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レコンストラクター  作者: Tandk
再構成編
11/51

09.冒険者ギルド

応援よろしくお願いします。

「ここが、冒険者ギルドよ!」

「おぉ、これか。なんか普通のオフィスビルだな」


 第四級都市ソーランに入った俺たちは、入場ゲート近くにある転送ゲート広場からヒト種居住区にある冒険者ギルドに来ていた。

 アビスの殆どの都市は移動時間短縮の為、街の至る所に転送ゲートが設置されており、簡単に行き来することが出来る。


「それじゃ、私も行くわね! ばいばい、シルビアちゃん」

「あぁ、ありがとな。ニグニさんに宜しく頼む」

「ありがとうミーアちゃん。またお会いしましょうね」

「おねえちゃんありがとう! またね!」


 ここまで案内してくれたミーアもまた、ニグニさん達に合流するべくここでお別れだ。

 俺たちは挨拶を交わしてミーアを見送ると、再び冒険者ギルドを見上げる。


「本当、まるで会社に出勤する気分だよ」

「えぇ、懐かしいわね」

「あぁ」


 まるで東京都庁のような佇まいの冒険者ギルドに、ちょっとした郷愁を感じる俺とグレース。お互い、出会いは職場なのでひとしおだ。


「パパー、ママ―! 行こうよー!」

「はいはい、シルビア。今行くわ」

「ははは。楽しいのは分かるが、あんまりはしゃぐんじゃないぞ」

「はーい!」


 俺たちがしんみりしている間に、早くもシルビアは入口に向かって走り始めていた。俺たちもあとに続く。


 冒険者ギルドの中は数多くの人が出入りしたり立ち止まって話したりしているが、結構な広さがあるため混雑さを感じない。

 フロアの雰囲気自体はお役所に近いものを感じるが、ディスプレイが宙に浮いていたり幻想的な使い魔が宙を飛び回っていたりと、中々に面白いことになっている。見ているだけでも楽しいな。


「ママ、あっちだってー!」

「シルビア、走らない! すみません」

「いぇいぇ、大丈夫ですよ。可愛らしいお子様ですね」

「ありがとうございます。それでは」

「はい、行ってらっしゃいませ」


 おっと、シルビアが入口そばにいる案内のエルフ族のお姉さんから行き先を教えて貰ったようだ。お礼も言わず、駆け出していく。

 グレースがお姉さんに挨拶して、シルビアを追いかける。おっと、俺も見てないで行かないとな。


「ようこそ、ローラン冒険者ギルド第二支部へ。異邦人の方々ですか?」

「はい、そうです。私たちは家族なのですが、一緒にアカウントの有効化をお願いできないでしょうか」

「承知致しました。ご一緒で構いませんよ。それでは、早速手続きをさせて頂きますね」


 俺たちは目的の窓口に辿り着くと、冒険者アカウントの有効化を申し出る。


 世界統合時の構成情報再構築時に、アビスシステムへ個人情報が登録され、冒険者ギルドのアカウントとして管理するのだ。アビスに来た異邦人は最初に、最寄りの都市で冒険者アカウントを有効化して身分証明を行い世界共通のICカードを受領する。このICカードが身分証明書を兼ねた便利機能満載の魔導具だ。正規発行されたICカードが無いと冒険者ギルドどころかあらゆる施設の利用が出来ず、身元不明の浮浪者扱いとなる。


 まぁ言ってしまえば、冒険者ギルドは世界規模の公的な総合情報管理機関だ。戸籍どころか銀行口座・懲罰歴・クエスト実績などなど、ありとあらゆる情報がアカウントに紐づけられている。とんでもない組織だ。便利だからいいのだけど。


 ちなみに元々は異邦人の為に新設されたそうだが、その有用性の高さから、アビス生まれの者も誕生直後に出生届を行い冒険者アカウントの作成が義務付けられている。


「はい、こちらが皆さんのICカードです。本人以外では使用できません。再発行は有償となります。過失または故意に失くした場合には罰則がありますので十分お気を付けください」

「ありがとうございます」


 必要な諸手続きを終えると、すぐに俺たちのICカードが用意された。ちなみにカードとは言っているが、いろんな形状が選べる。

 俺は腕時計型、グレースはアミュレット型。シルヴィアにはネックレス付きのタグ型にした。


「ICカードの詳しい機能説明はこちらの冊子をご参照下さい。ご不明点あればサポートダイヤルへお問い合わせください」

「はい、わかりました」


 ICカードの機能について説明されている薄い冊子を受け取る。


「アカウントを有効化された皆様には、異邦人サポート制度の一つとして、それぞれ一万シルが口座に振り込まれていますので、ご活用ください」

「はい、ありがとうございます」


 過去の異邦人達による様々な教訓を経て、制定されたのが異邦人サポート制度。所定の金銭と一年間の税金免除、公営賃貸の割引が主な内容だ。とても助かる。

 シルは世界通貨だ。一シルは一円と等価と思ってもらえれば問題ない。つまり俺たちが貰えたのは三万円ということだ。


 無いよりは遥かに良いが、早急に金策をしなければすぐに路頭に迷ってしまうだろう。つまり、クエストを請けねばならない。今は昼を少し過ぎたくらいの時間だ。ご飯を軽く食べても軽いクエスト一つは出来るかもしれない。


 おっと、女性職員の説明はまだ続いている。


「冒険者には二つの評価制度があります。一つは、冒険者ランクです。実力とクエスト実績などに応じて上がります」


 冒険者ランクはランク一からのスタートで、上限はない。一般人は三百前後、冒険者専業で八百前後、一流は千二百前後。ちなみに過去最高ランクは1681だそうだ。長命種や不老種も数多くいるため自然と高くなるそうだ。まぁ、俺たちも不老持ちなのだが。


「もう一つは、国別にある勢力ポイントです。国別の名声値です。クエスト終了後の依頼主からの評価が反映されます。また、何らかの功績を挙げた場合なども加点されます」


 つまりは信用度である。いくら冒険者ランクが高く実力があっても、初めて行く国ではアウェーなのは当然である。

 例を挙げると、日本でトップの売り上げを誇る営業マンだからといって、アメリカでもトップの売り上げを出せるとは限らないという事だ。能力はあってもその地域の風習や流儀がある。それを知らずに結果だけを出すなんて無理な話だ。


 世界どこの国でも基本的に出入りできる冒険者であるからこそ、この勢力ポイントは非常に重要視される。極論を言えば、仮想敵国をホームにしている冒険者を誰が信用するというのか、という話だ。


 その国で生まれた者もしくは、所定の手続きを経ることで国籍が与えられ、自動的に自国の勢力ポイントは一定以上に引き上げられる。尤も、後者の場合はそもそも一定ラインを越えていないと取得できないのだが。


「只今からでもクエストの受諾は可能ではございますが、クエストを請けるには冒険者ランクと勢力ポイントの制限があるものもございますので、予めご承知おきください。クエストはあちらのインフォメーションパネルで参照および申請が出来ます」

「はい、わかりました」

「重要な項目は以上です。詳しい事は、こちらの冊子をご参照ください」


 そして今度はすごく分厚い冊子を渡される。ちなみに、ICカードに電子書籍の様な機能はあるが、この二冊は必ず実物で渡される。伝統らしい。まぁ、中身は進化しているが。


「ありがとうございました」


 よし、これで準備は完了だ。まずは腹ごしらえながら今後の方針をグレースと決めないとな。


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