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第8話「ごはんが食べたくて」

「ご飯が食べたい!」


「なんです、突然?」


 デザートセットを注文した二人組のお客さんが会計をし終え、ありがとうございました。と頭を下げたあと、俺はカフェのカウンターにもたれながら呟いた。


「いや、パスタやサンドも美味いけど、白飯が食べたいんだ」


 この世界、米が主食じゃないのが悲しい。しかも炊飯器が見当たらないから、土鍋で炊かなければならず、少々めんどくさい。


 がしかし、無性に食べたくなった。


「夕飯として今から作る。ミイニャも一緒に食べる?」


「もちろんご一緒します。優斗君の料理は美味しいですから。何か手伝いましょうか?」


「じゃあお米を研いでくれる? お米のランチメニューを考案しようと思って、バートンさんにちょっと分けて貰ったんだよね。新米らしいから美味いと思う」


「任せてください……優斗君は、白米好きなんですか?」


「うん。毎日食べていた記憶が残ってる」


 俺は少し大きめの冷蔵庫を開け、中を確かめる。


(豚肉があるな。生姜焼きにでもしようか……あとほうれん草のおひたしと豆腐のお味噌汁にするか……)


☆ ★ ☆


 20分後、土鍋がグツグツと音を立てる中、フライパンて刻んだニンニクを焼いて、キツネ色になったので、小皿に移してから塩コショウで少し味を付けておいた薄切りの豚肉をフライパンで焼き始める。


 多めにすりおろしたしょうがを肉の上に乗せて、裏返して焦げ目がついてきたら、お醤油を回し入れる。


「うわ~、すごくいい匂いです。食欲が出てきます!」


 隣でお味噌汁を作っていたミイニャは思わずこちらを見る。


「不味い生姜焼きってたぶん食べたことがない。お醤油、しょうが、にんにくと少しのスパイスの味付けだから、ご飯が進むぜ」


 千切りしておいたキャベツが乗ったお皿に豚肉を乗せ、最後に色のついたニンニクを乗っけた。


「よし出来た」


「およそ汁もいいですよ。食べましょう!」


 いつの間にかお店の閉店時間を過ぎていた。


☆ ★ ☆


 今日の俺とミイニャの夕食は、ご飯にお豆腐のお味噌汁、それに俺特製の生姜焼きとほうれん草のおひたしだ。


 鍋敷きの上に置いた土鍋の中のご飯をよそり、俺たちはカウンター席に座る。

 飲み物はさっぱりしたアイスティ。


「いただきます」

 ミイニャが素早く手を合わせて食べ始める。


「なっ、なっ、なんて美味しいんでしょ! 白米ってこんなに美味しいんですか! お肉と凄い合います。しかもこの味付け美味しい」


「お腹空いている時には最高の組み合わせだと思う」


 俺もがつがつと食べ始める。


「優斗君、これカフェメニューにしませんか?」


「う~ん、だけどパスタとご飯を出すのは大変だぜ。ご飯は土鍋で炊かないといけないし、やるなら少し俺もランチの時間手伝わないと……ミイニャ一人じゃ負担をかけてしまう」


「私だけの召使いじゃダメでしょうか?」


 その言葉、どう受け止めればいいんですか? ミイニャさん!


「……いや、変に刺激するとあのツンツンに俺は殺されてしまうかもしれない」


 ツンツンとはミイニャの姉のマアニャ。俺は2人の召使いで雇われている身なのだ。


「たまには作ってもらう食事もいいですね! もはやお料理だけで優斗君は私の心を掴みました。なんて幸せなんでしょう。優斗君に出会えたことは、最高の幸せです」


 そこまで言ってくれなくても……


「ふふふ、お姉ちゃんとクレアに自慢したいくらいです。こんなお料理食べられないだろうと……」


「いや、俺、朝ごはんとお昼、邸で作ってますけど……」


「あっ……そんな!」


 ミイニャは少し考えこんで、


「じゃあこの生姜焼きは作らないでおいてください」


「変なことを言うんだな……」


「ダメですか?」


「いや、いいけど。あの二人が食べたいなら、カフェに来店することを望むぜ。クレアはよくきてるけど」


 俺の言葉を聞いて、満開の笑顔をミイニャは作った。


 今日もカフェ『グランデ』はあったか、あったかで閉店時間を迎えています。

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