表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/15

第4話「今日のおやつはシュークリーム」

ミイニャはグランデカウンター内のオーブンの中から焼けたばかりの生地を取り出す。


「シュークリームの生地は焼き固まってから取り出すことが重要です。そうじゃないきちんと膨らまず萎んでしまうので……」


「綺麗な焼き目がついてる」


「美味しそうですね。私も久しぶりに作りました」


「上にかけたアーモンドの香りもいいな」


「では、クリームつめていきます。生クリームとカスタードクリームを混ぜたものをディプロマットクリームっていいます」


「すげえ、よく噛まずに言えたな……デザート作りが得意だと男の子にもてるぞ」


「……口を動かさずに手を動かして、優斗君もクリームをシュー皮に包むのを手伝ってください」


 今、一瞬恥ずかしがったな。ミイニャの性格、行動パターンがなんとなくわかって来たぜ。


 クリームを入れ、最後に粉砂糖を振りかけ、手作りシュークリームは完成した。

 ミイニャの顔には少し粉砂糖がついていて、その顔を見て俺はドキッとしてしまう。


☆ ★ ☆


 相変わらずランチ時を過ぎるとガラガラな店内だが、ミイニャと二人でシュークリームのおやつを食べるのも悪くない。いやむしろ良い。


 シュークリームにはカフェラテか紅茶で迷ったが、ホットの紅茶をチョイスする。

 ティーカップに紅茶を注ぎ込んでいた時、外から叫ぶ声が。


「お姉ちゃんとお兄ちゃんのとこにいるの!」


「毎日、ご迷惑でしょ。今日はお家でテレビでも見てなさい。あっ、こら、ちぃ」


 子供とお母さんの声。しかも聞き覚えが……


 チャリンと鈴の音の後ドアが開き、いや音がした瞬間に俺たちは手を止め、


「いらっしゃいませ」


 と、ほぼ完ぺきになりつつ挨拶を自然体で行う。


「お兄ちゃん」


 駆け足でちぃちゃんは俺の元に来て、そのままくっついてくる。


「おう、ちぃちゃん。いらっしゃいませ~」


「すいません……どうしてもここに居たいようで……」


「いいんですよ。元はといえば優斗君が連れて来たんですから」


 よく言うよ。ちぃちゃんが顔を見せないとそわそわしているくせに。


「すいません……じゃあ今日も2時間ほどお願いします。ちぃが食べたものはあとで清算しますので」


「100リルン。それ以上はいつも通り戴きません」


 この世界はリルンって通貨らしい。100リルンは俺の知ってる常識で200円だ。


「ほんとにすいません! よろしくお願いします」


 頭を下げて、ちぃちゃんのお母さんが出て行くと、


「今日はシュークリームを作りました」


 ミイニャは満面の笑顔をちぃちゃんに向ける。


「チュウクリーム、ちぃ、好き。プリンと同じくらい」


「ふっ、そうでしょう。私の手作りですから、美味しいですよ」


「早く食べたい。牛乳くだしゃい」


 ミイニャは言われるがまま、ミルクを用意し、ちぃちゃんの前にシュークリームを食べやすいように半分に切って出し、俺たちのにもナイフを入れる。


「いただきまちゅ」


 パクリとちぃちゃんは齧り付くと、クリームでちぃちゃんの口の周りにつくが、そんなこと気にせず無邪気な女の子は、


「おいちい」


 と、嘘のない感想を伝えた。


「当たり前です。私が作ったんですから」


 ミイニャは嬉しそうに口元を緩め、自分もシュークリームを頬張る。


 カフェ『グランデ』は今日もノーマル営業中です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ