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83話 彼が拐われたってのは『嘘』ですか?(ベネッタ視点)

PVが30000を超えました。ありがとございます。



 ・・・ベネッタ視点


「ははぁ〜。何というか凄いお方でしたね。」


 ぐったりとしたあの気持ちの悪い精霊を抱いて、颯爽と去るイッセイを見ながらバロウが呟く。


「本当ね。あの噂話がガセ(・・)だと分かるくらいの実力だわ。」


 両親から聞いた話を思い出す。


 山賊に拐われた貴族の息子がいて、それを王都軍がそれを救出したとの事。

 救出した先が北のウリエル国だったため連れ帰るのに一年を要したとの事。


 これが親から聞いていた話で、名前は伏せられいたが学園を一年休学した唯一の彼がその被害者だと誰しもが想像した。彼にはあだ名がついた。


『不幸の辺境伯の三男坊』それが彼のあだ名だ。


 だが、私は今日の出来事でそれは大きな間違いだと知った。


 彼が拐われるなんてあり得ない。

 そこいらの冒険者が束になっても敵わないだろう。山賊なんて殺して逃げるなんて彼にとって朝飯しまえだろう。いや、拐われる事自体が不自然に感じた。


 私も彼には助けてもらった。しかも『神獣』を降臨させ契約することが出来た。

 方法は別の精霊を媒介して精霊界を開くなど聞いたことがない。


 彼はその事を自慢するでも増長するでもなく。

 ただ一言、内密する旨の発言をしていった。


 帰りの馬車に揺られている時もずっと気がかりだった。


「ピュルル?」


 サンは可愛い。

 咄嗟に名前を付けたとき一瞬彼にまつわる名前にしようかと思ったが、何となく止められると思ったので三男坊から"サン"と名付けた。

 この国で『サン』という言葉が太陽の祝福を受けている事は嘘ではない、

 ただ、文字っている事実があるだけだ。



 これは彼からの贈り物。

 彼との繋がりを持っておきたいので付けた名前だ。



 私だけの秘密。

 彼との繋がりを持つ秘密の秘密。


「はぁ~。」

「あら? お嬢様珍しいですね。」

「何が?」

「いえ。今、ため息を・・・。」

「私が?」

「はい。」

「ふーん。」

「ふーん。って・・・」


 なんで、こんなに憂鬱で腹立たしいのか分からないが屋敷に着くまでの時間が長く感じたのは初めてだった。




 ・・・



 屋敷に着くと執事長のメープルが走ってきた。

 結構な高齢の筈なのにいつ見ても足取りは軽やかだ。

 昔は結構有名な冒険者だったとか何とか、まぁお約束ってやつよね。


「お嬢様。旦那様とお客様がお待ちです。」

「あら? 誰かしら。」

「そのままのお目示しで構わないとのことでしたので、直ぐに応接間までお急ぎください。」


 はて、アポなんてあっただろうか? 言われたとおり応接間まで足を運ぶ。

 ノックし返答を待って中に入るとそこには叔父であるアレックス宰相がいた。


「おぉー。可愛いいベネッタ戻ったか。」


 父様は私に甘い。

 どんなに忙しくてもどんなに面倒が起こっても私を叱らない父親だ。


「アレックス公爵様。お待たせいたしました。父様只今戻りました。」

「やぁ。お邪魔しているよ。」

「ささ。こっちに来なさい。」


 父様の手招きに導かれアレックス叔父様の対面に腰掛ける。


「さて、早速話をしようか?」

「アレックス。食事しながらでも良いではないか。今用意させる。」

「すまん、ベルモッド。事が済んだら出ねばならんのでな直ぐに済ませる。」


 父様は寂しそうだったが、叔父様が尋常じゃなく急いでいたのはこちらにも伝わった。私は背筋を伸ばした。


「話というのはベネッタの事だ。」

「何だ。嫁にはやらんぞ。」

「今は茶化した話ではない。今日の出来事だ。」

「私の召喚獣の事でしょうか?」


 何となくこの子(サン)の事だと直感した。


「ピュピィ。」

「うぉ。召喚獣だと!? ベネッタお前いつの間にこいつはどうしたんだ。」

「はぁ・・・。聞いたとおりか・・・・。」


 サンを見せると父様は驚愕し、叔父様は頭を抱えた。

 話が見えない。


「イッセイ=ル=シェルバルトと一緒だったね?」

「はい・・・。」

「なんだと!?」


 父様が声を荒げたのを聞いたのは初めてだった。

 近づくなと言われていたのに興味本位で近づいた。

 今はその興味本位が真実を知るための手がかりに変わっている。

 私は悪い事をしたのだろうか? 頭にそう過ったが叔父様と父様に反応は少し違った。


「ベネッタ。良くやった。流石ワシの娘だ。一度は警告したがこんなチャンス無碍にする必要はないんだ。」


 手放しに喜ぶ父様に対して、叔父様は冷静にだった。


「いやはやベルモット。あの子は英雄の卵だ。私にも今後はどうなるか分からん。」

「アレックス。そんなこと言わずにお前にも娘がいただろう。あの子の元に出せば安泰だぞ。」

「私はあの子の義父なんてまっぴらゴメンだ。命がいくつあっても足りん。」


 なんの話だ。私はてっきり間違いを犯したのかと思ったが、父様の反応を見る限りでは逆だ。


 寧ろ彼と繋がりができた事を喜んでいた。

 しかし、英雄の卵とはなんの事か。


「イッセイが英雄とは?」

「しまった。ベネッタがいた事を忘れていたわ。忘れてくれ。私は口止めに来たのにこれでは意味がない。」

「しかし、何故ベネッタは彼と仲良くなれたのだ?」

「それは・・・・」


 教会で出会った所から今日の出来事を説明した。


「そうか、それを聞いたなら私は今すぐ行かねばならんな。ベネッタありがとう。今日の事は交通事故だと思ってくれ。それと、明日から宮廷魔道士の見習いになったので、王城の魔導課に顔を出してくれ。」

「宮廷魔導師見習い!?」

「あぁ。精霊を召喚した以上、図書館なんて危なくて通わせられんからな。それに女王殿下のご命令だ。」


 うそ? うそ? うそ? 

 夢にまで見た宮廷魔導師の門が急に開いた。

 お祝いするみたいにサンが頭を擦りつけてきた。


「キュピピピ。」

「ありがとう。サン。・・・ありがとう。イッセイ。」


 私は感激の涙が止まらなかった。

お読みいただきましてありがとうございます。

次話は、火曜日投稿予定です。


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