第11話「来年もよろしくお願いします」(大晦日特別編)
今日は12月31日。大晦日。
カフェ『グランデ』は通常よりも少し早めの午後3時で閉店時間になっている。
ミイニャもお正月は、家を出た身だがミラ家に戻るようで、クレアもいるし今年は去年とは違い大人数で年を越せそうだ。
「う~ん、いい香りですね」
カフェのカウンター内で湯気を上げるフライパンを覗き込むミイニャ。
「にんにくはみじん切りにして、香りが出てきたら、さっき切っておいたいかと殻をむいたエビを加えて、砂出ししたアサリを加える。えびとイカだけでもいいけどな……ここに白ワインをちょっと入れて、トマトソースを入れる」
「これはなんてパスタですか?」
「ペスカトーレだ」
「おお、なんか呪文みたいにカッコいい名前です。ペスカトーレ!」
ミイニャは楽しそうに手を前に出して呪文みたいに唱える。
「アサリの口が開いて、エビに火が通ったら、塩、コショウ、パセリ、おれはちょっとだけ醤油を垂らす……で、この中に茹で上がったパスタを加えればペスカトーレだ」
「なんかトマトの色してますし、お姉ちゃんが凄く好きそうですね」
「そうだな」
俺はパスタをお皿に盛りつける。
「夕食もありますから、仲良く半分ずつ食べましょう」
「じゃあ取り皿を用意するよ」
ミイニャがアイスティを入れ、俺たちはカウンター内の席の腰を下ろす。
「あのっ、優斗君……」
両手をギュと握り、ミイニャは何か言いたそうに視線をこちらに向けた。
「どうした? 冷めると味が落ちるぞ」
「いえ、そのう……私はお世話になりっぱなしで……来年もお世話になると思います。どうぞよろしくお願いします」
「改まって言われると恥ずかしいな……おう、こっちこそよろしくな」
「デザートは大量に用意しました。お姉ちゃんはよく食べるので、そしてその分で乳でかになっているのかと……なぜ双子なのにここまで差が出るのか。ムカつきます」
「そこまで大きいかな、マアニャの胸」
俺はいけない想像をしてしまった。
「優斗君、まさか触ってませんよね?」
痛い視線を浴びせないでくれるか。
「突発的な事故が起きたことがあったかもな」
「私にもぜひその事故を起こしてほしいものですね」
あのう、ミイニャさんその発言は色々受け取りづらいよ。
「食べましょう」
パスタをフォークに巻いた時、カフェ入り口のドアが開いた。
俺たちは反射的に立ち上がり深すぎず浅すぎずのお辞儀と、
「いらっしゃいませ~」
と、声を出す。
「迎えに来てあげたわよ」
顔を上げると、そこに居たのはミイニャの姉の見た目も目立つマアニャと、ミラ家で一緒に召使いの仕事をしているザ・メイドクレアだった。
「くんくん、あっ、なんかいい匂いがするわ」
「ちっ、いいタイミングで来るね、お姉ちゃん。うんのよさ、私より上なんじゃないの?」
「あのう……来年もよろしくお願いします。クレアをよろしくね」
少しもじもじして、仕事の同僚は恥ずかしそうにそんなこと言った。
「こっちこそ。迷惑かけてばっかりだけど」
「そんなことないよ」
「ちっ、クレアも胸デカいですね」
「えっ、胸? 何のお話ですか?」
「来年もきちんとあたしに仕えなさいよね?」
ギロリとそれは、それは怖い視線で睨まれる。
「はいっ……」
「何かあったら助けてよね」
わざと聞こえない声で言っているのかこいつは……
「当然、召使いですから」
「んっ、これ美味しい。あんた料理だけは上手いわね」
早くもパスタを食べだしたツンツンマアニャは、俺に毒づく。
料理だけじゃない。俺は色々と……
「今日はパーティーよ。遊びまくるわよ」
今年のカフェ『グランデ』はこれにて閉店です。
また来年お会いしましょう。良いお年を!




