77話 これが、世界一のおばあちゃんの実力ですか?
ユニークが5000を超えました。
ありがとうございます。
俺達のドタバタ入学騒動から1ヶ月が経った。
最初はギスギスしていた同級生達であったが、子供の友達を作る速度には相変わらず舌を巻く、世の中子供だらけだったら戦争なんて絶対に起きないんじゃないかと思ってしまうほどだ。
俺とエリーの扱いも慣れてきた皆が徐々に話しいかけてくれるようになった。
まぁ、協力者が居なかったわけでもないんだけどな。
ソフィーも積極的に動いてくれたのだが、意外や意外率先して動いてくれたのがローザリッテ様率いる風紀員が動いてくれたのだ。
可愛そうな目にあった貴族の子としてだけどね。
「あ、あの・・・・。イッセイ様。久しぶりですね。」
話しかけてきたのは、オドオドした様子で話しかけてきたのは・・・
「ローザリッテ様。ご無沙汰しております。」
「あ、あぅ・・・・。」
理由はどうあれこちらの為に動いてくれた事は大きい。
そのため一度お礼をしたいと思っていたが、風紀員は多忙だ。
学園の秩序は風紀員が担っていると言ってもいい程に実行部隊として一番稼働率が高い。
そのため、ここ1ヶ月はお互いにタイミングも悪く挨拶も出来なかったのだ・・・
ローゼリッテ様は顔を赤くしたまま下を向いてしまった。
俺、何か悪い事でもしたっけ?
「はははっ。イッセイ=ラ=シェルバルトよ。この度は大変だったな。」
続いて話しかけてきたのは、外国のコミックみたいな逆三角形の爽やか(将来)イケメンになるだろう男の子。
侯爵家のアレク様だ。この人も風紀員に属している。
あと1人居るには居るが王都魔導研究所に行っているので春からは見ていない。
皆も名前を呼ばないのでスッカリ忘れている。
まぁ、今はいい。
で、彼も俺が拐われたと勘違いしている1人で特に慰める感じで俺に接してくる。
だからいつも思う。
まぁ良いですけど、友達でも無いのに背中をバンバン叩くのは止めていただきたい。そして、その守ってやってる感を出してくるのはちょっとウザいです。
っと。
まぁ、そんなこんなで彼等に助けられている所は多いのだが、これも大きかったと思う。
それは、皆の勉強を手伝う様になったからだ。
1年目が一般教養中心だったのと違い学園の授業も2年目から専門性が増し一層難しさを増していた。
そのため、(俺以外の)皆は四苦八苦していたのだ。
俺が苦労しなかったのには意外にも前の世界で学んだ教養が役に立ったため。ただそれだけ。
(年齢が年齢だけに算数は小学生程度だし、文字の書き取りに伝記の朗読。騎士道なんてのもあったがこれは道徳だった。この程度、元17歳からすればなんて事はない。)
そう言った勉強の知識があったから他の子も近づいて来ることが多かった。
もっとも優秀で【勇者】特性の強い皆は元々努力家も多い。ちょっと勉強のコツ等を伝授したら割とすぐに覚えてしまう。
そう言ったコツを教える事で、俺はクラスに打ち解けられたのだ。
「おうイッセイ。また勉強教えてくれよな。」
はいはい。
「イッセイ君ここ教えて。」
はいはいはい。
「イッセイ勉強。」、「イッセイ君勉強。」・・・
あれ? 勉強の事しか聞いてこない?
まぁ、そんな事があったりしたものだ。
こんな程度のやり取りだけなら早く冒険に出たほうが良いと言う人も居ると思うが、この学園に居る最大のメリットはここからだ。
学園には修練と言う名の【勇者】特性を発現、または強化する授業がある。(簡単に言えば体育な訳だが)
皆はその授業に参加し、玉よけ修練や索敵修練等基礎に近い訓練をしていた。が、俺とエリーはそっちの楽しそう・・・もとい基礎修練は免除だ。
俺達はレベルも経験も他の子に比べて高い。
その為、事情を知っているスペシャリストが俺達の専用の教師として着いていた。
「さて、エリー。そろそろ行こうか?」
「・・・うん。」
「2人共頑張ってね。」
「「ありがとう。ソフィー。」」
冒険者の時の格好に着替えて指定の場所へと足を進める。
皆には、遅れを取り戻す分、ちょっとした手伝いをさせられている。と言ってある。
この学園で俺達の事情を知っているのは、担任と例のスペシャリストの学園長位だ。
全ギルドメンバーの母。
ギルドクラスは【7】で上から数えると2番目の位置にある。(と言っても1番は500年前いた勇者の事を称えて呼んでる感があるから実質は1番かな。)
そんな、大物に稽古を付けて貰えるのは幸運だ。と言う人も居るかもしれないが、このババア本当にガチのバケモノだ。
最初はただの打ち込みだけの筈(棒もその辺に落ちている木の枝みたいな物を拾ってきた。)が、コッチが打ち込みを始めると殺気で近寄らせない様にしてきたり、いざ打ち込んだら謎の力でこっちの体力を減らしてくるとか、とんだ嫌がらせを受けた。
初日なんてまともに棒に触れる事も出来ずに終わった。
その時からどんだけバケモノなんだと思った。
そんな人との修練が2日に1回の割合で行われており。休まず継続して続けてる。
ちなみに今回が16回目。
流石に数回もこなしてくるとバケモノババアの謎パワーも驚異に感じなくなってきた。
だが、入り口に入ったとも思えない。
メイヤード様はまだあの日あの場所で適当に拾った棒をずっと持って戦っている。
今の目標はあの適当に拾った棒をいかにしてへし折ってっやるか。って事が目標だ。
「今日こそは目にもの見せてやる。」
俺は軽く意気込んだ。
・・・
「ハァァァァァァ!」
エリーは魔法でメイヤード様の足に木を絡ませ。
風魔法で足裏にブーストし音速を超えた速度で斬り込む。
突剣(エストック系)のため突き主体の攻撃に払いや斬りつけなども交ぜていた。
普段ならば魔法によりブーストされたこの攻撃をかわせる相手はそうはいない。
だが、そこは流石7クラス、尋常じゃない。
スウェーとダッキングでエリーの攻撃をかわしていた。
マジかよ・・・。
パターン化してきたエリーの剣を一撃で簡単に捌くといつの間にか魔法から抜けていた足で、鳩尾辺りを蹴る。その間、数秒。
−−バシン・・・ドンッ。
蹴られたエリーは、吹っ飛んでいく。
エリーもなかなかだ。蹴られた攻撃は直撃ではなくしっかりと腕でガードしていたようだ。
「脇が甘いんじゃ。」
「どっちが!!」
続けて俺の番。
吹っ飛ぶエリーに向けてセティの風の塊を投げたので、上手くクッションに使ってくれる筈だ。直ぐに戦線に復帰するだろう。
俺は自身の体の周りに具現化させた岩玉(最近出来るようになった。)をメイヤード様目掛けて飛ばす。
イメージは黒○げゲームにみたいに四方八方から一気にメイヤード様目掛けて被弾させる事が目的だ。
あわよくば何処かを固定させたい。
「いけ!」
俺の意志のもと作った岩が自在に飛んでいく。
キュンキュン動く様は、○ァンネルみたいだった。
「そこだ!!」
岩同士を衝突させる。
衝突で出来た砂煙がメイヤード様を包んだ。
「甘いのはそっちがじゃな。」
「なっ!?」
ーーブォン。
いつの間にか俺の後ろに回り込んでいた。メイヤード様の横なぎは俺の肩辺りを的確に捉えていた。
だが、まだだ。
ヘイケを肩当てに変えてメイヤード様の攻撃を防ぐ。
−−バキィ!!
つもりがあっさりとヘイケを砕かれてしまった。
倒れた俺に棒を突き付けてくるメイヤード様。
「今日はここまでかね。」
突き付けていた棒を下げた。
「お前ら別々のタイミングで行動しすぎなんじゃよ。」
地面に横たわる俺を見下ろしたメイヤード様が呟く。
どんだけ強えんだよこのババア!?
俺達がいくつかのパターンで攻撃していても汗1つ掻かずにいなしていた。
思わず、チートか? これがチートなのか。
と、叫んでしまったよ。
力の差はそれ位に離れておりまだ足下も見えていない。
「あれ以上タイミングが被ったらエリーに当たって・・・「かー!!」」
うっせぇ!! いきなりでかい声出すなー! 子供の耳はデリケートなんだぞ。
「たわけ。いちいちそんな事を考えて戦ってたらお前はいつか多くの仲間を殺すよ。」
メイヤード様は俺を見てそう言った。
「当たったんなら避けれないエリーが悪いし、そもそも当たらんようにするのがあんたの仕事さね。エリーが私に打ち込まれた時点であんた等の負けが決定してたんだよ。」
くっ、確かにそうかもしれない。
俺は、ガックリ項垂れる。
それをメイヤード様は笑って見てた。
クソババア覚えてろよ!!
カーン。カーン。カーン・・・。
「ふむ。そろそろ授業が終わるな。では本日はここまでさね。はい、解散。」
「「あっ、ありがとうございました・・・。」」
たっぷりと絞られた俺達。
フラフラになりながら教室へと帰る。
「くっそー。あの棒位は折りたいな。」
「ふふっ。」
「え? 何、なんで笑うの?」
「やっぱり。イッセイは男の子だなぁって、思ったの。」
「ふーん。でも、エリー。次は折るからねあの棒。僕の攻撃が当たるかもしれないけどそのつもりでいてね。」
「もちろん。そうして、手を抜いて戦える相手じゃないと改めて理解したわ。」
エリーも気合十分といった感じで言いながらも嬉しそうなのが気になった。
次回はもっと上手立ち回ってやってやろう。
・・・メイヤード視点。
歩きはフラフラの癖に目が死んで無いというか、未だにこっちに闘気を剥き出しで来てると言うか・・・。
忘れかけていた闘争心に再び火を付けるようなギラギラした感じが良いわい。
「やれやれ。もうこんなに力を付けてきたのかい。」
メイヤードの持つ棒がボロリと折れた。
エリーの剣とイッセイの投具はしっかりとメイヤードにダメージを与えていたのだ。
「どうだい? あいつ等半端無いじゃろ?」
「・・・・。」
「あいつ等と肩を並べたいならこれまでのは遊びみたいなもんじゃろ。の?」
「・・・。」
1つ影がメイヤードの前から走り去っていった。
やれやれ。イッセイとエリーが来る前から面倒見ておるが世話のかかる。じゃがこれで奴も少しは焦るじゃろうて、それよりも・・・。
メイヤードは折れた棒を拾いながら呟く。
「こやつらの方は少しだけ真面目に戦ってやろうかね。」
2人の知らないところで修行の厳しさが増した瞬間だった。
お読みいただきましてありがとうございます。
次話投稿は火曜日を予定しております。
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