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第6話「ポジティブ思考でお悩み解決」

 マアニャの召使いのお仕事を少し早めに切り上げさせてもらい、午後1時になる前にカフェ『グランデ』に到着すると、夕方とはまったく違う賑やかな店内だった。


 入り口のドアを開けると、


「いらっしゃいませ」


 と、調理中のミイニャが挨拶をくれる。


「やっぱりランチ時は混んでるなあ」


「優斗君、いいところに。ラストのパスタお願いできますか?」


「よし来た。任せろ」


 袖を捲り、手を洗ってから完売した限定メニュー鱈とキャレスのオリーブパスタを調理し始める。

 横目でミイニャの仕事ぶりを見ていたが、やる気が無さそうなこと言っていた割に、テキパキと作業をこなしていた。


☆ ★ ☆


 ランチタイムを終え、女性のお客様がまだカウンター内で食事をしている中ミイニャは疲れたように腰を下ろした。


「少し休みます。速く来てくれてありがとうございました」


「マアニャにカフェ混み具合を話して、邸でのお昼の時間を少し早めてもらったんだ」


 俺はせっせとお皿洗いをしながらミイニャと会話をする。


「外はいい天気ですね。お散歩にでも行きましょうか?」


「閉店してからな」


 俺はカウンター席の女性をチラッと見る。ミイニャも気になっていたこっちに視線を送ってきた。


「珈琲のお代わり、いかがですか?」


「えっ、あっ、はい。お願いします」


 何やら考えていて女性ははっとしてこっちを見て答えた。

 コーヒーのお代わりを注ぎ、俺はカウンターに戻ると、ミイニャは立ち上がり目を輝かせていた。


「あのう、何かお悩みですか?」


 お悩み相談カフェ。俺とミイニャが相談相手となり、悩みを解決してあげようと言うものだが、悩んでいる人はとりあえずそれを誰かに聞いてほしいわけで、1人じゃ解決できないようなことでも、俺とミイニャが助太刀してあげますよって感じなのだが。


「えっ、ええ……その、双子さんのお母さん、ナツコさんに聞きました。ここのカフェはお悩み聞いてくれるよって。本当ですか?」


「ふっ、本当です。ここにいる優斗君は何を隠そう心理カウンセラーです」


「いえ違います!」


「もうノリが悪いですよ」


「嘘を言うな、嘘を……話はきちんと聞きますよ。俺とミイニャはお子様なので、すべての悩みを解決できるわけじゃないですけどね」


「優斗君と私ようにカフェオレを作りましょう」


「そうだな、ホットで頼む」


「わかりました」


 手を動かしだしたミイニャは女性を見る。

 はやく、はやくとその目が言っているようだ。


「夫の事なんですけど、前までは仕事が終わるとすぐに帰ってきてたんですけど、ここ1ヶ月ほど帰ってくるのが遅くて……このアイルコットン、カジノがありますよね……たぶんそこに」


 カジノっていうと、いわばギャンブル。


「それじゃあ生活費がなくなっちゃいますね」


「いえ、それが生活費は先に貰っていて、お小遣い制なので」


「お小遣い制は正しい判断ですね。特にギャンブルする人には、私のお父さんもお母さんもギャンブルはしてませんでしたけど」


 俺はミイニャが淹れてくれた湯気の立つカフェオレを口にして、


「ギャンブルと決めつけるのは良くないと思うけど……実際、生活費はもらっていてお小遣い制なら毎日遊べるお金があるとは思えないけど」


「じゃあ優斗君はどう思いますか?」


「1カ月前から帰りが遅くなったんですよね。お子様っていますか?」


「えっ、ええ。3歳になる子が。今はおばあちゃんが見てくれています」


「近々誰かの誕生日か、結婚記念日で仕事終わった後、何かお仕事してるんじゃないですか?」


「なんでお祝い事だとお仕事を増やすんですか?」


 と、ミイニャ。


「サプライズでプレゼントとか豪華な食事とかやりたいだろうが……」


「あっ、なるほど。優斗君、ナイスなポジティブ思考です」


「いや、実際そっちの方が温かいし微笑ましい」


「娘の誕生日です。明後日」


「じゃあ明後日までは問いたださない方がいいですよ」


「はい! すごい気分が晴れました」


「そうでしょう、そうでしょう。優斗君と私にかかればお悩み相談など……おほん、今からデザートセットがお得ですよ。どうですか?」


 ミイニャは笑顔でメニューをお出しした。


 今日もカフェ『グランデ』は温かです。

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