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【書き直し中】好きな子を追いかけたら、着いたのは異世界でした。  作者: 縁側の主
一部 二章 森を護りし一族と亜人の勇者
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55話 魔闘技とツギハギモンスター

「そうだ。姫さん案外、筋がイイね」

「いえ。お姉さま…いや、師匠ありがとうございます」

「し…。ごめん姫さんもう一回言ってくれないか」

「お姉さま?」

「そっちじゃない」

「師匠」

「そう! それ、師匠」

「あの…。ダメですか?」

「全然良いよ。寧ろその呼び方でいこうか、エリー」

「ハイ。師匠」


「…なーに、あれ?」

「…さぁ。何でしょうか」


 リリコさんとエリーがスポ根漫画みたいな事をして遊んでいた。

 何でこうなったのかギルさんに聞かれたが、こっちが知りたい位だ…。

 待って、ギルさん。そんな心配そうな目で俺を見ないで、別に俺はエリーのお目付け役でもなんでも無いですよ…。


 で、話を戻すとどうやらエリーはリリコさんに弟子入りしたようだ。

 確かにさっきからエリーが見様見真似でリリコさんの戦い方を真似しているのは知っていた。でも、でもさぁ。魔道士タイプのエリーに接近戦がメインになることは無いでしょ。なのでその…あんまり意味ないって言うか、もうちょっと違う戦い方が有るんじゃなかろうかと思うなぁ…。

 と、心のなかでそう思いながらもぎこちない師弟を見守る。


「じ、じゃ…。私の『魔闘技』についてせ、説明す、す、すすすするぞ…」


 恥ずかしいのかエリーの顔を何度もチラチラみながらカミカミで話すリリコさん。

 下手くそかよ…。緊張してガチガチになってるじゃん。


 しかし、魔闘技か…。リリコさんも実は戦闘系の勇者じゃない事は聞いている。

 あの人、斧を振り回している癖に得意な魔法は土系で、振り回している斧も自分の土魔法で作った()なんだそうだ。そう言われると確かに何処か無骨な部分がある。本人曰くワンポイントなんだそうだが。うっせーよ。


 話は、戻すが体の三倍はありそうな斧を片手で振り回し、更にあの動きはチートだろ? って思うほど恐ろしく早い動きをする。

 どうやら、魔闘技は『力、技、速さ』3つを爆発的に向上させる効果があるようだ。


 あれこれとエリーに説明をしている姿を見ていると、ふとリリコさんの動きに魔力が付いて動いているのに気づいた。

 真似をすると徐々に魔力の動きがまとえてきて……こう、か?


 一瞬だけ体が軽くなった様な感覚があったが直ぐに元に戻った。体に巡らせる魔力のコントロールが難しい。

 遠くから見様見真似で遊んでいると、


「気になるのか?」

「うぉ!? ビックリした。叔父さんいつの間に近づいてきたんですか!」


 叔父さんはいつの間にか俺の隣に居て、いきなり話し掛けてきたから思わずビックリした。


「ずっと居たがあの戦い方を真似してて気付かなかったんだろ」


 そんなに集中していたのだろうか…。

 ぐうの音も出せずに居ると、


「ワシも心得があるが知りたいか?」


 叔父さんが勝ち誇った笑みを見せてきた。



 ・・・


「魔力を体内に循環させるイメージだ。体中をグルグル回るようにだぞ」


 叔父さんに魔闘技を習い数回戦闘をこなすと、魔闘技の初歩『魔力を体内で循環させる事』って言うのが何となく理解出来てきた。

 教えてもらった説明と自分の感覚を照らし合わせると魔力を血や筋肉や神経等に置き換え、体全体を巡るイメージをこなせば体に新しい細胞と言うか肉の鎧を纏っている感覚を覚えた。頭の中で肉襦袢(にくじばん)を着るイメージが湧く。


 イメージが固まれば後は楽だった。体に出来てきた魔力の『疑似筋肉』に身体の動きを補助させると、疑似筋肉達は勝手に必要な箇所に回り力を補助してくれる。

 当然、最初は補助出来る力が少ないため体に負担が掛かるが疑似筋肉達はそれを記憶し、次回には欠点の箇所を補ってくれる。いわば学習用AIの様な働きをしてくれるのだ。『オーラ』を纏ったように見えるのは疑似筋肉が視覚化しているのだ。


 なるほど。リリコさんや叔父さんの身体から出ていたのはこれか。


 さらにこの疑似筋肉は成長する様だ。

 本物の筋肉等と一緒でどんどん成長していく様だ。


「どうだ? …ん? ほぅ、大分馴染んできたか」


 俺がオーラを纏い始めたのが見えたのかもしれない。

 叔父さんはドルイドを切り伏せながら俺を見て目を細めた。よそ見しながら倒すって器用っすね。


「使っていて違和感は無くなってきました。が、定着が難しい…です…」


 魔力を使えば良いってもんじゃないのが面倒だ。

 必要に応じ力を入れる箇所に魔力を流す感じが必要になる。


「ーーまぁ、普通ここまで短期間で使える技ではないからな」

「?」


 叔父さんが何か言っていたが上手く聞こえなかった。ま、いいか。


 魔力は体内で作られるとはいえ体の器官に通すと体内では違和感を感じていた。棘が刺さっているかの如く、異物感が全身を駆け巡る。

 エリーも魔力の循環で手間取っている様で顔色を青くしながら口元を押えていた。


「違和感が無くなれば後は育てるだけだ。なるべく魔力を使いながら体を…動かせ」


 叔父さんはそう言うと足元でモゾモゾしていたドルイドにトドメを刺した。ぶっ刺した後で剣をヒネるタイミングとセリフを被せるんじゃないよ。


「しかし…ハァ、キリがねーな…ハァ」


 ぼやいたのはギルさん。疲れたのか息切れしていた。

 ギルさん。アンタも魔闘技習ったら?


「魔力探査しているのですが直ぐに湧いている様です…」

「それもこれもコイツのせいか…」


 ギルさんが自由気ままに生えている世界樹の根っこをポンポン叩く。

 ギルさんの調べた結果、色々分かったのだが世界樹は成長の度に一度枯れてから再生させているらしいのだ。そして、その莫大なエネルギーの循環場所がこの場所の様で、アンデットモンスターは世界樹の再生の力が働く度に再生させられている様だ。

 エルフ族が罪人をここに閉じ込める理由が分かったが死して尚安らげないのは中々にエグい話である。


「ま、死んだら俺達も仲間入りするんだけどね」


「「………」」

「縁起でもない事言うんじゃねー」


 全くだ。ギルさんは意外に空気の読めない子なのか? フラグだぞ。

 しかし、真に悪趣味なのは、わざわざこの場所に仕掛けを作った外来種共である。どうやらボールズがこの場所送りの人を決めていた様なのでこの現象(・・・・)に気付いており利用した可能性は十分に高い。

 相当昔からその儀式を行っていたようでモンスターの中には苔のような物やキノコが生えていたのも居た。

 どれだけ昔から行われていたのか考えるだけでも悍ましい……。


「何か居るな…」


 叔父さんが言う。

 もちろん。俺とギルさんも見られているのは気づいていて既に周囲を警戒している。

 俺は魔力探査しているが探査に引っかからなかった。

 それでもさっきから常に人に見られている感覚を感じる。


「ゲヘ…ガヘ…グゲエヘヘヘヘッ」


 声だけが聞こえてきたが姿は見えない。

 それに今までとは違う何かを感じた。


「これは、ドルイドや歩く死人だけじゃ無さそうだな」


 魔力探査をかけていたギルさんが辺りを見ながらポツリと呟く。やはり、ギルさんでも状況を把握できていないようだ。リリコさんとエリーも呼んで周囲状況を確認する。


 重々しい空気が流れ、何かが居る(・・)気配が濃くなってきた。

 敵は間違いなくこちらに気づいていて、近づいてきている。


「ふしゅるるるるるるる…」

「敵だ近いぞ」

「ギルさん。僕が先に仕掛けます」

「おぉよ。バックアップはまかせとけ」


 聞こえてくる不気味な声がドンドン近くなってきていたが、奥に見える世界樹の根っこの部分からシルエットが見えていた。俺は奇襲を掛けるべくギルさんに声を掛るとギルさんは了承してくれた。


 俺とギルさんは徐々に大きくなるシルエットに注視する。

 少しづつ近づくにつれ嫌な感覚が大きくなっていくが、息をのみタイミングをジッと待っていた。


「今だ……っが」


 角に姿が見えそうな所。ジャストなタイミングで攻撃する予定だったが、


 --キィィンンンンンンンンンンン


 頭の中をかき回す頭痛がする。


「…うっ、気持ち悪い」


 俺がまず最初に気づいのだが、ギルさんも数秒も変わらず頭を抑えた。


「大丈夫か!」


 叔父さんが俺の肩を掴んで聞いてくるが頭が割れそうな位痛い。

 正直触らないでほしいので、叔父さんの手をぞんざいに振りほどいた。

 って言うか、何で君たちは大丈夫なのさ…。


「魔力を使って奴を狙うのは止めろ」


 ヴィルがそう叫んでいた。

 攻撃する意思を無くすとどういう訳か頭痛が弱まっていった。


「大丈夫か?」

「…すいません。油断しました」


 叔父さんが再度肩を掴んで言ってきた。

 少々頭がぼーっとするが俺はなんとか返事を返せた。ギルさんを見るとリリコさんとエリーに介抱されていた。


「警戒しろ」


 ヴィルが叫んだ。

 一同が警戒すると、三匹の気味の悪いモンスターが立っていた。

 その三匹は見た感じが特徴的だった。


 小さい…と言っても中型の犬ほどの大きさが一匹。頭が大きく黒目がちで俯きながらこちらを見て「ゲヘゲヘ」と言いながら肩を頻繁に回していた。

 続いて中位の一匹。150~170位の背丈で腕を下に垂らしておりポケッ○の中の戦争に出てくるハイゴ○ク並に長く。指と爪が突き出していた。

 最後に大きいのが一匹。3mはありそうな大きな体でおとぎ話の鬼の様な出で立ちをしている。金棒を持っており。当然体の色は真っ赤だ。


 個別の見た目は大体こんな感じだが、何より共通の見た目が気になる。

 皆、あちこち継ぎ接ぎだらけなのだ。体の一部が継ぎ接ぎによる延長やカットを行われており…どうやら。


「改造されている…のか…」

「どうやらその様だな」


 俺がぼやいた事を叔父さんが拾った。


「気をつけろコイツラから何も感じねぇ」


「キイイイイイイイシェエエエエエエ」

「ゴオオオオオオオオオオ」

「…(シュラン)」(手の爪を地面に擦り付けた)


 ヴィルが言うと同時に目の前の三匹は、こちらを敵と認識したらしい。

 三匹はこちらに向かって襲いかかってきた。


 ・・・


 体の大きいモンスターは、リリコさんが相手していた。一番強そうって事なの譲ってほしいと言われたからだ。


 因みに他の二匹は叔父さんとギルさんが中型モンスターを、俺とエリーは小型モンスターを既に抹殺済みだ。魔力が使えなくする謎の電波攻撃さえなんとかすればここに居た『歩く死人』とあまり強さは変わらなかった。


 その魔力を使えなくするのは小型のモンスターの技だった。

 奴は脳波コントロールで魔力を使う人に干渉し頭痛を起していたのだ。


 え? 何でそんな重要なやつの戦闘シーンが無いのか、ですって?


 ・・・ちーん_(꒪ཀ꒪」∠)_


 ゔぃ、ヴィルが悪いんです。僕は戦いたいって思っていたんです。エリーと連携して新技である魔闘技を駆使して「ふっ、お前も強敵(トモ)だった」的な事を言いたかったんです。(いや、今のは別にどうでも良いんですが…)

 何れにしても折角なので魔闘技を使って接近戦を学ぶいいチャンスだと思っていたんです。


 そ、い、つ、を、ヴィル、が、一太刀で、終わらせ、なければ、ねぇ…。


 結論を言うとヴィルが小柄なモンスターを一太刀で斬った。

 俺が魔闘技を使おうとして頭痛が走った。どうやらこのモンスターは頭痛で動けなくなった者を襲う様にプログラムされているようで真っ先に俺を狙いに来たのだ。

 で、俺の体に近づくことも出来ずにヴィルの一太刀で真っ二つ。終了です。

 因みにハ○ゴックこと中型モンスターはヴィルが小型モンスターを斬った事で魔力が使えるようになり叔父さんとギルさんの連携であっさり倒されていた。

 特に問題はなかったが、叔父さんがモンスターの体液を被ってしまい只今それを落とすために一時離脱している。心配なので様子を見に行こうとしたらギルさんに止めておけと言われたので、戻ってくるまで待つことにした。


 それで、話を戻すと…

 大きなモンスターはリリコさん目掛けて金棒を振り下ろされている所だった。


 --ズズン。


 金棒を持ち上げると世界樹の根っこと『歩く死人』やドルイドがペシャンコになっていたが、リリコさんのペシャンコは無かった。


「うらあああああああ。く、た、ば、れ~!」


 いつの間にか上に居たリリコさんは、大きなモンスターの頭上に居て自慢のお手製斧を振り被っていた。


 --ドズン。


 大型モンスターの頭にリリコさんの斧が突き刺さり上半身を半分に斬り裂く。

 バナナの皮を剥いたように綺麗に裂けていた。


「おぉー。倒した…」

「師匠。流石です…」

「いや、こっからだ」


 俺たちがリリコさんを褒めていたが、ギルさんが疲れた顔をしていた。



 --ドシュ…


 突然、死体から緑色の液体が吹き出し、リリコさんは液体を被った。


「ぷふぁ。な、なにこれ…クッサ!!」


 どうやらモンスターは何か特殊な液体で動いたいたらしい。

 そして、叔父さんも同じ液体を被ってしまった様だ。


「あぁー。くっそ。このベトベトは何とかならねぇのか!?」

「確かに何かムズムズすんのよね。これ」


 絡みつくベトベトを拭い捨てるように手を払う叔父さんとリリコさん。

 2人にくっついているのはあのさっきのモンスターの体液だ。さっき殺した際に爆発してたしな…。イタチの最後っ屁ってやつだ。恐らく毒性だろうなぁ。

 だが、叔父さんが襲撃されたタイミングで関係者に毒耐性つきのアクセサリーを配布済みのため毒もそんなに驚異ではないし、最悪エリクシールがある。


 前衛はこういうそんな役回りが多いよね。


「おい。これ、取ってくれよ」


 叔父さんが俺の方に近寄ってきたがドブの臭いに少し古い水の臭いが混じったような、複合的にくさい臭いがした。


「うわっ。く、クサ!! ちょっと、近寄って来ないで!!」


 俺は、急いでアクアを呼び出した。

修正済み


お読み頂きましてありがとうございます。

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