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第14話「フレンチトーストでドキドキ」

 カフェの店内には甘く、いい匂いが立ち込めていた。カウンター席に座るちぃちゃんは出来上がりを今か今かと待ちわび、身を乗り出している。


「牛乳&卵と少しのはちみつに浸しておいた半分に切った食パン。これをバターを溶かしたフライパンに重ならないように入れ、焦げ目をつけていきます」


「うまそうだ」


 すでにお昼は食べ終わっているが、お腹が空く年ごろだからかな。食欲は増すばかりだ。


「両面に焦げ目がついたらお皿に移して、粉砂糖、メープルシロップなどをかけて完成です。お子様優斗君とちぃちゃんはシナモンパウダーは苦手だと思うので無しがいいですね」


 俺とちぃちゃんの前に湯気の立つフレンチトーストをミイニャは出してくれて、俺には温かいカフェラテを。ちぃちゃんにはホットミルクを注いでくれた。


「うわ~、おいちそう。いただきます」


 ちぃちゃんは可愛らしく手を合わせ、お腹が空いていたのか慌てているかのように食べ始めた。


「どうぞ優斗君も食べてみてください。私は太るといけないので一切れにしておきます」


 羨むような体系だけど、そこは女の子。気にしているんだな。


 俺はフォークとナイフを使い一口サイズにして口に入れる。

 ふわふわで甘く、蕩けそうな味だった。


「うめえ!」


「ふっ、今朝クレアが朝食で作ったものよりも美味しいでしょ。美味しいですよね?」


 可愛い顔で至近距離に迫られるので、むせてしまいそうになる。


「えっと、あれは俺も一緒に作ったんだぜ。ていうか、なぜ邸の朝食がフレンチトーストだったと知っている?」


「お姉ちゃんに聞きました。ふっ、お姉ちゃんはどうしてか知りませんが、優斗君がここに住むのが気に入らないらしくて、電話してきたんですよ」


「ああ……」


 昨日ミイニャが一緒に暮らしてくれと言われてから、邸に戻ってクレアに伝えたときもなんかすごい怒っていたからな。直接話すと言っていたからそのうち来そうだけれども。


「お姉ちゃん、美味ちい」


「そうでしょう。スイーツやデザートづくりには自信があります」


 ミイニャは胸を大きく張る。褒めろと言われている気がするけど、とりあえずスルーで。


 フレンチトーストもデザートと言えばデザートか。ティータイム向きだと思うし。

 ウエイトレスの服が抜群に似合うミイニャの昨日のセリフには驚かされた俺だ。


 チャリンとベルが鳴り、俺はフレンチトーストを入れたまま瞬時に姿勢を正し、

「いらっしゃいませ~」

 と、挨拶する。


「あっ、いい匂いがしますね」


 聞き覚えのある声に顔を上げると、お邸のザ・メイドクレアが真っすぐこっちに歩を進めてきていた。


「よお、仕事抜けてきたのか?」


「うんうん、今日は早めに夕食の下ごしらえも済ませてきたの」


 さあ聞かせてもらおうかという感じでクレアはミイニャを見据える。


「あのう、彼を住まわせたいって聞きましたけど、お邸に居た方が朝のお仕事を迅速に行えると思うんですけど」


「それはその通りですけど、私が優斗君に惚れてしまったのでしょうがないということで」


「……」

 クレアはびっくりしたように後ずさり、

「ほ、惚れた!」


「はいっ」

 ミイニャは気持ちのいいくらい堂々とお答えになる。


「お姉ちゃん、惚れるってどういう意味?」


「大好きになったってことです」


「そっか、お姉ちゃんはお兄ちゃんがちゅきでことか」


「そうそう。そういうことです。ちぃちゃん、プリンも上げましょう」


「マアニャ様もそれじゃあ困ると言ってましたよ」


「じゃあ週1回、お邸に泊まるってことでいいじゃないですか?」


「よくありません。クレアの大切で楽しい時間が……」


「んっ、何か言いました?」


「いえ、別に……」


 口を尖らせて、当たるように俺を睨みつけるクレア。


 いや、全然怖くないんですけど、むしろ可愛い表情だ。


「優斗君、今日の夕食はなんですか?」


 えっ、俺が作ることになっている……

 クレアの視線が余計に鋭くなっただろ。


「……あっ、フレンチトーストですか?」


「一口食べる?」


「うん……」

 クレアはぱくりと俺が一口サイズに切っておいたそれを頬張る。


「美味しい……やっぱり君、お料理上手」


「いや、これは……」


「作ったのは私です。デザート、スイーツ作りスキルでは負けません!」


「おお、お姉ちゃん、プリンもおいちいよ」


 クレアはミイニャが作ったと知って、しまったというような顔をしたような気がしたが、気のせいかもしれない。


 今日のカフェ「グランデ」は、ちょっとドキドキです!

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