルプ
・ログアウト
あった。1番下のやつがログアウトボタンだろう。
他にもいろいろみることができるが、後ででいいか。
右手の人差し指でログアウトボタンを押す。
すると、またもや眩い光に覆われた。
目を開けると、俺は電車内で座っていた。
時間を見ると、名前を入力した時間から一分も経っていない。
あの案内人が言っていたことは本当だったらしい。
それにしてもあの『レジェフロ』とやらはなんなんだ。
軽くGooogleで調べてみるが、特に情報は載っていなかった。
なんやかんやしているうちに、俺の降りる駅へと到着した。
時間にして20分ほどだろうが、かなり濃い時間だった。
『レジェフロ』。
果たしてどのようなゲームなのか。
あれこれ考えながら、家へ向かって歩いていく。
五分少々、家へと着いた。
空はまだ明るい。
玄関の扉を開ける。
「ただいま〜」
玄関にリュックを置き、洗面所で手洗いをする。
インフルエンザ予防だ。
手洗いを済ませると、玄関に置いたリュックを背負い、二階にある俺の部屋へと向かう。
部屋に入ると、リュックを放り投げ、ベッドへダイブした。
「早速『レジェフロ』やるか〜」
ポケットからスマホを取り出し、レジェフロを開く。
電車内で見たのと同じオープニング。
touchと表示されているところをタップする。
その瞬間、眩い光に覆われた。
目を開けると、先程の街が視界に映り込んできた。
もう3回目の転移だ。さすがに慣れたね。
1回目ほどの驚きもなく、案内人へと話しかける。
「このゲームについて教えてください」
「はい! この世界は、100層のダンジョンになっており、100層のボスを倒すことが最終目標となっております! ちなみにここは1層の『始まりの街』です!」
なるほど。その辺りはゲームっぽいな。
だが、スキルも装備も何もない状態で、どうやって戦うのだろうか。
「ちなみに、装備もスキルもない状態でどうやって戦えばいいんですか?」
「初期装備は『ウィンドウ』の『所持品』に入っています! そこから装備品を取り出して装備することが可能です!」
「ほうほう。『ウィンドウ』!」
2回目のウィンドウ開示だ。
表示されている中の『所持品』を開く。
そこには、2つアイテムが入っていた。
・始まりの剣
・回復薬×10
いかにも最初って感じのアイテムだな。
俺は、その二つをタップする。
すると、目の前に二つのアイテムがウィンドウから飛び出してきた。
一つは、50cmほどの剣。
おそらく鉄でできているであろう。
金属光沢を放っている。
そして二つ目は、緑色の液体が入った瓶。
回復薬だろうか。
『所持品』を見てみると、
・回復薬×9
となっていた。
一つづつ出てくる感じね。
とりあえず、回復薬はポケットに、始まりの剣を右手に持ち、ウィンドウを閉じる。
「ちなみに、この先真っ直ぐ行くと、一層のダンジョンへと出ます。そこにはモンスターがいるので、最初はモンスターを倒して、レベルを上げましょう。モンスターを倒すと、経験値、お金、素材が手に入ります。レベルが上がると、HPとMPの上限が上がり、5レベル毎にスキルを覚えます」
「お金って何に使うんですか?」
「この世界は地球とは違う世界線なので、当然空腹を感じます。なので、食事や薬品、装備品などを買うのに使うのが一般的です」
ちゃんと腹も減るのか。
やけに細かいな、そこら辺。
「HPやMPの残量は目を閉じると分かります。戦闘中などの『ウィンドウ』を開いている暇がない時にご活用ください」
なるほどな。
戦闘のこともしっかりと考慮しているわけか。
戦闘中に目を閉じていいのかは知らんが。
試しに目を閉じてみるか。
目を閉じると、暗闇に
HP 100/100
MP 100/100
と表示された。
いいねぇ! 楽しくなってきた!
じゃあ早速戦闘しに行くか!
大まかなことがわかったので、俺はモンスターを倒すため真っ直ぐに歩き出した。