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レコンストラクター  作者: Tandk
再構成編
6/51

05.お約束

ブックマークありがとうございます。

引き続き宜しくお願い致します。

「ん、んぅ……」


 何もない空間を唯々漂っているように感じていたが、徐々に意識が覚醒してくる。


「こ、ここは?」


 意識がはっきりして辺りを見回してみると、一面黄金色の麦の様な作物が植え付けられている。どうやら、広大な耕作地の中を通る街道付近の草むらに倒れていたようだ。

 近くには俺――リアム・シードの家族の姿もあった。


「おい、大丈夫か。グレース、シルビア、起きろ! ソル、平気か」


 俺は皆の状態を確認しながら声を掛けていく。


「ん、リアム。えぇ、私は大丈夫よ。ありがとう。シルビアは?」

「気が付いたか。シルビアも、ソルも無事だ」

「そう、良かった」


 目を覚ました妻のグレースが俺に返事をする。シルビア達の無事も伝えると、ほっとしたようだ。


「うぅん……ママ? パパ?」

「シルビア、大丈夫よ。パパもママもいるからね」

「……うん」


 娘のシルビアは目を覚ますと、すぐに両親を求めていた。グレースが抱きしめながら落ち着かせると、すぐに落ち着いたようだ。

 しかし、無事なのは何よりだが、真っ先に父ではなく母を呼ぶのはなんかこう、ぐっとくるものがあるな。仕方のない事だが。母は偉大だ。


「ウォン!」

「おぉ、ソルも起きたか。元気そうでなによりだ」

「ウォン」


 ちょっぴり俺がセンチメンタルになりかけていると、ソルも起きて身を寄せてきた。姿は変わってしまったが、これからも家族の一員として、宜しく頼むぞ。


 全員の無事を確認したところで、俺は現状を把握するためにグレースに声を掛けた。


「グレース。早速だが、状況を確認しよう」

「えぇ、わかったわ。シルビア、大丈夫だからね」

「うん!」


 シルビアを抱きしめていたグレースは、シルビアに声を掛けて身体を離して、話ができるようにした。

 すっかり安心したのか、シルビアはグレースの横で上機嫌に鼻歌を奏で始めた。


「まず、現在地だが――間違いなく、予定通りモリアス王国内だろう。正確な場所は分からないが」

「そうね。シーラオの広大な耕作地があるなんて、モリアス王国しかないものね」

「そうだ」


 そう断言できるのは、俺たちの周りを囲んでいるシーラオという作物の耕作地があるからだ。

 栄養価が高く、作付け効率が極めて高いシーラオは、ラース大陸のモリアス地方でしか育たない稲のような植物だ。つまりは、シーラオを栽培できるのはモリアス王国だけとなる。

 したがって、ここはモリアス王国内であることは確定事項だ。


「それなら、今すぐにどうこうなる危険は無いわね」

「あぁ、今はまだ早朝で時間はまだまだあるし、シーラオの耕作地は安全だからな」


 太陽――アビスの太陽はやや蒼がかった色合いをしているように見える――を見上げると、まだ陽が昇ったばかりのようだ。となると、まだ早朝である。この後人里に移動する時間を考慮しても、状況を把握する時間はたっぷりとある筈だ。


 そして何より、シーラオの耕作地が安全であることが大きい。

 というのも、モリアス王国では重要なシーラオを守るため、周囲の敵性生命体――同族以外へ積極的に攻撃を仕掛けてくる生命体、通称モブ――は、国軍の定期巡回によって常に一掃されているからだ。

 そして、国軍がシーラオの耕作地を頻繁に巡回する為、必然的に盗賊などの非正規武装集団も寄り付かなくなる。


 つまり俺たちの現状を端的かつ客観的に説明すると――


「襲われる危険もないし、待っていれば国軍の巡回兵が来る。最寄りの街なりまで同行を申し込めば、迷子になる心配も無い。ということね」

「その通りだ。ついでに言うと、もしかしたら巡回兵より先に各街を回る隊商が来るかもしれない。まぁ、その場合もよっぽどじゃなければ拒否されないだろうから、どちらにしても一緒だろうな」


 むしろ、世界情勢に敏感な商人たちのいる隊商の方が、新鮮な情報を仕入れられるかもしれないな。


「転移先は選んだ勢力圏内で、完全にランダムだったはずだから、私たちはとても運が良かったわね」

「あぁ、そうだな。同じモリアス王国内でも危険な地域はいくらでもあるからな。何よりだった」

「えぇ」


 グレースと顔を見合わせて、ほっと息をつく。転送された地球――アース人は百億人にもなるが、恐らく俺たちの様にイージーモードでスタートできた者たちはそれほど多くないだろう。なぜなら、アビスは地球とは比較にならない文明が栄えているとはいえ、過酷な環境だからだ。


「ひとまず現状についてはこれでいいとして――」


 俺が思わせぶりにそういうと、グレースは苦笑しながら返す。


「――ステータス確認、でしょう?」

「もちろんだ!」

「もう、リアムはそういうところはいつまでも子供みたいなんだから」

「ほっとけ」


 とんでもない事態の連続に翻弄されていたからこそ、今までは欠片も心に余裕はなかった。しかし、幸いにも俺たちには余裕ができた。

 だからこそ、漸く心躍らせる時間がやってきたのだ――剣と魔法の世界、ファンタジーに!!

 少しくらい、遊んだっていいだろう。うん。そうに違いない。


「魔導技術もあったりして超文明だから、厳密に言うならSFファンタジーかしら?」

「そんな細かいことはどうでもいい!」


 冷静にグレースが分析する。地球時代はゲームに興味がなかったからそんな知識無かったのだが、キャラクターメイキング時にアビスシステムから付与された情報の中に、参考情報として混じっていたようだ。


 とにもかくにも、まずは――


「ステータス・オープン」


 ――お楽しみタイムだ!


ブクマ・感想・評価・レビュー、よろしくお願いします。

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