表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/146

87話 完全な敗北と奴らもサラリーマンですか?

 ヴィルを掴みブラフのいる場所へと走っていく。

 もちろん、エリーとベネッタを死なせる訳にいかないからだ。


 俺に気づいたブラフが、


「あれ? イッセイ君復活したの。しかも、ヴィルグランデまで元に戻ってるよ。ヤダな。ちょっとふざけただけじゃない。もう引き上げるから許してよ。」


 ブラフはベネッタの頭を足蹴にし、エリーの髪を掴み自分の顔近くまで持ち上げると顔を舐めた。


 −−ブチィ。


 自分の中で何かがキレた音がする。

 無言のまま、ブラフの所へ高速移動する。


 俺の全速力でブラフまで移動した。

 勢いそのままでヴィルを振るう。


 --シュッ・・・。


「ほぉ。早いですねぇ。」


 ブラフはエリーを投げ捨てベネッタを蹴り飛ばすと剣を構えて俺と対峙する。


 --ガキン!!


 俺の攻撃はあっさりと止められてしまった。

 直ぐに水面蹴りをするがブラフが地面に突き刺した剣が引っかかり蹴りを止められた。


「早いね。それだけだけど。」


 --ドカッ!!


 俺の顔を蹴り上げてくる。

 何とか蹴りの方に寄ることで勢いを殺せたと思うのだが凄く痛かった。


 こいつ。強い。

 今まで戦った敵やモンスターと比べる事が出来ないほど強い。


 俺はすっかり余裕が消えていた。


(おい。何を躊躇してやがる。手数を出していかないと倒せねえぞ!!)


 ヴィルが頭の中で叫ぶ。分かってる試したい技があるんだ。


「うおおおおおおお。」


 ヴィルを下から切り上げる。


 大ぶりだったためか、ブラフは俺の攻撃を顔を上げてかわすだけ。


「ふっ。」


 ーードスッ。


 鼻で笑われたと同時に腹に痛みが覚える。蹴り上げられて一瞬息ができなくなった。俺達には、それだけの実力差がある。


 だがそれで良い。

 当たれば儲け位にしか思っていないので、なるべく振りがかするようにヴィルを振る。


(おい。イッセイ。)

 ヴィルが心配そうな声を出してくる。


 分かってる。これは賭けだ。

 この攻撃が外れた場合恐らく俺は死ぬ。


「アクア!! セティ!!」


 氷の刃を粉砕して、竜巻に混ぜる。

 竜巻の中では氷の刃に切り刻まれていることだろう。


 --ガクガク・・・。

 膝に来てる・・・。

 魔力切れを起こしそうになるが、微調整で何とか回避させる。


 この魔術もやつには大した時間稼ぎにならなかった様だ。


「クククッ、イッセイ君。なんだいのそのへっぽこな魔法は?」

「悪いですね。僕は魔法が使えないんですよ。」


 ブラフが”ピュピュ”っと剣を振ると俺が作った魔術は完全に四散した。

 ◯クターもといマジックポーションを飲む。今の時代、喉越しは爽やかじゃないとウケないと後でミサキさんに伝えよう。


「セティ!!」


 もう一度、風をだす。


「君もしつこいなぁ~。」


 ブラフが面倒臭そうな顔をして俺をみる。

 そして、剣を振るおうとしたその時、


「ここだ。」


 俺が風の流れを変える。収束した風を作りブラフの腕に絡みつく様に命令した。

 意外と何でも出来るものだな・・・。


「なっ、何だこれ?」


 ブラフも経験が無いのか外すのに戸惑っている。


 よし。これでネタは大丈夫だ。


 ヴィルを上空で待機させたまま、マーリーンの力で消している。

 スキを作ってヴィルを当てる。単純な方法だ。


 ブラフが風から絡まれたままで居たため、俺がプロメテで作った炎の刃をブラフマの顔面にぶっ刺してやった。


「熱つつつ。」


 ブラフの顔が火だるまになる。

 熱は感じるのか顔についた火を消そうと一所懸命に顔を払っていた。

 だが、直接的なダメージは入らないみたいだ。

 苦しんでいる感じは見受けられない。


 ここがチャンス!!

 隠してあるヴィルを握る。


 完全に油断しきったブラフに対して振り下ろすだけで袈裟斬りに近い形。

 しかも、力任せで切るよりは叩くが近い。

 しかも、タイミングが合わなかったのかヴィルが俺の手から離れて自身を振り下ろすというヒドイ状況で、俺って何か意味あるのか? って感じだった。


 --ガスッ!!


 火だるまだったブラフの顔面にヒットする。


 流石に直前でブラフもかわしたために直撃では無かったが、逆にそれが悪かった。

 ヴィルを完全には避けきれず頭から顎までに一本の縦すじの傷が入った。


「チッ。俺の力だけじゃ弱いか・・・」


 ヴィルの残念そうな声が聞こえた。


 うぅ・・すまねえ。剣術も少しやるか・・・。


「グオオオオオオオ。虫ケラ共ガ!!」

「「!!?」」


 ブラフの声色が変わる。

 先程より透き通るクリアな音だが恐怖心を感じさせられる音になった。

 そして、顔を手で押さえているがその隙間から黒い瘴気が噴出していた。


 俺は追い打ちをかける。


 怯んで動けない奴に向かっていきヴィルを呼ぶ。

 俺の手元に治まったヴィルは後は下に手を下ろすだけのベストポジションだった。


 コースはブラフマの頭を捉える。兜割りってやつだ。

 このまま行けばスイカが割れた様になる筈・・・だった。


 −−シャラ・・・ドスッ。


「アマリ調子ニ乗ルナヨ。」


 俺の腹には鋭利で透明に近い剣が刺さっていた。


「・・・ヒュー。ガフッ。ヒュー。」



「イッセイ。」

「フン。」


 −−ドシャ・・・。


「テメエ!!」


 ヴィルが叫ぶ。

 だが、ブラフは俺の腹に刺さった剣を引き抜きながら、そのまま地面に投げ捨てる。

 下半身がピキピキと、音をたてて動かなくなっていくのを感じた。


「キサマハコウダナ。」

「グオオ・・・。」


 ヴィルは断末魔の声を上げて直ぐに音をさせなくした。


 ーードゴン。ゴトゴト・・・。


 薄れる意識の中、ヴィルがまた封印されているっぽかった。


 お前。またかよ~。


 何でか知らないが笑ってしまう。

 地面に落ちた俺は力無く転がり身体を動かす気力もない。


「ガフ・・・。ヒュー。」


 俺の体にいるバッカス以外の精霊の皆が俺の傷を癒やそうと色々やってくれている。


 何となく分かる。無理だ。


 エリーとベネッタを見ると全く動いていなかった。

 ソフィーを見るとこっちに向かってきている。


 止めておけ。殺される。逃げろ。


 声には出ないがそう念じる。




「アァー。クソガ俺様ノ顔ニ傷ヲ付ケヤガッテ。」

「・・・優男・・に・・似合う・・じゃないですか・・・」


 ブラフがこの世のものとは思えない声を出す。

 次元が違うというか存在自体が俺達と違う感じだ。深層心理で恐怖を感じる。


「殺スゾ。クソガキガ。・・・アァ?? ・・・はい。いえ、ちょっと手間取ってまして。はい。はい。」


 いきなり口調が元に戻った。何かと通信しているらしい。

 ブラフを見ると携帯電話を片手に町中で電話しているサラリーマンの如く、誰かに向かって頭を下げている。


「イッセイ君。運が良いですね。僕は戻らねばならなくなりました。生き残る可能性が増えましたよ。もっともその傷じゃ対して長くは生きられないでしょうが・・・。ダガ、顔ノ傷ノ事ハ覚エテオク。次会ッタラ俺ノ手デ殺ス。」


 ブラフは最後に俺を脅すような言葉を発すると煙のように消えた。



「グフッ。ここ・・・までか・・・。」


 俺も意識を手放した。




 ・・・・


 目を覚ますと辺り一面白で統一された部屋で目を覚ました。

 あの場所(金○の所)に似ているがそうでは無さそうだ。


 ベットに横になっていた俺は身体を起こすと外から差し込む陽射しに目を細める。


 −−コンコン


 ノックされ扉が開かれると入ってきたのは、腹黒(省略)ウサミミとカレン姉様が入ってきた。


「イッセイ。目が覚めたのね。」


 優しく微笑む姉様。俺を抱いて頭を撫でてくれた。

 なんだか少し痩せてる気がする寝ている間に世話でもしてくれたのだろうか?


 後でお礼を言わなくては。しかし、母様や父様が来ても良さそうなものだが・・・貴族ってそういうものなのかな?


「いつつ。」

「あっ、まだ動かない。」


 体を起こそうとするが節々と言うか全身が痛い。

 一体どうなっているのやら。

 今は体を動かせないので、確認のしようが無かった。


「さて、ちょっと見させてもらうよ。」


 おもむろに俺の身体を弄る腹黒(省略)ウサミミ。

 何だか医者みたいな手つきだった。


「ふむ。容態も安定しているね。顔色も良い。これならリハビリも始められるよ。」

「ありがとうございます。ミサキ様。」


 姉様がミサキさんに御礼を言っている。

 2人は顔見知りなのだろうか?


「いいや。彼等は私のラボを守ってくれた勇者だからね。これ位お安い御用だよ・・・。」


 そう言って俺から離れた腹黒(省略)ウサミミ。もといミサキさんは壁に身体を預けると静かに語りだす。


「さて、どこから話そうかね?」

「あの戦いから、今はどれ位時間が経ってますか?」


 あれから何時間経ったのか、皆は元気か? ソフィーは? エリーは? ベネッタは? 色々聞こうと思ったが、次の一言で消し飛んだ。


「君は一週間眠り続けていた・・・。」

「なっ!?」

「あの後何があったか話そうか?」

「・・・お願いします。」


「ふむ。」


 ミサキさんはそう言うと静かに語り始めた。

 俺が気を失った後、ミサキさんとソフィーは俺達3人の治療に当たってくれた。

 エリーは軽傷、ベネッタは腕を折る重症。そして、俺が一番酷く危うい状態で、もう少し遅かったら逝く所だったと言われた。

 研究していたありったけの薬を注ぎ込んだと言っていたので、「後で副作用が出たらごめん。」って言われた。


 今ここに居れるだけでも奇跡みたいな話なだけに感謝してもしきれない。

 そして、俺の下半身は謎の結晶に包まれて取り除けないと言われた。

 体が動かないので確認しようが無いが、ヴィルと同じ状態になったと仮定は出来る。

 カズハに解いて貰おうとしたが、魔力が一切練れず精霊の皆が呼べない・・・。


 これに関しても原因は分からないとミサキさんは肩を落とした。

 ヴィルも同じ様に封印されている。と言われた。


 そして、情勢の話が出た。

 何と【外来種】が地下の世界で決起し、全人属に対して宣戦布告してきたらしい。

 各国の貴族や冒険者が集められ連日会議に負われているのだとか、父様や母様がここに来れない訳だ。いや、来れるわけがない。


 と言うか来たらしいが俺の意識が無かっただけ。

 屋敷には居るらしいので体調が戻り次第会いに行こう。


「姉様。ミサキさん。ありがとうございます。」


 視線だけ反応をかえした。と、そう言えばここは何処なんだろう?

 俺は聞いてみた。


「ここは、魔導図書館の秘密の設備さ。」


 ミサキさんが教えてくれた。

お読み頂きましてありがとうございます。

次話は火曜日投稿予定です。


宜しければ、マイリス登録、感想、評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ