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【書き直し中】好きな子を追いかけたら、着いたのは異世界でした。  作者: 縁側の主
一部 二章 森を護りし一族と亜人の勇者
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46話 女勇者ゴリ子?


 世界樹も登り初めて半日を過ぎた頃、木の幹がひときわ太い所を登った所で、気配が大分変わったので奴らが居る場所と思われる。


「…周囲を警戒しろ」


 叔父さんも腰の剣に手を掛け周囲を警戒しており、俺達に忠告を飛ばしてきた。

 既に俺も周囲を警戒しながら感じた事を口にする。


「なんだか殺伐とした雰囲気が出てますね…」

「お前の探知には何か引っかかったか?」

「いえ。こちらの探知に対応してか気配を消しているみたいです」


 魔力探知も万能では無い。 

 モンスターでは聞いたことが無いが、魔力も経験者となればある程度は操作出来る。気配と一緒で隠す事が出来るのだ。

 そして、気配と一緒で下手なやつ(・・・・・)がやると違和感が半端ない。


「間違いなく居ますね…」


 何という雑な魔力操作か、生き物であれば気配もあるし魔力もある。

 もちろん植物にも魔力があり、植物も状況によって気配や魔力を消すこともあるのだ。


「今までの活き活きとした生命力を出していた世界樹がここに来て何か不穏な空気変わりましたね」

「あぁ、奴らは手練だが馴れてない(・・・・・)な」


 叔父さんが掌を向けてきた。

 俺は心の中で、バッカスとプロメテに呼び掛けだけはしておく。ヴィルもいつでも出せる状態にして辺りを警戒する。


 魔力探知は継続する。叔父さんに教わった。

「何も無さ過ぎるのも違和感だ」と言う格言を思い出し違和感を感じた場所を虱潰しに探す。

 すると突然魔力が高く反応し、目の前にバスケットボール程度の大きさの魔法の玉が3つほど俺達目掛けて飛んできた。


「イッセイ。避けろ!」


 叔父さんは叫ぶと近くの神官エルフを捕まえて魔法を飛び退く。

 俺も叔父さんの怒号にすぐ反応し、エリーを抱きかかえ横に飛び退く。


 俺達を通り過ぎた魔法の玉は世界樹に着弾する。すると、被弾した辺りの葉っぱは呪われた様な状態になり、みるみる枯れてしまった。

 この現象を引き起こす属性は……


「闇系の魔法使いか」


 俺は直ぐにバッカスに出てきてもらうと同時にセティとアクアとカズハとマーリーンを召喚する。プロメテは念の為の隠し玉だ

 バッカスは俺と一緒に戦闘してもらう予定だが、セティとアクアとカズハとマーリーンは世界樹の治療してもらう。


「バッカス、相手の姿を見つけたら一気に行くよ」

「ホホッ。勇者相手か腕がなるわい」


 流石は俺の精霊達。頼もしい。


「セティとカズハとマーリーンは……」

「…世界樹を助ける」

「私はなるべく闇の力を無効化します」

「僕もカズハと一緒にこの呪いを解くよ」


 完璧だ。

 一度頷くとアクアを見る。すると、アクアもお辞儀を返して。


「ここはお任せくださいイッセイ様。皆は私が護ります」

「アクア。頼む」


 皆が役割を知ってくれていた。

 神官さんも叔父さんから離れると精霊のみんなの所へと走っていった。


 あの人、面倒くさいけど悪い人じゃ無さそうだ。


「私も世界樹を見に行くわ」


 エリーも精霊の皆の所へ掛けていった。

 叔父さんが俺の側に寄って来ており。


「さて、俺達は世界樹に巣食う害虫退治だな」


 そう言ってくる。俺はコクンと頷き攻撃が飛んできた方向を見た。


 そこには、1人立っていた。

 あれれ? ちょっと想像してたのと違うなぁ…。ま、違和感があったと言えばそうなんだけど。


 てっきり魔法使いだと思っていたのだが、立っていたのは片手斧を持ち。肩の上でトントンとバウンドさせている筋肉質の女でこちらを見てニヤニヤ笑っていた。

 黒髪の三つ編みのポニーテール姿に獣っぽい荒々しい雰囲気が特徴と言える。どっからどう見ても肉食系……いや戦士系って感じだ。

 となると、もう1人以上何処かに隠れている事になるのだが…。


 そう言えば、こいつも勇者なのか?

 人族っぽいけど、人っぽくないと言うか上手く言えないけど違う気がする。


「ボウヤ。考え事かい?」

「イッセイ」「!!? っバッカ…」


 いつの間にか俺の目の前まで詰めてきていた女が横凪の一閃を放ってきた所だった。


 いつの間に!?


 俺は咄嗟に体をひねり、中途半端だったがバッカスは名前を呼んだのに気づいたようだ、地面からスパイクが飛び出し女勇者目掛けて突出する。

 女勇者の一閃はバッカスのスパイクを切り裂くと俺の首目掛けて斧の刃が迫ってくる。


 躱そうとしたが、間に合いそうに無い。一閃の来る刹那に見えた女勇者の笑顔が鼻につく。


 だが、刃が俺の体を捉えるよりもヴィルが実体化し一閃を弾く。


 ーギャンッ。


 金属が激しく擦れ合う音と火花が散り。


「うぉ。魔道具かいアタシの魔闘技の一閃を受けきるなんてボウヤやるねぇ」


 ニンマリと笑う女勇者の顔は凶悪に八重歯をギラリと光らせていた。

 やっぱりこの力こいつは勇者の加護だろう。しかもかなり強い力を持っているっぽい。魔闘技とかいう技も気になる。魔力を感じたと思ったら一瞬で距離を詰められ、ヴィルがいなきゃ斬られてた…。


「バッカス!!」

「ほいよ」


 俺の言葉に反応したバッカスが手に持っているハンマーで世界樹の表面を叩く。

 すると、地面からスパイク状の岩が女勇者に向かって襲いかかる。


「精霊使いか!?」


 女勇者がバッカスの魔法に距離を取りながら話しかけてきた。

 よっぽど余裕があるのだろう時折笑みを浮かべている。

 しかし、何だあの爆発的な加速は…。

 さっきから女勇者が使っている『魔闘技』と呼ばれる技だろう。

 加速する度、魔力反応が濃く感じている。


 バッカスが何度もハンマーで世界樹を叩き、世界樹の幹や枝から出た木のスパイクが蛇のようにうねり、波のように激しく四方八方から女勇者を狙う。

 まるで、スパイクが自分の意思を持っている様な時差攻撃や数本のスパイクが絡みつく攻撃。女勇者を殺そうと襲いかかる攻撃を尽く躱す。


「ふはは。何だその攻撃は。次はこっちの番だ」


 女勇者は、スパイクを振り切り斧を構えながら向きを変えて反撃してくる。

 そして、間合いに入ると俺目掛けて斧を振り下ろしてきた。

 その際、斧の斬影に見えたのが『Kill You』だったのには苦笑いしか出なかった。


 …何という悪趣味な斧だ。


 --ギャン。


 ヴィルを構えて応戦する。

 恐らく魔闘技で強化されていたので、斧が恐ろしく重かった。

 俺は手を痺れさせヴィルを離してしまいそうになる所だが、ヴィルが輝き女勇者の魔力を吸ってくれた。

 そのお陰で俺は相手の攻撃を防ぎきる事が出来た。


「おい。もっと腰を入れて耐えろ」


 ヴィルはこんな時でも俺に厳しい。

 いや、俺を鍛えようとしてくれるのは嬉しいのだが…


「あんな強敵相手に無理言うな。って言うか勇者相手に肉弾戦で勝てるかよ…」

「バカか? 勝てるかじゃない。勝つんだよ」


 鬼がいる。


「…あっ、アンタ」

「ん?」


 女勇者がポカンとした顔をしてこちらを向いていた。


 ??? 何してんのこの人……今がチャンスか?


「プロメテ!!」


 ードゴッ!


「ふぐっ」

「ぬ…」


 俺がプロメテに合図を送ると同時に俺の体をすり抜け。プロメテの紅くて太い腕が女勇者の鳩尾に見事に炸裂し、世界樹の幹にぶつかると首を下にさげた。


 何だったんだ…?


 何故か相手が油断してくれたのであっさりと倒せた。罠…なのか?

 とは言っても事情を聞く必要がある為、女勇者を捕まえる事にする。

 警戒しながら女勇者へと距離を詰める、俺が先行し叔父さんがバックアップで後ろに残ってもらっている。


 俺が女勇者まであと数歩という所まで近付いたタイミングで事は起きた。


「!!?」

「きゃあ」


 エリーの叫ぶ声が聞こえるとほぼ同時に強力な魔力反応を感じた。振り返えるとエリー達の足元に魔法陣が現れて淡い光が発光していた。

 ぐったりしている女勇者から魔力反応は無いので、どうやら仲間が居るようだ。


 魔法陣の発光が強くなり光の中から、スケルトンやらゾンビやらモンスターが生まれてきた。


「モンスターを召喚しただと!」


 叔父さんが声を上げた。

 叔父さんが驚いたのは当然だ。この世界でモンスター召喚は冒険者クラスで言えば5以上となるため中級以上だ。


「大丈夫ですか!? ……っ」


 フォローに回ろうとしたが体が動かない。っと、いうか体に痛み…いや熱を感じる。

 痛みを覚えた腕を見ると手には血がベットリと付いていた。いつの間にか女勇者から一発貰っていたらしい。腕が焼けるように熱い。


「…クソガキが舐めるなよ。だが、これで終わりだ」


 吹っ飛んだ先で女勇者が体を起こしこちらを睨んでいる。右手には俺を刺したと思われる紫色の刀身のナイフを持っている。

 どうやら魔道具の一種の様で俺の血に反応しているのか赤紫色に淡く光っていた。


「!!?」

「イッセイ!!」


 傷口が痛く膝を付く。

 心配した叔父さんがこっちに向かって来るが、俺はその動きを制する。


「だ、大丈夫。ただのかすり傷です。それよりもモンスターの方をお願いします」

「わ、分かった」


 叔父さんは俺の意見を尊重し、エリーの方を手伝いに行ってくれた。

 召喚されるモンスターも大した強さじゃないからあっちは大丈夫だろう。

 俺の傷も実はそう大した事はない。少々、深く切られたせいで血はまだ止まる気配がない位だ。


「ふっ、ふはははは。お前死んだよ。この剣はフルチングと言って毒が自動生成される剣なのさ。どんな薬でも解毒不可だからねぇ。傷が付いた時点でお前は終わってるんだよ」


 小癪な、しかし毒の剣か…。確か魔力に作用する剣だったかな。昔、実家にある図書館で図鑑を見た記憶がある。

 使い手の魔力次第でただの痺れ毒から巨大なモンスターもイチコロの毒を精製できる魔剣だったはず。毒はどれも遅行性だった筈だが……。


 そもそも毒が効かない俺にはあまり関係のない話だ。


「ははははは・・・。って、なぜ血を吐かん!! なぜ苦しまない!?」

「残念な事に僕には毒は効かないんですよ」


 ペンダントを見せながら俺は言う。

 ケロッとした態度に俺に女勇者は苛立ちを隠そうとしない。


「な、何? く、くっそ…毒耐性のアクセサリーだ…と。く、くそ…ぐふっ」


 いや〜。毒無効なんですけど、まぁ良いか。


 そう言うと女勇者は崩れ落ち肩で大きく息をする様になっていた。どうやらプロメテに殴られたのが効いてきたようだ。

 そして、鳩尾を抑えると地面に突っ伏し、ゲロを吐いた。


「う"ー。げぇろろろろろ…」


 完全にこっちを甘く見てたからなぁ。


 苦しんでいる所悪いが制圧させてもらう事にする。

 触れるまであと数センチという所で、上空から強烈な魔力を感じ上を見る。


 俺目掛けて魔法が飛んで来る。

 最初に奇襲してきたのと同じタイプの攻撃だ。


 咄嗟に横に飛んで魔法を躱す。

 すると、魔法が女勇者を囲むように落ち、世界樹をチリチリと焼いて葉を変色させていた。


 神官さんが何かを叫んでいるが、今はそれどころでは無い。


 気が付くと女勇者の前に魔道士が立っていた。どうやらこいつも敵の様だ。

 鍔付きの魔導師帽を深くかぶり青いローブを身に纏っている。まるで某ゲームの黒魔道士そのままだ。

 リアルで見ても帽子のせいで表情が見えないのが不気味ではある。


「オイ、ゴリ子。大丈夫か?」

「あ…あたしは…ゴリ子じゃ……ないって…何度も…言わせんな…。あたしは…リリコ…だ」


 魔道士が女勇者に声をかける。


「ふん。パワーバカなんてゴリ子で十分だろ。それよりも立てるか?」

「ちょ…っと…無理…」


 魔道士が女勇者の肩を掴み持ち上げようとするが、女勇者は魔道士にもたれ掛かった。

 女勇者が重たいのか、魔道士は女勇者を地面に落とし。


「そうか。じゃあな、バイバイ、ゴリ子」

「わー。ウソウソ。助けてよー」


 あっさり捨てようとした。

 そのやり取りは、まるで夫婦漫才を見てるみたいだった。なんだこいつ等……


「チッ」

「え? 舌打ち」

「気にするな。とりあえず出直すか」

「え? 今何で舌打ちされたの?」


 女勇者ゴリ子と謎の魔道士が引き続きゆるーい会話をしているが、俺達は警戒を緩めない。こういうタイミングで余裕を見せる奴は気をつけないといけない。

 まだ、何かしら策を持っている筈だ。


 叔父さんにアイコンタクトを送ると叔父さんもこっち側に加勢に来てくれた。

 叔父さんと連携しここでケリを付ける為だ。


「ヴィル逃がすなよ。バッカス、プロメテ行くよ」

「わーってるよ」

「ほほっ、任せい」

「がはは。任せろ」


 叔父さんに合図を送り小声で気合を乗せる。


「作戦開始…」


 ーービュッ!

 ドガガガガッ!!


 まず、始めに俺はポケットを弄り細い魔石をチョイスし、2人目掛けて投げる。

 俺が投げた魔石はゴリ子と魔道士の間…、正確にはゴリ子の服に刺さり地面に縫い付けた。

 勇者ゴリ子は顔を青くして、「ひぃ」っと声を出していた。魔道士は後ろに飛び退き俺達と距離をおく。


「……あぶねえ。指が…飛ぶ……ところ…だったよ。しかし、何だこの石は?」

「こいつは!? オイ、バカ。ゴリ子勝手に触るな」

「え? あガガガガガガ……」


 ゴリ子は刺さった魔石を抜こうとして触り、感電した。魔道士が範囲に入ってきたら発動しようと思っていた罠をこの人掴んじゃったよ…。

 普通敵が投げた物をホイホイ触ったりしないでしょ。


 勇者ゴリ子は白目を向いて動かなくなった。

 流石に魔道士に同情したが、ある意味最善の防ぎ方でもある。自己犠牲の塊だぁ。

 しかし、こっちも生まれたスキを逃す手はない。


 叔父さんとプロメテが切り込み、バッカスが鎚を振るい木のスパイクにて応戦。

 叔父さんとプロメテが攻める隙間をバッカスが埋める。後はヴィルで上空を固めれば完封だが、念の為隠し玉として取っておく。


 魔道士は深くため息を吐くと、


「…はぁ。面倒事を増やしやがって」


 呟いていたが、魔道士が手を合わせ魔力を注ぎ込むと足下に魔法陣が出来上がり白い光を発光させた。


「ダークフレイム」


 魔法陣から飛んでくる黒い火は魔道士を中心に四方八方に飛び散るように飛散する。

 まるで小さい火山が出来たように噴火を繰り返し火の粉をあちらこちらに広げていった。


 バッカスが出した木のスパイクは炭化し消えていったが、特攻隊2人の道を作るように先回りして炭になっていた。


「うぁ、あちち」


 流石に木だけでは防ぎきれず腕に燃え移った炎を叔父さんは叩いて消していた。

 プロメテは、ほぼ全身に魔道士の魔法が当たっており、もはや見た目が2Pカラーみたいになっている。

 って言うかダメージは無いのか?


 プロメテが女勇者と魔道士の所まで到達しパンチを繰り出すが、大振りだったため魔道士は女勇者を抱き上げながら華麗に躱す。

 動ける魔道士ってカッコいいと思った。(小波感)


 ナイス、プロメテ。

 無防備に空中を舞う魔道士。

 後はヴィルに落とさせればおしまい。自分の身を犠牲に出来るって千両役者だなプロメテ。


「…グルルルルル」


 って、キレてるんかーい。


 元々、ランプの魔神っぽい見た目だったので人相はひときわ悪かった。だが、その脳筋っぷりやKYな態度などで親しみは有ったのだが……。


「おォーい。プロメて…」

「ガアアアアアア」


 キレたプロメテが咆哮を放つとここの場の空気が張り詰めた。

 そして、プロメテは魔道士目掛けてすっ飛んでいった。


「ありゃ…。完全にいっとるのう」


 いや…、いっとるのう。じゃないし。

 バッカスも完全にさじを投げていた。


 ドドドドドドドドドッ・・・・


 プロメテが魔道士に対して怒涛のラッシュを繰り出していたが、魔道士が展開した魔法障壁に阻まれている。


「無駄だよ無断。俺の魔法障壁に打撃攻撃が効くわけ無いだろう」


 魔道士は勝ち誇ったように笑っていた。

 あっ、あの煽り方はちょっと不味いかも。


 ーープチン


「グルルル。ガァァ!§♧◇▽□✩✛✠✟✗•✚!」


 過呼吸気味にキレたプロメテは、途中から何を叫んでいるかも分からなくなり。魔法障壁目掛けて打撃を続けていた。

 流石の手数に魔道士も少々辛そうである。片手だしね。


 あちゃー。あれは完全に殺しにいってるわ……


 プロメテの目的はただ一つ。魔道士の意識をプロメテに集中させればいいだけ。

 要は適当に足止めしててね。って頼んだんだけど煽られて、どうやら熱くなっちゃったみたい。


 障壁に全力で立ち向かっている。

 今ならヴィルで簡単に魔道士を倒せそうだけど、プロメテがそのまま殺しちゃいそうだなぁ…。


 まさかのプロメテが邪魔なパターン。

 チャンスだけど生かせない。


 どうしたもんかと上の戦いを見ていると、そこに近付こうとする誰かが一つ見えた。

 青い鎧に三つ編みを揺らしながら飛んでいったのはアクアだった。


「アクア!?」


 プロメテは、気づく気配もなく一心不乱に魔法障壁を殴り続けていた。


 何をする気だ?



 ・・・アクア side・・・


 アクアはため息を付くと直ぐにプロメテの上部へと飛んでいった。

 理由は、熱くなりすぎた(・・・・・)このアホに制裁を加えるためである。

 下で困った顔をしている愛する主を見れば、この筋肉バカがネックなのはすぐ分かった。


「雑魚相手に何やってるのよ。そのせいで愛するイッセイ様が困ってるでしょ! スプラッシュ」


 私は、そう呟くとプロメテの頭に水をかけた。



 ・・・イッセイ side・・・


 ージュワー


 上空でアクアがプロメテに水魔法を掛けた。

 その瞬間、水が一瞬で蒸気へと変わりプロメテとアクアは水蒸気に包み込まれた。

 そして、蒸気が晴れると体が小さくなり青くなったプロメテがいた。


「おい。死ぬかと思ったぞ!」

「やかましい。あなた。少し頭が冷えましたか?」


 上空でやいのやいの聞こえてきた。


 あまりに事に俺の動きが止まってしまったが、ヴィルに「今がチャンスだろ」って言われてハッとする。魔道士の様子を見ると奴も動きを止めていた…。


 ヴィルを手にとって魔道士の死角方面へ投げる。

 この時、気づかれずに投げるのがコツだ。



 --ヒューーン。 ………パコーン。


 あっ、当たった。


 魔道士と女勇者が落ちてくる。ヴィルが魔道士の後頭部へ炸裂する。

 ヴィルの強烈な存在感を感知されずに制圧できた様だ。

お読みいただきましてありがとうございます。


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