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【書き直し中】好きな子を追いかけたら、着いたのは異世界でした。  作者: 縁側の主
一部 二章 森を護りし一族と亜人の勇者
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SS 俺の名はゴドー。

 俺の名前はゴドー。とある高家の召使いをしている。


 召使いと言えばクライアントに付き従い。行動を共にすることが多いのだが俺は違う。

 俺は狩猟が得意なのでクライアントから頼まれた獲物(食材)をよく狩りに行っている。

 口数も少なく、目つきも悪いので当たり前と言えば当たり前なのだが・・・。

 更に俺にはもう一つ仕事がある。夜も闇夜に紛れて仕事をこなす時がある。

 特に今日のような寒い日は俺に依頼をして来ることが多い。

 俺は金さえ払って貰えれば決してNOとは言わない。


 そして、必ず仕事を完遂する男なのだ。


 時に今日も俺は夜の仕事に出ている。

 妙に冷えると思ったら雪がチラついて来やがった。

 だが、俺にとっては好都合だ。白く積もった雪は身を隠すには1番いい。

 今日はツイているようだ。


 地面に体をこすりつけ、息を潜める。

 そして確実にターゲットに近づく。

 ターゲットに近づいたら一気に仕留める。


 これが俺の仕事だ。


 一見簡単そうに見えるがこのミッションは誰にも見つかってはいけない。

 そして、俺がここに来た根拠も残してはいけない。

 全ては闇の中。一瞬たりとも表に立ってはいけないのだ。


 むっ!?


 ザッザッザッ・・・


 何かが近づいてきたようだ。

 このままでは見つかってしまう。


 だが、プロは慌てない。

 俺は身を低くして兵士たちをやり過ごす。


「・・・。 ちっ、・・・ついてねえや雪が降ってきやがった。」

「道理で寒い訳だ。早く終わらせて一杯やるか。」

「おっ。良いな。」


 見張りの兵が俺の近くを通っていった。

 奴等はどうやら今日は見張りを止めるらしい。

 帰りのルートとして使うには良いかもしれん。候補に入れておこう。


 城壁に背中を預ける。


 今日のターゲットはこの城の中だ。

 先日 細部まで確認した地図を見ると、確かこの辺に・・・


 ガコッ。


 沈む石を押し込む。すると城壁の一部は扉状に型が外れると奥へとスライドしていった。


 潜入成功。


 開けた扉は元に戻しておく。

 幾らか雪が吹き込んだが場内は倉庫だ。

 この時間から人が来る事も無いだろう。

 体に付いた雪を払いのけ中にはいる。

 特殊な服装のおかげで汚れは直ぐに除去される。

 パラパラと下に落ちた汚れは蹴って見えない所に飛ばしておいた。


 即座に次の行動に移る。


 倉庫を抜けるとそこは調理場だった。

 基本的に不夜城である城では必ず誰かが何かの仕事をしている。

 今は調理人の2人組が夜勤の使用人や兵士たちの夜食を作っているようだ。


 なるほど。今日の献立はソーセージとシチューかなかなか美味い。


 マズい!! 料理に気を取られていたら調理人の1人がこっちに近づいてきた。


 だが、プロは慌てない。

 口に入った食べ物をごくんと飲み干すと気配を消すため物陰でやり過ごした。


「・・・。 あれ? ここにあったソーセージが無いぞ。つまみ食いしたな?」

「いや。俺じゃねーよ。さっき見張りの奴らが酒あてを探してたから持って行っちまったんじゃねーのか。」

「ったく。あいつ等としょうがねーな。ここに置いて有るのは手を出すなって言ってんだろーが。」


 ブツブツとグチを溢しながら自分の持ち場へと戻って行く調理師達。


 俺くらい超一流になるとつまみ食いしてもバレないのだ。

 あの兵士達も仕事をサボっていたようだしいい薬だろう。

 調理場を後にすると城の中庭へとたどり着く。


 中庭の近くでは侍女達が色々な準備のため忙しなく動き回っていた。


 ふむ。ルートを変えるか。


 決して危ない道を通らない。

 これがプロのこだわりだ。


 俺はきた道を戻ろうとするが、後ろからも人の気配を感じる。



 絶体絶命だ。


「・・・ほらあんたたち。忙しんだキリキリ行くよ。」

「「「「はい。」」」」


 だが、プロは慌てない。

 俺は通路の脇からジャンプし天井の装飾に捕まるとそのまま逆上がりの原理で屋根の上に乗る。


 上手くかわせたようだ。

 このまま上を通って行けば目的地までは一気に短縮出来るだろう。



 ゴーン、ゴーン


 鐘の音がなってしまった。

 今回のミッションは時間制限があるのが面倒だ。



 だが、プロは慌てない。

 後はこのまま屋根伝いに登っていけば良いだけだ。


 最終目標は右奥に見えるお城の角部屋だ。

 あそこにターゲットが居る。



 キィ・・・パタン。


 部屋に入る。

 ターゲットはぐっすりと眠っていた。

 かわいい寝顔だが、プロは慌てない。



 ターゲットにゆっくりと近づく。


「・・・。」


 枕元に荷物を置く。


「メリー・クリスマス。」



 俺は城を後にした。







 ・・・その頃城では・・・


「はぁ~。この忙しいのに困るわ・・・。」

「うん?」

「ゴルドーさん。」

「あぁ・・・・。」

「あの格好でウロウロする場合、無視するルールだかなんだか知らないけど面倒なのよね・・・。」

「あぁ。俺たちも怪しい人物が居るって言うので非番なのに出る羽目になったしな・・・。」

「仕方ないだろう・・・。あの日、年末の忙しいあの日に手紙を送って来た辺境伯のお子さんがその格好を指定したのが王都内で流行っちまったんだから。」

「我々も毎回眼の前でつまみ食いされるんですよ・・・。」

「頭に来たから鐘を鳴らす時間を早めてやったわ。」

「「ナイスー。」」

「でもさあの赤い服は無いわよ。」

「まぁ、目立つからな。」

「名前がまがまがしいんだよなぁ。」

「サタン・クロスだっけ?」

「そうそうそんな感じ。」

「でも国庫は潤ってるんでしょ?」

「まぁ基本夜間作業だしな・・・。」

「儲かるから余計に止めてと言えないのが辛いわよね・・・。」

「だな。」


「「「はぁ・・・。」」」


 ・・・


「ふははははっ。今度は誰の家だ~」


 配達人の夜は長い。

お読みいただきましてありがとうございます。


クリスマス企画としまして書きましたが、時系列ではクリスマスの後日談てき扱いになります。

どうやら異世界ではクリスマスと言う配達やさんが出来たみたいです。

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