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【書き直し中】好きな子を追いかけたら、着いたのは異世界でした。  作者: 縁側の主
一部 二章 森を護りし一族と亜人の勇者
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53話 立ち直りの報酬はミートキメラ


『私を殺したのはお前だ!!』

「ち、違う…」


 口から血を流す短髪の男が俺に向かって、怨嗟の言葉を口にする。やめろ…。俺じゃない。


『見ろここにお前が刺した物が刺さってるだろ?』


 目や鼻や頭から血を流すボールズが笑みを浮かべながら自分の胸の辺りを指さした。

 見ちゃダメだ。分かっていても視線がどんどん胸の辺りに下がっていく……。


 ボールズの胸から剣が生えておりその剣を握っていたのは俺の手だった。


「うわあああああああああああああああああ」


 ガバッ。っと身を起こすと強い木の匂いがした。その匂いを嗅いで焦って呼吸していたのが徐々に落ち着いてきた。

 チュンチュンと鳥のさえずる声が聞こえる。

 徐々に気持ちを落ち着ちついてくるとここがエルフの里だと理解してきた。


「また、同じ夢か……」


 外来種のボールズ屠ってから数日経ったが俺は毎夜ボールズを殺した悪夢にうなされて過ごしていた。

 必ず見る夢は真っ暗い世界の中でボールズが倒れている。それを俺がじっと見ているのだ。

 次第に死体から血が広がってきて、死んだはずのボールズが起き上がり俺に向かって歩いてくる。

 そして、最後は奴に剣を突き立てている自分を見て、目を覚ます。


「ハァ、ハァ…。アツツ…」


 偏頭痛がする。


 今日は、30分は寝れたか…?


 起き上がると体中ベットリと汗を搔いていた。


 コンコンコン…。


「…はい」


 部屋の扉がノックされた。


「イッセイ様。起きてますか」

「起きてます」


 相部屋だった叔父さんは今はいない。治療のために場所を移されたので、今は俺一人部屋だ。

 その為、うなされていても誰にも気付かれずにすんでいた。


「イッセイ様。エリシード陛……様と会う時間です」


 へいさまって何だよ。って言いたくなるがそうも言えない。エリシード王は先日、王職を退位した。

 理由は『代が長続きすると周りが見えなくなるから』との事だったが、体に不自由を負ったためで有る事を俺は知っていた。

 だが、カリスマ性の高いエリシード様を兵士さん達は未だに陛下と呼ぶ。


「はい。今行きます」


 窓越しに兵士さんが用件を伝えてくる。何事だと思ったが、


 おっ、もうそんな時間か?


 俺は精霊の皆に力を借りてエリシード王の容態を見ているのだ。エルフ族は精霊と相性が良いらしく重篤だったエリシード様は数日で意識を回復出来た。

 本来こんな事をする必要は全く無いのだが、俺の中では巻き込んでしまったと言う感じが強い。その為、通っているのは完全に勝手にやってる(・・・・・・・)罪滅ぼしだ。


「お待たせしました」


 着替えて部屋の外に出る。俺の顔色を見た兵士さんがポツリと呟いた。


「本日もダメでしたか…」

「あっ、そんなにひどい顔してます?」

「えぇ。かなり……」


 そんなにひどい顔をしているのだろうか? 鏡を見てないので良く分からない。

 とは言えエリシード様の前に出るのにその顔では不味そうな雰囲気だ。

 兵士さんから貰った肌に塗る薬(ファンデーションやおしろいみたいな物)を塗った。


「まぁ、これで何とかなるでしょう。なるべく普通に務めるようにします」

「ありがとうございます。では、こちらです」


 俺の状態を知っている兵士さんだ。心配してくれている。「酷い、酷い」言われると気になるが、そんなに酷いかなぁ?


 顔を弄って見たがよく分からなかった。



 ・・・



 コンコンコン…。


「イッセイ様のお着きです」

「入って貰って」


 部屋の中から女性の声がした。エレンハイムさんの声だ。エレンハイムさんはエリシード様の介護を続けている唯一の人だ。他の人たちは良く知らない。風の噂じゃ投獄された様だが別にどうでもいい話だ。


 兵士さんが扉を開けてくれた。

 俺は中に入ると見慣れた部屋の風景が広がった。

 元里の王と言う割に玉座の間にあるような重厚な扉も無ければ、部屋の大きさも庶民と同等の部屋だ。しかも部屋も里の端の方にある小部屋だ。

 元王に何たる仕打ちか! と、言われそうだが、断ったのはエレンハイムさんらしい。

 以前からエリシード様は隠居したらこの部屋で住みたいと言っていたらしい。それを知っていたエレンハイムさんが手配したんだそうだ。

「この人が結婚当初に話してくれたのがその事でね。王妃なら皆知ってる話だよ」って教えてくれた。


 部屋にはベットで寝ているエリシード様が俺に気付き手を上げる。まだ体力も回復していないのでヨロヨロした感じだけど手が上げれるまでには回復した。

 俺は精霊の皆を呼ぶとエレンハイムさんにも挨拶する。


「遅くなりました…」

「良いんだよ。こちらは助けて貰ってばかりだ」

「さて、早速治療…「今日は、少し話そうか?」」


 エリシード様がそう言うとエレンハイムさんに目配せした。合図に頷くとエレンハイムさんが静かに席を立ち上がって部屋を出ていった。


 エレンハイムさんのすれ違いざまに肩に置かれた事が妙に重く感じた。

 扉が閉まるのを確認してからエリシード様は静かに語りだした。


「やっ。イッセイくん。変わりはないかい?」

「はい…。この度はエリシード王に多大な…「ストップ。私はもう王じゃないし、君が居なければボールズはもっと被害を出していたと思うよ」」


 王の時とは180°変わった対応が返ってくる。

 話し方も重圧をかけてくる感じもなく、幼気な容姿から青年が喋っている様でもあった。


「いえ…そんな事は」


 俺はエリシード様から目を反らす。

 何かあったと言う質問の後でエリシード様の目を見るのが怖かったからだ。


「ふむ。思った以上に重症だね。

 …こんな事を言って納得出来るか別にして一応聞いてくれるかな?」


 エリシード様の言葉にかろうじて頷くことが出来た。エリシード様が息を吐いてから話し出す。


「ふぅ、…いいかい。君は何の関係もない種族のしかも身内のゴタゴタに巻き込まれながら、色々な問題解決してくれた勇者だ。君があそこのあの場に居なかったらエルフは人と戦争をしていた。そうなればお互いに不幸しか生まれなかっただろう」


 優しく微笑む顔は俺の心に深く突き刺さる。屈託のない笑顔は国を思う王の姿だった。


 だが、俺は気が乗らず返事も曖昧に濁していたら。


「そんな心優しい君がボールズの事を気にしてるんじゃないかと思ってね」

「!!」


 図星を付かれた。


「やはりか……」


 エリシード様は、ただ申し訳なさそうに俯き目を瞑る。誰かに話したいが話す相手が居ないし、話すような内容でも無い。

 ギルドに所属する冒険者にもランクが上がると人を殺すカリキュラムが用意してある。

 クラスも3〜4に上がる際、試験内容に『盗賊団を討伐する』というのがあって、ここで大体の冒険者は童貞/処女(初めての殺人)を捨てる。

 これはあんにそこそこの実力があり数が多い敵を相手するから起こる事故の様なもので、依頼自体はデッドオアアライブである。

 無論、ギルドとしては実力は勿論、人間性や適正(殺人)を図るために出される依頼であり。生け捕りの方が報酬が良いのだ。

 そんな事がありーの俺は人殺しが嫌なので、この討伐は全員捕縛したと言う訳だ。


 そう思うと、1人くらい殺しておくんだった…

 立ち直るのに暫く時間がかかりそうだ。


「……こんな事を言っても意味があるかどうかは分からないが、言わせてほしい。かつて私も人を殺めたときは震えたよ」


 顔は挙げなかったけど俺は心に引っかかりを覚えた。

 エリシード様の話に興味を持てたのだ。

 そんな俺に気付いたのかエリシード様は話を続けた。


「あれは私が20に行くか行かないかと言う時だ。婚約者と結婚を前に狩りに出かけウッドマウンテンに向かったが、若気の至りでなその婚約者と森の外に出てしまったのだ」


 なんと言うか…、イメージと違った。

 シリアスな話になるかと思ったらバラ色の話だった。

 しかも、長い…。


 触りの部分だけ聞かされるのかと思ったら森を出てからが本番だったようだ。全部聞いていると日が暮れるので話をかい摘むと、森から出た後で姿を隠して人族の街に来たんだそうだ。で、豪遊している所盗賊団に目をつけられ婚約者が拉致された。

 何とか突き止めた先の盗賊団を殺したのが脱童貞だったそうだ。愛する人を守るためとは言え初の殺人に手は震え、吐き気を催し苦しんだそうだ。今で言うPTSDを発症したのだろう。

 そして、その時自分には話を聞いて理解してくれる婚約者がいた事が、立ち直りのきっかけになったと教えてくれた。


「私で良ければ話だけでも聞くぞ」


 との事だった。


 話の内容も非公式ながら一国の王から頭を下げられた様なものだ。普通であればとても名誉な事である。

 それどころか俺のPTSDの癒やしにもなってくれると言ってくれた。

 次の瞬間、俺は我慢していた止めどない感情が溢れ出すのを止める事が出来なかった。


「ごめ"ん"な"ざい"。ぼぐがも"っ"どじっ"がり"じでい"れ"ば…」

「君のせいじゃないよ。誰だってしたくてする訳じゃない。むしろ君は我々の内輪事に巻き込まれただけだ」


 エリシード様は自愛の笑みを向けてくれた。

 だが、俺の涙は止まらなかった。エリシード様の胸を借りる形になってしなったが、ここで流す涙の分だけ体の重みが剥がれていく感覚があった。



 ・・・


 気付くと俺はお菓子の国の様な場所にいた。

 目の前に大きなケーキがあり小人っぽい人だかりがそのケーキの中から出てきた。更に空からはクッキーの雨が降り。川はゼリーで出来ていた。

 久し振りにみた夢みたいな場所に俺は大いに興奮した。そこでは毎日が甘く、何も考えなくても楽しく過ごせる良い場所だった。ケーキに住んでる小人も良い奴らで意味もなくゲラゲラ笑う姿に俺も笑顔になった。

 そんな小人と遊ぶ毎日俺がゼリーの川に飛び込んだら、他のやつも一斉に飛び込んで来て…


 --バチィィイン。


 後頭部に激痛が走った。


「いってぇ!!」


 と、言うところで世界が暗転した。

 頭をさすりながら顔を上げると何故かベットの上に居た。


 って、えぇ!? 何で? ここ何処?


「俺…何で?」


 思考が一瞬停止した。そして、ハッとするとここにもう一人誰かいる。

 一体誰だ? 顔を上げるとそこに鬼…の形相をしたエリーが立っていた。


「うわぁ!?」


 思わず勢いで後ろに下がりベットの縁にぶつかって別途空転がり落ちてしまい。ケツを打ってしまった。


「ケツが割れた…。って、ひぃ」


 鬼の形相のエリーが相変わらず仁王立ちしていたが追い打ちはしてこなかった。


「何時まで寝てるのよ」


 why!? イツマデ?


 ケツを擦りながら辺りを見渡すとスッカリ暗くなっていた。


「あれ? さっきまで朝だったのに…」

「何を言ってるの? 貴方、2日は寝てたのよ」


「へ? えぇー!!」


 どうやらエリシード様の場所でほぼ2日寝ていたようだ。しかし、俺はベットの上には居なかったはずだし、当の御本人もいらっしゃらないけど…


 しかし、何でこの子が起こしに来たのか…。しかもめっちゃ怒ってる。こっちは寝不足で2日寝てたからって。ん? 2日? 


「あぁ………」

「そうね。思い出して頂けだようで! 今更説明の必要はないと思うけど、私普通の民に降りました!」


 あっちゃー。やってしまった。

 エリーが臣籍降下(しんせきこうか)のセレモニーがあり。最後に姫である自分の姿を見せたいと言っていたのだ。


「…ごめんなさい」

「フンッ」


 あかん。この子完全におこですよ。

 その後も何とか許しを請うが結局許される頃には朝日が差しており。結局、寝不足はあまり解消されなかった。


 ・・・


 別の日、改めてエリシード様の元に訪れ話を伺った。

 もちろん。先日のお詫びも兼ねてである。


「本"当"に"イ"ッ"セ"イ"は"気"が利"く"わ"」


 もっしゃ。もっしゃ。と肉を頬張りながら喋っているのはエリーとエレンハイムさん。

 エリーは、またデブになっていた…。

 因みに肉とはミートキメラの事で、この里では作物を食い荒らすモンスターなので、プラントデビルと呼ばれている代物だ。

 お詫びとして朝一で獲ってきたのだ。

 だが、()を覚えた若干2名は嬉々として食べていたが、エリシード様やその周りの兵士さん達はドン引きしている。


 頑として一口も口に付けたがらないエリシード様。

 むぅ。美味いのに…。


「そ、それはそれとして…。イッセイ君。体調はどうかな?」


 エリシード様が車椅子に乗って俺の側まで来た。

 俺が先日の失礼を詫びると「大丈夫だよ」っと、笑ってくれた。


「元の状態を取り戻しつつあります。何かお礼をしたくて肉をお持ちしたのですが…、是非お礼したいのですが僕に何か出来る事はあるでしょうか? 何でも言ってください」


 話を聞いて貰ってからというものよく寝れるようになり、ボールズの死について考えなくなった。

 今回はその御礼も兼ねて美味しい肉を用意したんだけど、雰囲気的に合わなかった様だ。代りに何か出来ることは有るだろか?


「…何でも?」


 エリシード様の目が怪しく光る。

 うっ。何でもってのは言ってはいけない事だったかも。


「できれば僕に出来る範囲でお願いしたいのですが…」

「いや、丁度いい事にイッセイ君に頼みがあってね」


 エリシード様がどこか晴れ晴れとした顔をしていた。

 胸のつかえが取れた様だとも思える。


「…は、はぁ。何でしょうか?」


 相手がこういう顔をした時は大抵こっちが不利な状況に陥っている場合が多い。

 俺は一言一句聞き漏らさないように集中した。何か理不尽な事が言われそうなら全力で逃げよう。

 警戒していたら気付かれた様で。


「そんなに構えなくても大丈夫だよ。レオ王から君はまだ学園の生徒だと聞いてね。話をしたらエリーを留学させてもらえる事になったんだよ」

「はぁ…、ハァ!?」


 いきなり何の話しかと思ったらとんでもない話だった。


「で、私”も”そ”の”学園に”通う”事に”し”た”の”よ”」


 とても大きくなったエリーが俺の背後に立っていた。

 ちょっと離れてくれないかな……近くに来られただけで圧迫感が凄い。


「でも、彼女【勇者】ですよね?」

「だからだよ」


「ヘ?」


 話の意味がわからなかった。

 彼女はエルフ族から出た初の勇者だ。自国にいれば他の国やモンスター等の驚異から守るシンボルになるし、民の栄誉によって称えられるべき存在だ。


 俺は(・・)そう思った。


「エルフの里どころか亜人と呼ばれる者達の中でエリーは初めての勇者になるかもしれないね」

「だったらーー」「エリーがここに居たら王族に祭り上げる輩や排除しようとする輩が出てくるだろう。または出生を疑う輩も出てくるかもしれない。何れにしても8歳の娘を大人の事情に巻き込みたく無いんだ」


 俺も子供なんだけどって思ったけどツッコミはしない。

 エリシード様は疲れた顔をしていたが、体調が良くないのに話しをさせすぎただけじゃ無くエルフの世界にもドロドロした事情がありそうだ。


 エリーって、8歳だったのか…。年上だと思っていたが以外に近かった。


「エリーなら良い同級生になれそうです」

「おぉ。そうーー」「デュフ…。こちらこそ宜しく」


 脂ギッシュになって幅を取るようになったエリーがエリシード様を押しのけて手を出してきた。そのせいでエリシード様が車椅子から落ちそうになる。


 …エリーにミートキメラの肉を与えるのは止めよう。


 そう俺は心に刻み込んだ。



 --ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


「な、何だ!?」


 地響きが起こり足すくむ程の揺れだ。

 エルフの兵士さん達も「おおお」と驚きそこら中で混乱が起きていた。


「地下か…」

「!」


 エリシード様が呟く。その言葉を聞いて反応してしまった。

 俺達の目的でもある地下だこれを期に調べられれば事を荒げる必要もない。

 ならば、その依頼俺が受ければいい。


「エリシード様。地下の調査は僕たちに任せて貰えませんでしょうか?」

「うん? あぁ、いや。これはエルフの問題だからな…」


「実は…」


 俺は事情を話した。

 ボールズが黒幕であった以上、エルフ達と敵対する必要もないし少なからずお世話になったこの里の力にもなりたい。

 そして、何よりここまで混乱を大きくしたボールズ達に関わる何かが地下にある。

 だったら俺たちが行くのが一番良いだろう。


「そうか…あいつ等はそんな所にまで足を伸ばしていたのか…。直ぐに地下への通行を許可してもらえるよう手配しよう」

「ありがとうございます」


 俺は叔父さん達のいる場所へ行くことにした。


お読み頂きましてありがとうございます。

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